トヨタイムズスポーツ
2025.11.21
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レッドテリアーズが3連覇! 女子ソフトボールの新たな黄金期へ

2025.11.21

女子ソフトボールのトヨタレッドテリアーズが3連覇を達成! 試合を重ねるごとに成長しながら、全員で栄冠を勝ち取ったJDリーグ ダイヤモンドシリーズの模様をレポート。

女子ソフトボールの日本一を決めるJDリーグのダイヤモンドシリーズで、トヨタレッドテリアーズが3連覇を達成! 11月15日のセミファイナルで豊田自動織機、16日のファイナルでビックカメラ高崎を破っての優勝だ。

シーズン序盤は戦力が不安視されていたが、試合を重ねるごとに若い選手たちが成長。原点に立ち返って全員で栄冠を勝ち取った2日間の熱い戦いをレポートする。

優勝を決めた山田柚葵、レジェンド上野からの一発

「この人の一発が見たいと思っているファンも多いかもしれません」

2-0でリードして迎えたファイナルの5回表。1死二塁の攻撃で、実況の森田京之介キャスターが期待を寄せたのは、4番の山田柚葵選手。西地区のホームランと打点の2冠王だ。

この日の2打席はチャンスで迎え、フルカウントまで粘ったが、ヒットは出ず。大一番のマウンドに立ちはだかったのは、キャッチャー出身の山田選手が「バッテリーを組みたかった憧れの存在」という上野由岐子投手。日本代表での活躍は言うまでもなく、今シーズンに250勝と2500奪三振を達成したレジェンドを相手に、緊張しないはずがなかった。

内角のチェンジアップ。狙い球は3球目に来た

思い切り振り切った打球はグングンと伸び、ライトを越える特大のホームラン。山田選手のスイングでそれを確信したかのように、上野投手は振り返ろうともしなかった。43歳の大エースをノックアウトした一発が、結果的に試合を決めた。

「夢と現実の間にいるような、本当にうれしいです。バットを信じて、みんなが後ろから背中を押してくれたので、絶対に打てると思って打席に入りました」と山田選手が語る、ホームランの場面はこちら

そして最終回。2日間を一人で投げ抜いたメーガン・ファライモ投手が最後の打者を打ち取り、ゲームセット。マウンドに選手たちが駆け寄ると、ウィニングボールを持った一塁の下山絵理選手が自ら倒れこみ、他の選手も続いて重なっていった。

涙を流して歓喜に沸く選手やスタッフの中で、坂元令奈監督は1年目らしからぬ落ち着きを見せていた。

「シーズンがスタートした時は『今年のトヨタは大丈夫か?』と思われているんだろうなって。でも、選手一人ひとりが力をつけて、一戦一戦を戦っていく中でに成長して今この場に立てている。本当に選手たちの成長を感じられる1年でした」

エースとベテランが抜けて、オープン戦では負けが続き、3連覇が不安視されて迎えた今シーズン。坂本監督は「全員戦力」を目指してチームを作り上げた。職場をはじめとする周囲のサポートや応援に支えられて、選手たちも期待に応えながら成長。レッドテリアーズは新たな歴史を踏み出した。

【直前特集】1・2番コンビとバッテリーの絆

トヨタイムズスポーツはセミファイナル前日の11月14日に、超直前情報スペシャルを放送した。

西地区1位の23勝6敗で終えたレギュラーシーズンの戦いぶりや、個人の成績を振り返る中で、番組が注目したのは「1・2番コンビの絆」「バッテリーの絆」という2つの絆だ。

今年最も飛躍したのが、外野のレギュラーをつかんだ2年目の島仲湊愛選手。普段からキャッチボール相手の石川恭子選手と1・2番コンビを組むようになり、4割に迫る打率.395で西地区の首位打者に輝いた。

石川選手から「常に上向きに行っているところが結果として出ている」と評価され、「自分が(塁に)出られなくても、『あとはお願いします』ぐらいの気持ちで打席に入れる」と話していた島仲選手。目標にする先輩と一緒にインタビューを受けることがうれしそうな様子はこちら

昨年までWエースの一人だったメーガン・ファライモ投手は、後藤希友投手の移籍によって今年は獅子奮迅の活躍。25試合125イニングに登板して18勝3敗。防御率0.73と奪三振164が光る。

