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医師も看護師もトヨタの社員!? 謎の工作室!? 巨大病院の裏側に驚いた!

2025.04.11

本業とは関係ないように見える取り組みを紹介する「なぜ、それ、トヨタ」。今回はトヨタがなぜ巨大病院を運営するのか。

ハンマーや電動ドライバー、超巨大な定規まで…。ここがどこかお分かりでしょうか?

実はここ、病院の一室。トヨタの工場ではよく見る景色だが、なぜ病院にモノづくりの道具が?理由はすぐに明らかになった。

1つの部署として病院がある

我々が訪れたのは、豊田市のトヨタ記念病院。地域の患者さんを受け入れる地域医療支援病院であり、職員数は1,256名、病床527床の巨大病院だ。

ここで働く医師や看護師は実はトヨタの社員。病院自体が1つの部署になっているのだ。そのため“トヨタ自動車”の入社式にも、看護服を着た人の姿が。

過去には、ロボットを活用した改善で「年間200時間以上の夜勤のムダを削減」したストーリーを紹介した。

当初はクルマづくりの人間が医療のプロに口出しすることで、険悪になるほどの反発もあった。だが改善思想が根付いた後は、新病棟が完成したこともあり、さらに驚きの改善がいくつも進んでいるという。

たとえば「工作室」があることも日本の病院では珍しい。

トヨタ記念病院 事務統括室 TPS・カイゼン推進グループ 秋葉洋司GM

この病院は広いので、看護師がモノを取りに行くだけでも時間がかかる。そんなムダをトヨタ生産方式(TPS)で徹底的になくす改善活動をしています。

ムダを減らせば、患者さまと向き合う時間を増やせる。

「ここに棚があれば取りに行く手間が省ける」など、現場の困りごとを常に聞いています。働きやすくするために、棚でもなんでも自分たちで図面からつくる。だから病院内に工作室があるんです。(笑)

命に関わる緊急性の高い医療現場だからこそ、自分たちでつくればリードタイムも短縮できます。

秋葉GMは1986年の入社以来、エンジン部品などクルマづくりの現場で育ってきた。しかし2018年トヨタ記念病院へ異動に。「なぜ僕が?」と驚いたそうだ。

当初は一人だったTPS・カイゼン推進グループも、今では8人に。実際にどのような改善をしてきたかを紹介していく。これが結構おもしろい!

改善事例を一挙紹介!

分娩室で、必要な分だけ仕切れるパーティション。助産師の声をもとに、トヨタの工場にある素材で製作。既製品にはないピッタリのサイズ感だという。

分娩室の裏の通路。大きな棚も要望を受けてすぐに製作。モノを取りに行く時間を減らし、分娩で不安な患者さんに寄り添う時間が増えた。オーダーメイドのジャストサイズで、地震で転倒しないようにストッパーも装備。

工場と同じく、ストック用品には「かんばん」が付いている。使いたいものや足りないものが一目瞭然!

棚に蓋をつけて、衛生用品も清潔に保管できるようにした。新品を購入するよりかなりの予算低減になる。

医療機器の置き場所は、使用頻度や使用順を考慮して最適化。誰もがすぐに見つけられ、手術前後のムダな時間をなくせた。

傾斜をつけることで、重たいモノをラクに移動させられる「からくり」も各所で取り入れられている。

ゴミ袋が重なると雪崩が起きるという困りごとから、出し入れする高さを選べるカートも製作。ムダだけでなくストレスもなくなる。

医師や看護師からは「お願いしたらすぐつくってくれる(笑)」という声が。

秋葉洋司GM

市販のものを購入してもいいですが、自分たちでつくれば5分の1や10分の1の費用でつくれる。さらに使ってダメならすぐにつくり直すこともできます。

1年半ほど前に新病棟に移転したのですが、すでに600個以上つくっていて、試算すると1500万円ほどのコストカットを実現できたことになります。

働きやすくなるので、医師や看護師が「また頼もう」と思ってくれる。この循環が結果的に医療サービスの向上につながる。医療従事者ではない自分も地域医療に貢献できることが嬉しいです。

長年、クルマづくりの現場で技を磨き続けた秋葉GM。「自分も地域医療に貢献できる」。そう語る表情にはクルマ屋としての誇りを感じた。

次のページでは、この見慣れないモビリティをご紹介。これ、他の病院にはない先進的なもの。なんだと思いますか?

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