
イコールコンディションで競い合う女性限定のカーレース「KYOJO CUP」を特集。今年からマシンがフォーミュラカーになり注目度も高まるなか、スタジオゲストに下野璃央選手と翁長実希選手を迎えた。

5月16日のトヨタイムズスポーツは、女性ドライバーが最速をかけて競う「KYOJO CUP」を特集した。
9年目を迎えた本シリーズは、今年からマシンがフォーミュラカーになり、スピードも大幅にアップ。スタジオゲストは、開幕戦で優勝した下野璃央選手と2位の翁長実希選手。プライベートでは仲が良いという2人だが、レースに関してのコメントはお互いに譲らず、バチバチの延長戦を繰り広げた。
女性ドライバー限定レース「KYOJO CUP」とは
「KYOJO CUP」は2017年に始まった国内シリーズで、KYOJOは「競争女子」を意味する。
富士スピードウェイで年間5戦を戦い、土曜日に予選とスプリントレース(10周)、日曜日にファイナル(12周)が行われる。
KYOJOを立ち上げたプロデューサーで、ル・マン24時間を日本人で初めて優勝したドライバーでもある関谷正徳さんは「女性がもっと頑張ってこの世界に入ってきてもらえる目標になるような環境を提供しないことには、モータースポーツの発展は厳しい。言い訳ができない状況で(女性ドライバーが)腕を競い、社会の皆さんにスポーツとして認識してもらわなきゃいけないと思います」と語る。

マシンは事務局が一括管理し、ほぼイコールコンディションでレースが行われるため、ドライバーの技術で勝負の差は分かれる。昨年まではVITAというレーシングカーが使われていたが、今年からはF4規格のフォーミュラカー。スピードは時速30kmほど速くなり、タイムも1周で15秒前後縮まっているという。

多彩な20名のドライバー
参戦ドライバーは20名。外国人や高校生など多士済々で、普段はレースとは関係のない仕事をしている女性も。TOYOTA Gazoo Racingは9名のドライバーをサポートしており、昨年のチャンピオンの斎藤愛未選手は、夫の坪井翔選手と合わせて3冠という最速の夫婦でもある。平川真子選手は、WECなどで活躍している平川亮選手の妹で、全日本ラリーのモリゾウチャレンジカップにも参戦している。

スタジオゲストの2人はレーシングスーツではなく、あえて私服で登場。カメラに手を振ってポーズを取る姿に、「東京ガールズコレクションですか?」と喜ぶ森田京之介キャスターは15:29から。
下野璃央選手は大阪府出身。2022年からFIA-F4に参戦し、フォーミュラカーの経験はKYOJOドライバーの中で最も豊富だ。「私が一番有利な立場だと思います」と自信をのぞかせる。
3回目の番組出演となる翁長実希選手は、沖縄県出身。 KYOJO CUPでは毎年トップ争いを演じており、2022年の年間チャンピオン。翁長選手も今年からF4に参戦している。

常に全力、予選も目が離せない
5月10・11日に行われた開幕戦を、森田キャスターが予選から取材した。20分間で最速ラップを競う予選は、ドライバーが何度も勝負をかけてタイムが次々と更新され、順位も入れ替わっていった。タイヤを温めてから一発勝負でアタックするスーパーフォーミュラとの違いを森田キャスターが指摘すると、スタジオの下野選手は「(雨の)コンディションもあって、走れば走るほどタイムが上がっていくタイヤなので。走って走って、最後にガソリンも減って軽くなって」と解説していた。
本命視されていた下野選手をリードしたのは、ハナ・バートン選手。他の選手が新しいレインタイヤで走る中、溝が浅くなった中古のレインタイヤで勝負をかけた戦略がハマった。最終的には下野選手が1位を奪取したが、0.02秒の僅差だった。
予選の終了後、今までにないプレッシャーを感じていたという下野選手は「なかなか落ち着かなかったんですけど、走り出したら自分の走りができました」と話し、予選3位の翁長選手は「全然満足していません」と悔しそう。

