
企業の収益性、経営の効率性を評価する指標、ROE(自己資本利益率)。決算説明会でトヨタが20%を目安とする真意が語られた。

2月5日、トヨタの2025年3月期 第3四半期 決算説明会が行われ、記者からこんな質問が寄せられた。
「投資家が重視する財務指標にROEがあるが、その向上策や目安をどう考えているのか――」
ROE(Return On Equity)は日本語で「自己資本利益率」。最終的なもうけを示す「純利益」を「自己資本 * 」で割ったものであり、「%」で表される。
*会社が株主などから集めたり、利益を積み立てたりした、返済義務のない資金のこと

株主から預かった資金を使って、いかに効率よく利益を生み出したか。企業の収益性や経営の効率性を評価する財務指標として、重要視されている。
山本正裕 経理本部長は「少し長くなってしまいますが…」と断り、ROEがトヨタにとってどんな意味を持つ指標なのか、リーマン・ショック以降の歩みを振り返りながら解説した。
山本本部長

トヨタがモビリティカンパニーにしっかり変革していくことが、一番大事な目標だと思っております。
ROEは大事な財務指標であり、歩みがどれだけちゃんと進められているか確認する「モノサシ」だと思っております。
トヨタは以前、赤字に転落し、潰れかけました。
そのとき、豊田章男社長(当時)が「どんなことがあっても生き続けなければいけない」「トヨタをもう1回取り戻さなくてはいけない」と考え、「もっといいクルマをつくる」、そのために「盤石な財務基盤をつくろう」としたのがスタートでした。
当時、手元資金もあまりなく、損益分岐台数も非常に高くて、変化に弱い体質でした。
そこから、「二度と赤字にしてはならない」という想いで、今の状態まで持ってきました。

持続的に成長できる財務基盤ができてきましたが、(それは)トヨタの現場に「圧倒的にやり切る力」があるからだと思います。
ROEもずっと安定的に10%以上(を出し続けるの)が、非常に大事なことだと思います。

この基盤ができ、次のチャレンジが、モビリティカンパニーへ(の変革)です。
正解はまだわかりませんが、「失敗を恐れずにチャレンジできる」「失敗してもいい」といえるのが、今の財務基盤ではないかと思っております。
クルマ屋の本分として、引き続きしっかり「幸せの量産」を目指していますし、クルマがお客様(の生活)や社会全体の移動価値を高めていく。
そういう新しい変化の中で、ウーブン・シティなどのチャレンジが積み重なっていくと思います。

ROEのE(分母)の部分は、突き詰めると人材であり、「私たち自身」のことではないかと思っています。
TPS(トヨタ生産方式)の考え方にも通じますが、知恵と工夫で改善していく、生産性を高め、イノベーションを起こして、チャレンジしていく。
人は「コスト」ではなく、「収益を生み出す源泉」で、(それが)自分たちに問いかけるべきEの部分なのかなと思っております。
いろいろな新しい事業もありますが、アセットを入れ替えていくことが、ROEの改善であり、(ROEは)自分たちがモビリティカンパニーに変わっていっているかを確認する「写し鏡」みたいなものではないかと思っております。
そのような想いで、我々はROEを非常に大事な指標と見ております。
こののち、目安として掲げている数値を聞かれ、山本本部長は「今、安定的に10%以上あるので、しっかりと維持します。それと同時に目安は20%です」と回答した。
ROE 20%は製造業としては非常に高い水準で、世界のクルマ大手でトップクラスの数字となる。
これを実現するためには、新車の販売で利益を出す「売り切りのビジネス」でなく、売った後の保有も含めて「継続的に収益が得られるビジネス」に移行していかなければならない。つまり、既存のビジネスモデルの変革が必要となる。
ここに歩みが進んでいるかどうかの「モノサシ」という言葉の真意がある。
そして、その変革を支えるのが「人材」である。山本本部長は、ROEの分母である自己資本には「人材」が含まれており、それは「私たち自身」であると指摘した。
モビリティカンパニーへの変革に向け、「コスト」ではなく、「収益を生み出す源泉」となれるか。従業員一人ひとりに一層のチャレンジが求められている。