
全国の販売店トップが集う場で、豊田章男会長が贈ったメッセージを紹介。未来をつくるために、決して忘れてはならないこととは。
今、私たちが忘れてはならないこと
ここから話題は、祖父・喜一郎との2度目の出会いに。
豊田会長
そして、2度目の出会いは「トヨタの子」という小説の中でした。 その一節をお聞きください。
喜一郎生誕130年の節目に刊行された小説「トヨタの子」。そのワンシーンの朗読が会場に流れた。
「トヨタの子」一部を抜粋
2010年、リコール問題に苦しむアキオ。
タイムリープした先にいたのは、1949年、戦後ドッジ不況で資金繰りに奔走する喜一郎。絶体絶命の2人が出会った。
世界はトヨタや豊田章男を憎んでいる。いま目の前に、トヨタを創業し、トヨタのために命を縮めた男がいる。
「おじいさん、もうやめましょう。トヨタは成長しますが、いい会社にはなりません。クルマが世界中で売れ、ぼろもうけします。でもそれだけです。売り上げやシェアを拡大することだけが正義になってしまい、傲慢になり、世間から嫌われ、誰も味方をしてくれなくなってしまいました。こんな会社いらないでしょう。こんな未来のためにあなたが命をかける必要なんてないんだッ。僕が生まれるまで生きていてほしい。トヨタのために死なないでほしい」
「アキオ」
祖父は静かな声で呼び掛けた。優しい声だった。
「会社がいま大変なときのようだね。でもさ、アキオ。トヨタは嫌われても、クルマは愛されているんじゃないか。タンドラも、プリウスも、アルテッツァも、かっこいいじゃないか。まあ、君の絵はちょっと下手だけどね」
優しく孫をからかい、笑わせようとしてくる。
「未来の日本は、プリウスのおかげで空気がきれいなんだろう。僕はトヨタを心から誇りに思うよ。私はもう行くよ。トヨタを守らねばならないからね。こんな素晴らしいクルマをつくる会社だとわかったら、なおさらだ」
音声が終わり、豊田会長は“私たちが忘れてはならないこと”があると語った。
豊田会長

「トヨタは嫌われても、クルマは愛されている」。喜一郎の言葉が、私の心に突き刺さりました。
トヨタ存亡の危機であったリコール問題のときも、「トヨタのクルマが好きだ」。そう言ってくださるお客様が、世界中に、たくさんいらっしゃいました。
そして、米国公聴会の後のラリーキング・ライブ。
私が思わず口にした「I LOVE CARS.」「私はクルマが大好きなんです」
この言葉が、私とトヨタを救ってくれました。
「クルマへの愛」。これこそが、命をかけてでも、守り抜くべきものなんじゃないのか。改めて、喜一郎からそう教えてもらいました。
思い起こせば、創業の時代には、お金も、技術も、お客様も、何もありませんでした。
でも、「未来のために日本に自動車産業を興す」という「夢」がありました。
今の私たちには、全部あります。でも、いちばん大切な「夢」を忘れてはいないでしょうか?
私たちが、ともに見る「夢」。それは「先代から託された自動車産業をさらに発展させ、人々を幸せにすること」だと思います。
どんなに時代が変わっても、自動車産業が日本のど真ん中にあり、未来を切り拓く原動力であり続けることだと思います。
そのためには、トヨタを未来に存続させなければなりません。それが「モビリティカンパニー」に変革する意味だと思うのです。
私はクルマ屋です。クルマを、未来の人たちからも選ばれる存在にしたい。
その気持ちだけは、誰にも負けないつもりでおりますし、「クルマ屋にしかつくれない未来がある」と信じております。
2021年秋、私たちは「クレド」という誓いを交わしました。こちらの映像をご覧ください。
「クレド」は、ラテン語で「約束」や「志」を表す単語。「トヨタと販売会社をつなぐ未来への約束」の名前であり、ともに守るべき行動指針として定めた。
当時は、車検不正や個人情報の不適切な取扱いなどの問題が相次いで発覚した時期でもあった。
そんな中で迎えた2021年の販売店代表者会議では、トヨタと販売店の関係の再構築へ、「豊田綱領の精神を継承し、幸せを量産していくこと」「未来への約束を次の世代にもつなぐこと」を誓いあった。
2021年 販売店代表者会議 スピーチ映像
私は今、かつてない危機感を抱いています。このままでは、日本の自動車産業が壊されてしまうかもしれない。その中心にいるトヨタがつぶされてしまうかもしれない。
自分の功績や名前なんてどうでもいい。私を突き動かすのは、ただ一つ。創業者、豊田喜一郎の無念を晴らしたい。ただ、それだけです。
豊田章男はそのためにこの世に命を受け、生かされていると言っても過言ではありません。
先代が描いた夢を今の時代にどう受け継ぎ、実現するかが問われています。皆さんに問います。トヨタは、何のために存在するのでしょうか?
クルマをたくさん売るためではありません。会社の利益のためでもありません。トヨタは「みんなの幸せ」のために存在するのです。
自分以外の誰かを思い、その人のために動き、そして、ともに幸せになる。そのために喜一郎と皆さんの先代がつくった会社、それがトヨタです。
皆さんも先代に想いを馳せてみてください。どんな想いで地元に尽力されたのか。どんな願いであなたに道をつないだのか。
恐れるべきは変化の波や時代ではなく、私たちが運良く受け継いだ地盤や、できあがった仕組みに、しがみつこうとする姿勢です。
会社と会社の話をしているのではありません。豊田章男というひとりの人間が、ここにいる代表者一人ひとりと話をしている、そのようにご理解ください。
私の想いに共感していただけたなら、その想いを地元に持ち帰り、どう実現するべきか。皆さん、一人ひとりに託したいと考えております。
「覚悟」を持って、次の道を発明する
豊田会長
私が皆さんに「託した」もの。それは「覚悟」です。
日本の未来のために、先の見えない自動車産業にその人生を捧げられた「皆さんの先代の想いとともに」人生を歩む「覚悟」です。
これまで、私たちには先人がつくってくれた道がありました。でも、この先に道はありません。つくるのは私たちです。
モビリティを核にして、世界中の人々を笑顔にしていく。
これから生まれてくる子供たちが、もっと自由で、もっと豊かな「夢」を描ける未来をつくっていく。
そんな次の道を発明し、ともに歩む。だからこそ、「ありがとう」と言い合える仲間、同志とともに歩みたい。だからこそ「笑顔」で歩みたい。
2025年、今年こそは、笑顔で「ありがとう」と言い合える、そんな関係をつくってまいりましょう。
今年もよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。