バッテリーを組む切石結女選手とは、積極的に行くか、慎重に行くかを話し合い、幾多のピンチを乗り越えてきた。メーガン投手は「私たちがお互いの欠点を補い合い、競い合う姿勢こそが、良いコンビネーションを作っていると思います」、切石選手は「とにかく我慢して、最少失点で抑えれば勝てると思う」と語る。息ピッタリの2人のインタビューはこちら

【準決勝】首位打者・島仲湊愛が均衡を破る3ラン

決戦の舞台は、今年3月にオープンした東京都稲城市のジャイアンツタウンスタジアム。15日のセミファイナルは同じ西地区2位の豊田自動織機とのトヨタグループ対決となった。

今季のリーグ戦では3勝0敗だが、直近の対戦となる今年9月の全日本総合選手権の決勝では、1-3で敗れている。3年前のセミファイナルで、ダイヤモンドシリーズ唯一の敗戦を喫した因縁の相手でもある。

リベンジを期すレッドテリアーズだったが、意表を突かれる形での試合開始となった。相手の先発はこれまで苦しめられてきたダラス・エスコベド投手ではなく、山下千世投手。昨年に新人賞を受賞し、日本代表の経験もある左腕だ。

左打者が多いレッドテリアーズ打線は、アウトコースに逃げながら落ちていく山下投手のボールに苦戦した。4回までヒットは内野安打の1本だけ。メーガン投手も気迫あふれる投球で相手打線を封じ、息詰まる投手戦が続いた。

均衡を破ったのは5回ウラ。先頭の7番マヤ・ブレイディ選手が初球を叩いてセンター前にクリーンヒット。新人の小林楓選手がしっかりとバントで送り、代打に藤家菜々子選手が告げられると、ベンチが一気に盛り上がった。

藤家選手は死球を受けるも、笑顔を見せて1死一二塁。続く島仲選手は、初球からフルスイングの姿勢を変えずに見せたかと思えば、2球目は意表を突くバント。インタビューで語っていた「逆をついたり面白いプレーをお見せできたら」を有言実行した。

そして3球目。内角のチェンジアップにドンピシャのタイミングで合わせ、右中間への3ラン本塁打。島仲選手は歓喜の輪に迎えられた。

「チェンジアップが打ててなくて苦しんでいたんですけど、自分でも驚いています。1球で仕留めるという、それしか頭になかったので、『きたー!』と思ってしっかり振り抜けたので良かったです」と振り返る先制ホームランの打席はこちら

完封のメーガン・ファライモ、打線へのアドバイス

5回のレッドテリアーズ打線に火を付けたのは、意外な人物だった。好投を続けていたメーガン投手が、攻撃前に円陣を組む野手に加わり、「相手投手のことは映像を何度も見てわかっているんだから、もっと自分にフォーカスした方がいい」とアドバイスしたという。

奮起した打線のサポートを受けて、メーガン投手のギアがさらに上がっていく。6回表は2三振に切って取った。

6回ウラは1死満塁のチャンスを迎えるも、島仲選手のミートした打球がショート正面のライナーになるなどの不運もあり、追加点は生まれず。

最終回もメーガン投手の勢いは止まらず、10個目の三振を奪い、最後の打者もショートゴロでゲームセット。最も活躍した選手へのMWP賞は島仲選手に譲ったが、攻守でチームを支えた大黒柱は間違いなく1安打完封のメーガン投手だった。

彼女をリードした切石選手は、試合中に絶妙のタイミングでマウンドに向かい、投げ急ごうとするメーガン投手と意思を確認しあって呼吸を整えた。過去3年のダイヤモンドシリーズで1点も取られていない最高のバッテリーは、試合終了直後に笑顔でお互いを称えていた。

【決勝】機動力でつかみ取った先制点

16日の決勝の相手は、長年のライバルでもあるビックカメラ高崎。前日の準決勝では、東地区1位の戸田中央と対戦し、上野由岐子投手がトヨタから移籍した後藤希友投手に投げ勝って完封。最終回の1点が日本代表の両エースの明暗を分けた。

近年の上野投手は規定投球回数に達していなかったが、今シーズンは10勝を挙げて復活。野手陣も日本代表を支えてきた選手たちが名を連ね、東京大会の金メダリストがいないレッドテリアーズを経験の差で圧倒している。

