中日スポーツ・東京中日スポーツWeb「トーチュウF1 EXPRESS」とのコラボ企画第10弾は、3シーズンぶりに女性専用シリーズ「KYOJO CUP」に復帰する三浦愛を取り上げる。
中日スポーツ・東京中日スポーツWeb「トーチュウF1 EXPRESS」とのコラボレーション企画第10弾は、3シーズンぶりに女性専用シリーズ「KYOJO CUP」に復帰する三浦愛を取り上げる。2023年に自らチームを立ち上げてからは後進の指導に力を注いでいたが、なぜ自らステアリングを握る決断を下したのか―。
VITA車両だった2020-23年にKYOJOを制した元女王の三浦が、美容関連機器メーカー「MTG」のサポートを得てシリーズに帰って来る。自らつくったチームとのコラボレーションで「Team ReFa with AIWIN」を立ち上げ、チーム代表兼任で3年ぶりに戦うことになった。「(所属ドライバーに)ちゃんとドライビングなどを教えてあげたくても、私は昨年から導入されたKYOJOフォーミュラに乗ったことがない。(的確なアドバイスができず)ちょっと悶々としているときに、(MTGの)松下剛社長に声をかけていただいて。私はドライバーなので、自分で乗って、自分が感じたことを、きちんと若い子たちに伝えていきたいと思いました」
後進の指導にかじを切ったものの、昨年は「VITAのように事細かに教えてあげられない」というもどかしさを感じていた。そんなときにMTGの松下社長からの「まだ乗れる? 乗れそうだね」という言葉に背中を押してもらったという。新たに立ち上げたチームとのコラボレーションになるため、運営資金集めなどチーム代表としての責務も軽減され、アスリートとして集中できる環境が整った。「言葉だけでなく、自分の走りと結果で伝えたほうが説得力もある」と、自らの背中で若いチームメートの白石いつもに伝えていくつもりだ。
父親や兄の影響でカートを始めた三浦は、12歳のデビュー戦で勝利を挙げる華々しいスタートを切った。その後は着実にカートで実績を積み、4輪に上がってからもスーパーFJ、フォーミュラチャレンジジャパン(FCJ)とステップを踏み、2014年には女性ドライバーとして14年ぶりに全日本F3選手権への挑戦を果たした。2015年まで参戦したNクラスでは通算4勝を挙げ、女性ドライバー初の快挙を達成した。2016年からのCクラスではなかなか上位に食い込めなかったものの入賞を重ねて存在感を発揮。シリーズが終了した2019年限りで後継シリーズへの参戦を止めた。
代わってKYOJOに挑み、フォーミュラリージョナルジャパンやスーパー耐久シリーズ、ポルシェカップや86/BRZレースのワンメークレースにも参戦したが、心の中にモヤモヤが広がっていく。「いろいろなカテゴリーのチームに乗せてもらっているけど、『これでいいの?』という思いが芽生えてきて…。いろいろなクルマに乗せていただき、今まで知らなかった世界をたくさん見させていただきました。でも、F1を目指してやってきた自分にとって、本当にやりたかったことはドライバーとして『極める』こと。閉ざされた気分になってしまい、『じゃあ辞めようか』とも思っていました」
さまざまな経験を積んでドライバーとして成長させてもらっても、頂点を目指して挑むという三浦のチャレンジ精神を満たすことはできなかった。大好きなドライバーを辞め、新たな挑戦をするという気持ちになったとき、チーム運営という新たな目標が見つかったという。「モータースポーツに育てられ、私の人格が築かれているようなもの。今まで育ててもらった恩返しとして何ができるのかを考えた結果、チームをつくることが役に立つと思いました」と恩返しが切っ掛けだった。
ただ、「極める」ことにこだわる三浦の志は高い。「最終的に世界でも活躍できるチームをつくること。それが私の目標になりました。『女性の中では―』など条件付きでは頂点に立てたかもしれませんが、本当の意味ではドライバーとして極められなかった。頂点は日本ならスーパーフォーミュラだろうし、世界に目を向ければF1があります。ドライバーとして果たせなかったことを、チームとして目指していきたい」
2023年に「Team M」を立ち上げて自らKYOJOに参戦して2度目の女王に就いた。翌年は斎藤愛未にシートを譲って監督としてタイトルを連覇。昨年からは運営会社も立ち上げて「AIWIN」として参戦。まだ正社員は三浦を含めて二人ながら、フリーランスのメンバーを加えて常時20人前後のスタッフを抱えているという。「自分一人のことではなく、メカニックさんやドライバーさんらの将来なり、人生なりに少なからずかかわらせてもらっている。そんな意味では中途半端なことはできません」と、経営者としての仕事も全力で取り組んでいる。
愛ちゃんと呼ばれてモータースポーツ界のアイドル的な存在でもあった三浦も、新しいシーズンに36歳で臨む。初めて本格的にKYOJOフォーミュラに乗り込んだ2月半ばの第1回公式テストでは、貫禄のトップタイムで締めくくった。それでも「まとめきれなかった。まだこのクルマの癖をつかめていない。その分、伸びしろはある」とドライバーとしての自己採点は厳しい。若いドライバーに自らの戦う姿で挑戦することの難しさや厳しさを伝え、チームとして「極める」ための第一歩を記す。