
トヨタの新事業創出スキーム「BE creation」から生まれ、多くの受注を獲得しているEdeson(エデソン)。立ち上げのきっかけは発案者が見た祖父の土下座だという。「トヨタのモノづくり支援サービス」といわれる事業の中身とは?

発注者と生産者の間に立ち、要件定義をおこなうサービス
日本のモノづくりの問題点。
そのひとつに、つくりたいモノがあるのに「生産者がつくってくれない」という発注者の悩みがある。
生産者には実は「そもそもつくれない」という悩みがある。その理由は、スタートアップなどから、モノづくりを知らない無茶な要望を出されることが多いためだ。
また、スタートアップの多くは要件が頻繁に変わるため、それに応えようとすると薄利や赤字になってしまう問題も。
そんな発注者と生産者の間に立ち、何が課題で何をすべきかの要件を整理するのが、Edeson(エデソン)のビジネスモデルだ。

プロダクトマネージメントのような形で請け負い、要件定義をおこなうことを基本サービスとしている。また、原価低減をしたい生産者向けに、工場での改善支援コンサルタントのようなサービスもスタートさせている。
衝撃を受けた「祖父の土下座」。発注者とメーカー双方にメリットをもたらすビジネスモデル発明へ
Edeson誕生の物語は、発案者である横田祐介の幼少期までさかのぼる。
横田の祖父は小さな工場を経営しており、建設業界で使われるガラス板を支える置馬を製造していた。
先進プロジェクト推進部/新事業企画部 横田祐介

私が9歳のとき、祖父がクライアントへ土下座しているのを目にしました。
「なんで土下座なんてするの?」と聞くと、祖父は「家族を守るためならなんてことない」と言っていましたが、私には衝撃的でした。
この体験が「一生懸命働いている人が正しく評価されないのはなぜか?」と疑問を抱くきっかけになり、そこから、日本のモノづくりの構造自体を変えていくべきだと考えました。
横田は大学卒業後、祖父の会社を継ぐ話もあったが、日本のモノづくりを変えるという熱い想いを胸にトヨタ自動車へ入社。
「社会や国を豊かにすることに貢献したい」という思想が根底にあるトヨタ生産方式や、多数のモノづくり企業と関係があり、グローバルで展開しているなど、横田が求める条件に合致したからだ。
入社後は生技開発部(現、モノづくり開発統括部)からスタートし、内製部品の生技開発を担当。部品メーカーへの出向も糧となった。満を持して社内新規事業提案制度に応募したのは2022年5月。当時調達部にいた盟友・西田 陽と共にビジョンを描き、今に至る。
自由なコミュニケーションの活性化
日本のモノづくりにおける課題のひとつに、発注者-メーカーの相互連携の難しさがある。
明文化されていないが、○○系などの枠組みがあり、それを越えづらい商慣習がある。
既存モデルは高品質なものを低価格で安定的に供給できる構造ともいえますが、新しい部品や商品にチャレンジするには素早く動きづらい側面もあります。
また、発注者の機密情報を守るためにノウハウを開示できず、生産者が見つからないというスタートアップの悩みの一因もここにある。
Edesonから依頼を受け、生産者としていくつかのプロジェクトを進めているEdge Creatorsの坂本社長にも話を聞いた。
同社は量産を担う工場ではなく、鋳造に関する知見を生かして実験・評価をおこなう会社のため、孫請けの立場になることも多いという。
Edge Creators 坂本社長

発注者と話がしづらいのは、実績をお見せする機会がないからです。
また中々キーワードだけでマッチングしても商品や部品に精通していない場合、仕事には繋がりにくい。
そのため、生産者に新しいアイデアがあっても、発注者に新しいアイデアをうまく説明できずに終わってしまうことが多々あります。
さらに、最近は生産者側が具体的な仕様を考えるよう求められることも多い。
仕様検討はとても時間がかかりますが、その情報を開示した途端、ノウハウだけ盗まれて他の工場でつくられてしまうことも昔はありました。
日本のモノづくりの未来は「トライ&エラー」のデータ活用にある
根本的な要因は、モノを収めないとお金がもらえないことだと考えた横田。
モノをつくるまでの過程や苦労は評価されません。実験装置や新たな設備の導入は、お願いされる前に、生産者さんが空気を読んで購入されています。
でもそれは、受注がなければ借金を背負うだけ。そこも課題です。
将来的に描いているビジョンは、モノだけでなく、その過程やノウハウにも価値を認める新しいビジネスモデル。
日本の文化や精神性に根付いた「協力ネットワーク」を活用し、プロセスや失敗データにも代金が支払われる仕組みを構想している。
横田祐介
失敗のデータが溜まれば溜まるほど、成功確率は上がるんです。

失敗事例を買い取ることができれば、発注者は違うことにリソースをあてられます。
実験が大好きな人であれば、少人数でも一生懸命トライ&エラーをするだけで生活できるようになります。
Edesonがオープンプラットフォームの役割を担い、プロセスや失敗をデータ化して共有。
発注者は革新的な製品開発を効率よく進められ、生産者は日々のトライ&エラーが無駄にならない。
結果的に、何かを突き詰めることが得意な、日本のモノづくり文化に勝機を見出すというロジックだ。このAI開発への投資もすでに始めている。
「日本のモノづくりを元気にしたい」共鳴した本気の姿勢と熱意
トヨタの新事業創出スキームであるBE creationは、ステージ1の段階で、お客様の課題を徹底的に聞き込む「顧客ヒアリング」を課す。その中で出会ったのが、Edge Creatorsの坂本さんだ。
横田と坂本さん、ふたりの思いが共鳴したのは「日本のモノづくりを元気にしたい」というシンプルで強い想いだった。
Edge Creators 坂本社長

チャレンジしないと、日本のモノづくりは変わりません。そこに対する本気度を横田さんから感じました。
トヨタさんが本気なら、僕らもそこに追従しんといかんなって。発注者と受注者の間に入ってくれるEdesonの仕組みを応援したいですし、僕らにもやれることがあると思っています。
現在はその知見と技術力を活用し、業界の垣根を越えるべくさまざまなモノづくり支援をおこなっている。
その中の一つが雨量計。「雨量計をより安価につくりたい」というRainTech社の要望を受け、Edge Creatorsがそれを具現化するプロジェクトを進行中だ。

横田の熱い思いに、社内からも続々と仲間たちが引き寄せられている。
モノづくりエンジニアリング部 釣部寛太

モノづくりエンジニアリング部は、社内の依頼を受ける部署です。
トヨタといえど、誰もがモノづくりに詳しいわけではないので、無理難題もあります。そういった意味では、Edesonと同じ課題感があり、参加してみようと思いました。
新事業企画部 都留史嗣

今後のキャリアに悩んでいたときに声をかけてもらい、挑戦してみようと思いました。
入社以来、パワートレーンの先々行開発から量産移管まで経験してきましたが、自らの開発知見をお客様の課題解決に活かしていきたいですね。
横田はEdesonのリーダーだけでなく、BE creationの事務局でも活躍している。
先進プロジェクト推進部/新事業企画部 横田祐介
Edesonは、モノづくりに情熱を持つ人々にとって、新たなステージとなるはずです。
社内・社外に関わらず、私たちと一緒に次の一歩を踏み出していきましょう!
また、事務局としては新事業に挑戦する人を全力でサポートしますので、ぜひチャレンジしてください。
