
1時間47分に及んだ2025年の株主総会。株主との質疑の最後に、豊田章男会長がトヨタの脱炭素への挑戦に対する想いを語った。

トヨタイムズの2025年株主総会特集は、今回が最終回。最後は豊田章男会長の回答を紹介したい。
株主から全固体電池の取り組みを問われ、マルチパスウェイ戦略にも言及しつつ答えた中嶋裕樹 副社長。さらに脱炭素はトヨタにとって大きな挑戦ということもあり、豊田会長がマイクを握った。
笑顔の量産
豊田会長

地球温暖化は、地球人として取り組まなくてはならない問題であり、自動車業界としても真正面から立ち向かっております。
我々は当初より「敵は炭素」である、そして「今すぐできることをやろう」ということで取り組んでまいりました。
これまでの電動車の累計販売は、ハイブリッド車を中心に2,700万台。その2,700万台で減らしてきたCO2はどのくらいかと申しますと、バッテリーEV(BEV)換算で900万台規模です。
世の中はどうしてもBEVだ、ハイブリッドだ、という言い方をされますが、地球温暖化に対して我々トヨタは「敵は炭素」、「現在できることからCO2を下げていこう」を着実にやっていると思います。
なぜ、そのようなことをするのか。世界を見渡すと、それぞれの国のエネルギー事情があります。「移動の自由」はどこの国、どんな道でも確保しよう、誰ひとり取り残したくない、という想いで執行メンバーをはじめ皆さん頑張っています。
そんな中でフルラインアップをやっていけるのも、世界中の販売店というパートナー、私どものクルマづくりを支えてくれる仕入れ先、設備をしっかり回す設備屋さん、材料を供給してくれる方々、完成品を運んでくれる人、また、部品を運んでくれる人、皆のチームワークのおかげだと思います。
不確実な時代だからこそ、トヨタは推測をいたしません。ただ、皆さんと力を合わせ、準備はいたします。
推測は当たらないときがあります。ですが、どんな状況においても、皆さんと力を合わせて準備さえしっかりしておけば、必ずや笑顔の量産はできると信じております。
そして今回、初めて6,000名を超えた方々に株主総会に来ていただきました。本当にありがとうございました。
株主の皆さまが中長期的に我々を応援いただく、そして我々の現場を支えていただく。だからこそ、我々は準備ができているのです。これからも、変わらぬご支援よろしくお願いしたいと思います。
「推測ではなく準備」と強調した豊田会長。2021年にあったBEV戦略についての説明会においても、「未来を予測することよりも、変化にすぐ対応できることが大切」と話している。当時、記者からBEVシフトか、マルチパスウェイ戦略を堅持するのか問われた際には、このようにも答えている。
「市場やお客様の動向が分かったら、素早く追随していく。これこそが会社の競争力を上げることにつながりますし、何より我々が生き残る一番の方法でもあると考えています」
選択肢を狭めるのではなく、グローバル・フルラインアップでお客様のニーズに応える。変化に即応するために備えることは、正解のない時代におけるトヨタの生存戦略でもある。
過去最多6,752人を集めた2025年の株主総会。その株主の前で豊田会長は、改めて誰ひとり取り残すことなくカーボンニュートラルを目指していく決意を示し、回答を締めくくった。

なお、翌日公表された取締役選任議案の豊田会長の賛成比率は96.72%。前年の71.93%から約25ポイント上昇し可決された。