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工場内だけじゃない!事務屋の創意くふうとは

2025.01.15

仕事を楽しく、面白く! するための「創意くふう提案制度」。70年以上の歴史をもつ同制度に応募されたアイデアの中から、選りすぐりのものを紹介していく。今回は、どの職場でも気軽に真似できる「タワー型テープホルダー」と「ダブルクリップ収納」の2件に焦点を当てた。

試行錯誤から生まれたテープホルダー

「組織改編の際に、室単位で点在していた備品を集約したのがきっかけです」

そう語ってくれたのは、第2MS車両開発部の新(あたらし)典子。MSとはカムリやクラウンといったミッドサイズの車種を意味する。それらの車種のボデーや電子部品の設計、及び実験部署が融合した部署で、新は総括業務に従事する。

第2MS車両開発部 新典子

当時、コロナ禍で緊急事態宣言が出される時期だったのと、紙の消費を減らそうというタイミングも重なり、備品を使う機会が減っていたんです。各室の備品を集めたら、使用途中のクラフトテープや養生テープなど、同じものが大量に出てきました。

ただ、それらを集約して置いておくだけだと、なぜか新品に近いテープからみなさん使っていくんですよ(笑)。どうすれば残りが少ないものから使ってもらえるかを考えたとき、重ねておけば、わざわざ下からは取らないだろうと思ったんです。

まずは食品用ラップの芯を使い試作品を作成し、残りが少ないものが上に、ほぼ新品のテープは下にくるよう、テープを重ねて置いてみた。こうすれば、上から順に残りが少ないものから使ってもらえそうだと確信。 しかし、これだけで終わらせないのが新。

「円柱だとクラフトテープがズレて、見栄えが悪いんです。そこを綺麗にしたいと思って四角形にしたのですが、そうすると隙間に指が入らず取りづらい・・・」

その問題を解決すべく向かったのは、隣の部署のボデー開発部の工作室。顔馴染みの技能員に相談すると、「内径にぴったりハマる三角形だったらいいんじゃない?」とアドバイスをくれ、試作品も手慣れた仕草で作ってくれた。使用した部材も、備品整理で大量に出てきたボードを再利用した。

「最初は土台もボードで作ったのですが、軽過ぎて不安定なので、木の廃材を使って重りにしています」

技能員の協力もあり、タワー型テープホルダーがついに完成!別部署の事務員から「これ何? 欲しい!」と声がかかることもあった。さらに、業務職の改善活動を紹介する社内報『つながる通信』にも取り上げられたことで、さまざまな部署から「真似させてもらいます」という声が届いたという。

「そういう声をもらえると本当に嬉しいんです」

実は前回登場した河合おやじも、備品にまつわる創意くふうについてこう語っていた。

河合おやじ

自分が若いころは会社(の経営)が厳しいときもあって。我々が現場(工場)で使う鉛筆なんかも、短くなったら書けんでしょう。それを捨てるんじゃない、その短い同士をホッチキスで繋いで、テープを巻いて使う。

それはケチなわけじゃなくて、使えるうちは使うんだよ。そうすると、鉛筆5本使うところが4本ですむ。それは原価低減であって、使えるものをちゃんと使いましょう、ということ。徹底的にね。そういうのも創意くふうで出ていた。

クリスマスのブーツを見てひらめいた!

次に新が気になったのは、大きさがバラバラの大量のダブルクリップ。

最初はただの箱に一緒にドサッと入れて、上から取り出す仕組みにしていた。しかし、それでは大きさの違いも分かりづらい上に、底にあるダブルクリップは永遠に使われない。「なんとかしたい!と思った」という。

第2MS車両開発部 新典子

たまたまクリスマスの時期で、お菓子のブーツが目に入ったんです。その瞬間に閃いたんですよ(笑)。これもポンチ絵を描いて、いつもの技能員さんに形にしてもらいました。大きいクリップだと引っかかるので、内部はスロープになっています。

ブーツの形にしたことで、ダブルクリップを上から補充して下から取り出す仕組みができ、中古品が留まらずに循環するように。さらに、ブーツ上部にダブルクリップを一つつけ、該当の大きさがわかりやすいようにひと工夫も。

たちまち、こちらも利用者から好評を得た。通常1提案につき500円の賞金が支払われるが、この2件のアイデアはなんと各2,000円という嬉しい結果に。

「安全面の視点、廃材を使ったことなど、上司のアドバイスをもとに記入したら点数が増えたんです。また、他の部署でも使いたいなど、横展開できたことも評価されました。賞金は、工作室の技能員さんのおかげでもあるので、お菓子を買ってお礼にいきました」

ポイ活感覚で提案

新がいつも頼りにしていた技能員は、再雇用も終わり退社してしまったという。しかし、すでに新たな仲間を見つけ、何かあれば工作を頼んでいる。そんな彼女に、創意くふう提案制度の魅力を聞いてみた。

「こんな簡単なものでも創意くふうとして扱ってもらえるので、すごくいい制度だと思います。せっかくある制度ですし、利用しない手はないですね。少しのアイデアでも、職場にとって使い勝手がよければ 改善として認められますし、ご褒美までいただける。ちょっとしたポイ活みたいな感じです(笑)。そして、ポイ活感覚で提案を続けているうちに、自然と自分の仕事にも生かされてくると思います」

最後に「改善とは何か?」を聞いてみた。

「私にとってはモヤモヤの解消です。気になっていたことが改善されると、気持ちがすっきりするんです」

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