
技能五輪金メダリストによる座談会。後半はリフレッシュ方法や、これから目指す姿について語ってもらった。また、彼らを導いてきた指導員の想いにも迫る。
後輩に伝えたいこと
――金メダルを獲得した今、後輩たちに伝えたいことはありますか。
プラスチック金型・久保 自分は来年も選手としてやっていきますが、その後は指導員として後輩に教えていくことになります。
プラスチック金型は、99.1点、99.2点といった感じで本当に高い点数での勝負になってきていて、成形品の傷一つでも負けてしまう競技。(細かいところまで)こだわるところを増やしていかないと、高いレベルで勝負ができないということが身に染みてわかりました。それを後輩に伝えていきたいなと思います。
――金メダルを獲得した皆さんは、モノづくりの現場を引っ張っていくような立場になってくるかと思います。モノづくりという部分で大切にしたい想いはありますか。
車体塗装・菅田翔太(以下、菅田)

難しい質問ですが…今の職場では、今年から「誰かのために、気遣い作業」というスローガンを取り入れています。(技能五輪課のあとは)開発の現場に配属になるんですけど、「誰かのために」の「誰か」の先には、お客様がいます。その人のことを想いながら、お客様第一で取り組むことが必要なんじゃないかなと思います。
車体塗装・星野悠音(以下、星野)

僕も菅田と同じ職種、配属される職場も一緒で、開発系のところに行くんですけど、今は塗装しかやっていません。自分で補修して塗装して完結なんですけど、職場に行ったら、(前工程で)作業してくれたものを自分たちが塗装して、今度はそれを(後工程の)検査だったり、補修だったり(に渡します)。
一連の流れの中の一つの作業に入ると思うので、さっき菅田が言ってくれた通り、「誰かのために」。次にこの製品について作業する人がいたら、「どうやったら作業しやすいかな」とか、「もしかしたらこの道具を使う人がいるかも。どこに置いたら使いやすいかな」とか、そういった次の人だったり、前の人のことだったりを考えることが大事かなと思います。
メダリストたちのこれから
――最後に、今後トヨタで目指す姿、目標を教えてください。
自動車板金・小石嵩陽

一言で言うと、“職人”と呼ばれるような人になりたいです。
今はまだ、この技能五輪の板金っていうすごく特化した技能しか持ってないので、もっと幅を広げたり、それこそ板金の世界は奥が深いので、もっと深めていったりして、誰にもできないような仕事ができる人になりたいと思っています。
車体塗装・星野 現状に満足しない人になりたいです。今は技能五輪の選手として点数が出る現場で、何点以上という目標があるんですけど、職場は当然こういう競技ではないです。自分の技能が点数では表れないので、(どこまでできるようになったのか)確認も難しいとは思いますが、職場に行っていろんな作業をやる中で、どんどん塗装に関わらずいろんな分野にも手を広げていけるようにしたいと思っています。
メカトロニクス・唐牛 今自分ができる作業のレベルに、後輩がすぐに到達できるようになったら、そこからさらに上達しやすくなると思います。そのためにも、誰でも(自分の作業を)再現できるよう、伝え方や教わり方など、情報の交換をスムーズにできるようになりたいです。

メカトロニクス・山崎 チャレンジし続ける人になりたいと思っていて、今は技能五輪でいろんなチャレンジをさせてもらっていますが、その中で得た経験だったり、出来た仲間というのは、今後も一緒なのかなと思っています。
1人で仕事はできないと思っているので、コミュニケーション能力も伸ばしつつ、技能も伸ばしていく。周りも巻き込んでチャレンジし続ける人が、自分の中での憧れの人なので、今後もチャレンジし続けていきたいと思っています。
――2人1組でやるメカトロニクスという職種ならではですね。
メカトロニクス・山崎 (意見の)伝え方一つでもその人の技能が変わると思っていて、やって欲しいことを伝えることができればいいけど、自分が思っていることと、相方が思っていることが違ったら、「どうしてここやってないんだよ」って言いたくなるのも当たり前だと思うんです。そういうところを無くすように、ペア間でコミュニケーションを磨けたかなと思います。