トヨタイムズニュース
2025.09.01
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伝説のプレス機、約60年ぶりに里帰り 今も現役「生き証人」前に決意あらた

2025.09.01

海を渡ってブラジルで働いてきた「伝説のプレス機」が約60年をへて「里帰り」。トヨタの歴史を見守ってきた「生き証人」の前で、豊田章男会長が従業員たちと誓い合ったこととは?

海を渡ってブラジルで稼働してきた「伝説のプレス機」コマツ700トンプレスが2024年6月、約60年の時をへて「里帰り」した。

この一大プロジェクトを終え、今年5月、本社工場(愛知県豊田市)でプレス機を囲むセレモニーが行われた。会社の枠を越え、ゆかりの深い人々が集まり、座談会を催した。

同プレス機は、トヨタ創業者・豊田喜一郎が製作を依頼して誕生したもの。今から90年以上前の1934年、トヨタができる3年前(豊田自動織機製作所・自動車部時代)から生産を支える。

現場一筋約60年になる河合満おやじも「今のトヨタ自動車をすべて見てきた生き証人」と敬意を表する。

つくったのは、現在グローバルに事業を展開する総合機械メーカー・コマツ。当時はまだ創業(1921年)から10年ちょっとの“ベンチャー企業”だったが、製造機械を国産化する壮大なチャレンジを請け負った。

1938年にトヨタの自動車生産が愛知県刈谷町(現・刈谷市)の試作工場から挙母工場(現・本社工場)へ移った際には、建設、物流、重機の据え付けなどを行うサンエイがプレス機の移設を担当。直線距離でも15kmある距離を牛で運んだという逸話も残る。

その後、1962年に海を渡ったプレス機はトヨタにとって初の海外工場・サンベルナルド工場(ブラジル・サンパウロ州)で車両部品を生産。2023年まで稼動した。

同工場の閉鎖に伴い、この歴史あるプレス機の扱いを豊田章男会長に相談すると、一言「動態保存*」との返事が。そこには「オブジェで残すより、仕事をする仲間として残すべき」という想いがあったという。

*実際に操作できる状態で保存しておくこと

こうして始まった里帰りプロジェクト。メンバーのミッションは「90年前の姿を完全再現すること」。資料写真は白黒で元の正確な色がわからなかったため、プレス機の塗装をはいで特定。「色のプロ集団」の匠が復元に携わった。

そうして帰ってきたプレス機は、今も現役で、燃料電池モジュールの部品を生産している。

壮大な挑戦の歴史に想いを馳せた豊田会長。「『チャレンジ』という言葉で言い表せないような覚悟とものすごい決断だと思うんですよね。このプレス機を目の前にすると、クルマをつくったんじゃなくて、自動車産業をこの国につくりたかったんだと」「本物から語りかけるようなオーラをずっと感じ取っている」と感じ入った様子。

トヨタの歴史を見守ってきたプレス機の前で、豊田会長と従業員たちは何を決意し、誓い合ったのか。映像の中で確かめていただきたい。

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