
トヨタの2025年3月期決算説明会。佐藤恒治社長は足場固めの進捗とクルマの未来を変える挑戦のテーマを語った。そのスピーチ全文を掲載する。
変革へ今期2つの重点テーマ
佐藤社長
そして、その基盤を生かして、クルマの未来を変える挑戦をしっかり進めてまいります。
モビリティカンパニーへの変革を目指す。その根底にあるのは、クルマを通じて人々の幸せに貢献したい、すべての人に移動の自由をお届けしたいという想いです。
モビリティカンパニーには、明確な答えがあるわけではありません。大切なことは、ビジョンを具体に落とすために、行動し続けていくことであると思います。
この秋からフェーズ1の入居と実証が始まる、モビリティのテストコース、ウーブン・シティなど、未来への種まきも進めてまいりました。
そして、「トヨタモビリティコンセプト」に基づき、モビリティカンパニーに向けた道筋の具体化にも取り組んでまいりました。
「カーボンニュートラルへの貢献」と「移動の価値の拡張」。この2つを軸に、産業を超えた仲間との連携を深めながら、社会と一体となってクルマの価値を広げ、安全・安心なモビリティ社会をつくる取り組みを進めています。
今期も、その重点テーマである「マルチパスウェイの解像度の向上」と「トヨタらしいソフトウェア・ディファインド・ビークルの基盤整備」に取り組んでまいります。
マルチパスウェイにおいて、トヨタが大切にしている想いは、「誰ひとり取り残すことなく」、カーボンニュートラルに貢献していくことです。
多様なクルマでCO2削減に貢献しながら、次世代バッテリーEVで磨く技術を生かして、パワートレーン全体のさらなる進化につなげていきます。
そして、それぞれのパワートレーンを真の選択肢とするために、多くの仲間とともに、燃料やインフラの進化を後押しする取り組みも進めてまいります。
内燃機関のクルマでは、要素技術を磨き、「エンジン」「ハイブリッドシステム」、そして、「燃料」それぞれの進化に挑戦し続けています。
保有車のカーボンニュートラルという観点では、今すぐCO2を減らせるハイブリッド車を軸に、環境性能の高いモビリティへの代替を促進すること、そして、カーボンニュートラル燃料の普及を加速させていくことが重要であると考えています。
世界各地のお客様の期待に向き合って、より良品廉価なハイブリッド車をはじめ、カーボンニュートラルに貢献するプラクティカルな選択肢をお届けしてまいります。
バッテリーEVの普及に向けては、車両や電池の技術革新に加えて、電池の材料調達から回収・リユースまで、電池のエコシステムをつくっていく必要があると考えています。
産業を超えた協調の枠組みをつくり、普及に向けた環境整備に力を入れてまいります。
水素モビリティについては、普及のカギを握るのは、水素価格の低減です。
ユニットの外販も含めて商用車で水素モビリティの社会実装を加速していくことで、水素の使用量を増やし、コストの低減とインフラの拡充につなげていきたいと思います。
水素の未来に向けた想いをブラすことなく、バリューチェーン全体で、取り組んでまいります。
そして、モビリティへの変革のリード役となるのがSDVです。
SDVを通じて、より安全・安心で、楽しい移動を実現する。そのカギは、電子プラットフォームの刷新やソフトウェアプラットフォーム「Arene(アリーン)」を通じて、クルマの拡張性を高めていくことです。
これまで以上に、チップの性能も重要になってまいります。
また、クルマが社会とつながるためには、切れ目のない通信環境やデータセンターなど、インフラの整備が重要です。
昨年、NTTの皆様とともに、その基盤構築に着手いたしました。これらを土台に、さまざまな付加価値の可能性が広がってまいります。
例えば、データに基づく車両開発・サービスの進化や、お客様とともに育つAIエージェント、車載センサーを活用したサービスなど、データとAIが生み出すSDVの多様な価値を具体化させていきたいと思います。
引き続き、パートナーとの共創を通じて、トヨタらしいSDVの基盤整備を加速してまいります。
以上、今期の重点取り組みについてお話しいたしました。
モビリティカンパニーに変革するためには、モビリティ社会をつくることを視野に入れて、「非・連続的な進化」、すなわちイノベーションを生み出していくことが必要です。
社会と一体となったクルマの価値を追求して、多くの仲間とともに、クルマの未来を変える挑戦を加速してまいります。
皆様のご理解・ご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。