前日を完封したメーガン投手と上野投手の先発で始まった試合は、1・2回がともに無得点。先手を打ったのはレッドテリアーズだった。

3回表、先頭打者の伊波菜々選手がスラップ(走り打ち)でセカンドに転がし、俊足を生かして出塁。1番に戻り島仲選手が2ストライクに追い込まれると、伊波選手が仕掛けた。二塁に向かって走ると、ベースカバーに向かったショートの空いた位置に島仲選手が流し打ちをして、技ありのレフト前ヒット。ランエンドヒットが見事に成功した。

さらに伊波選手が三塁を陥れると、送球の間に打者走者の島仲選手も二塁へ。機動力で無死二三塁のチャンスをもぎ取った。

日頃から鍛えている後輩に続けとばかりに、打席に立った石川選手。敬遠も想定されたがフルカウントまで進み、気合で振り切った打球は詰まりながらも前進守備のショートを越えて、センターの前で落ちた。伊波選手に続き二塁走者の島仲選手もホームインし、2点を先制した。

過去のJDリーグのファイナルでの得点は、全てホームランだった。歴史を塗り替えた3回表の攻撃はこちら

最終回の反撃を抑え、3連覇を達成

5回に山田選手の2ランで2点を追加し、先発のメーガン投手もさらに気迫を見せた。3回から6回までパーフェクトに抑え、三振を取るとガッツポーズをして吠える。

最終回の7回ウラ、ビックカメラ打線が底力を見せる。先頭打者が三塁強襲のヒットで出塁。初めてランナーを二塁まで進めて、メーガン投手にプレッシャーをかけた。

2死三塁で迎えたのは、コーチから現役復帰した金メダリストの我妻悠香選手。初球をすくい上げるように打ち、レフトのポールを巻く意地の2ラン本塁打を放った。

それでもレッドテリアーズの選手たちは落ちついていた。マウンドに向かった坂元監督から言葉を受け、最後の打者を迎える。打球は2日間で何度も好守を見せてきたショートの石川選手の前に転がり、1年間の戦いが終わった。

石川選手が最高殊勲選手賞

日本代表のキャプテンを務め、常に冷静な石川選手がトヨタイムズのカメラの前で泣いていた。

試合直後のインタビューで、涙をぬぐいながら「きつい春とか夏もあったんですけど、こうやって皆さんの前で感謝を体現できたことは本当に良かったなと思います」と答え、スタッフや職場の人々への感謝を伝えた。

最高殊勲選手賞は、力投したメーガン投手や本塁打の山田選手ではなく、石川選手が選ばれた。タイムリーを放ったのはもちろん、守備で何度もチームを救ってきたのが大きく、今年のチームの戦いを象徴しているとも言える。

実況の森田キャスターも「ショートにこの人がいてくれるのはチームにとって大きいですし、もしかすると今年の最大の功績は弟子を育てあげた。島仲選手が本当に育ちました」と補足していた。

表彰セレモニーでの坂元監督や石川選手のインタビューはこちら

4連覇に向けて、新しい歴史をつくる

レッドテリアーズのリーグ3連覇は、2010年から12年に続いて2度目。今回のトヨタイムズスポーツの実況席では、当時を知るOGの山根佐由里さんと渡邉華月さんが解説していた。

「この先3 連覇の記録を更新してくれる後輩たちと思っています」と、渡邉さんは放送の最後を締めくくっていた。キャプテンの鎌田優希選手も「歴史に並びました。新しい歴史を作りたいと思います」と、先輩たちを超える意気込みを語る。

期待されるのはJDリーグだけではない。2026年秋には7連覇を狙うアジア競技大会が地元の愛知・名古屋で開催。28年にはロサンゼルス大会でソフトボール日本代表は3連覇を目指す。前回のアジア競技大会に出場した石川選手や切石選手はもちろん、山田選手や島仲選手らレッドテリアーズの選手たちが世界で戦う姿を見たい!

3連覇から4連覇へ。常勝軍団への道は始まったばかりだ。

毎週金曜日11:50からYouTubeで生配信しているトヨタイムズスポーツ。次回(2025年11月21日)は、開催中の東京2025デフリンピックを特集する。聴覚障害者を対象とする国際大会に、世界各国から約3千人の選手が参加。トヨタからは円盤投の湯上剛輝選手、卓球の川口功人選手、バスケットボールの加藤亮太選手、バレーボールの安田晃斗選手が出場する。ぜひ、お見逃しなく!

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