予選の模様は20:05から。
下野璃央がポールトゥウィンの圧勝
午後のスプリントレースは、雨天の影響でセーフティカースタート。序盤で翁長選手が2位に上がるが、トップの下野選手との差は広がっていく。下野選手は安定したレース運びでそのままフィニッシュ、翁長選手に続いて平川真子選手が3位に入った。
「もう走り出した瞬間から、雨降りそうとか関係なく、攻められるだけ攻め切ってフルプッシュで走っていましたね」と振り返る下野選手。練習走行でも雨が続いていたので、自信を持って走ることができたという。
スプリントのVTRは27:17から。
完全優勝を許し、悔しがる翁長実希
日曜日の決勝は、打って変わって晴天。ピットウォークでは、下野選手はメイクもネイルもバッチリ。翁長選手は「絶対逃しません」とライバルに熱い視線を送る。
スタートから下野選手が後続を引き離して独走し、上位の順番は変わらない。下野選手は約9秒の圧倒的な差をつけて完全優勝を成し遂げ、翁長選手が2位。終盤で高校生の佐藤こころ選手が3位に入り、スプリントに続いてTGRのドライバーが表彰台を独占した。
下野選手は「スタートで誰にも前に出られなかったら、あとは前だけを見て集中して走るだけ。ゾーンに入れていました」、翁長選手は「今までのレース人生で前の選手から10秒離される経験がないので、非常に悔しかったです」と振り返る。

レース後の会見では、表彰台の3人がドライバーを目指す次世代の女性へメッセージを送った。佐藤選手は「私自身もこの業界に憧れて、いろんな面で諦めそうになったんですけど、諦めずに目指し続けていたら、ここに立てました。だから最後まで諦めず、夢に向かってトライしてほしいです」と語った。
決勝の模様は37:20から。
韓国旅行の目的は「食、酒、美容」
ライバルの2人だが、プライベートでは翁長選手が大阪に拠点を移し、下野選手から紹介されたジムでよく出会うそう。今回の東京のスタジオにも、仲良く新幹線で一緒に来たという。
血液型がAB型で「変わっているとよく言われます」という下野選手を、翁長選手は「私からしたら素晴らしい女性」とフォロー。だが、得意な天候が晴れか雨かについて質問されると、お互いに「どっちも」と張り合っていた。
番組のために、2人はプライベートの写真も提供した。下野選手は韓国旅行でサムギョプサルを堪能している写真。韓国には年3回ペースで訪れるそうで、目的は「食、酒、美容」という名言も飛び出した。

翁長選手は、沖縄の嘉手納基地を年1回開放するイベントでの写真。地元愛を感じさせるが、ゴーヤを食べるのは苦手だそうだ。

7月の第2戦はスーパーフォーミュラと併催
KYOJO CUPの第2戦は7月19・20日。スーパーフォーミュラとの併催で、レースを2倍楽しめる。
翁長選手はジムのトレーナーから、同じジムに通う下野選手の弱点をこっそり聞き出し虎視眈々と王座を狙う。下野選手は韓国で自分を磨いて、日焼けした姿をお見せするとのこと。“黒下野”と“ブラック翁長”の対決はもちろん、フォーミュラカーの経験を積んだ他の選手たちの巻き返しも期待したい。

それぞれの個性を発揮しながら、年齢・キャリア・家庭・育児といった女性を取り巻く枠組みから解き放たれて、一人のドライビングアスリートとして競い合う競争女子たち。ぜひ「推し」のドライバーを作って、彼女たちのバトルを見守ろう!
毎週金曜日11:50からYouTubeで生配信しているトヨタイムズスポーツ。次回(2025年5月23日)は、アスリートの育休制度を特集する。この春に1カ月の育休を取った陸上長距離部の西山雄介選手をスタジオに迎え、男子選手が取ろうと思った経緯や、会社の対応、周囲の反応やサポートなどを深掘りする。ぜひ、お見逃しなく!