5連覇達成後、次なる舞台は日本。注目はチーム内での熾烈なドライバーズタイトル争い! 愛知・岐阜で行われたラリージャパン2025の4日間を総まとめ。
2025年11月6日〜9日の4日間、愛知・岐阜でFIA世界ラリー選手権(WRC)の第13戦「WRCフォーラムエイト・ラリージャパン2025」が行われた。
今季、TGR-WRTはすでに5年連続となるマニュファクチャラーズタイトルを獲得。残る2戦ではドライバーズタイトル争いが最大の焦点となっていた。トヨタイムズスポーツでは、そんな状況下で行われたラリーの様子を現地から生配信。さまざまなドラマが生まれた4日間をダイジェストでお届けする。
美しい紅葉の日本で勃発! トヨタドライバーズによる頂上決戦の行方
里山が残る田園風景や情緒あふれる城下町など、日本らしい秋の景色を走り抜ける「ラリージャパン」が、今年もトヨタのホームグラウンドに帰ってきた。
ラリーの最高峰であるWRC。TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)は昨年に引き続きGR YARIS Rally1で参戦。10月に行われた第12戦「セントラル・ヨーロピアン・ラリー」で5年連続となるマニュファクチャラーズタイトルを獲得した。
今シーズンはここで落ち着くかと思いきや、熾烈なドライバーズタイトル争いが決着していないとあって俄然注目が集まる。トヨタイムズスポーツでは今年より番組内で国際映像を使用するなど、森田京之介キャスターを中心により臨場感のある現地リポートを行った。
また、今年もラリージャパン スペシャルサイトを開設しており、豊富なコンテンツが揃っているのでチェックして欲しい。
ポイントリーダーとしてラリージャパンを迎えたのは、WRCで今シーズン2回優勝しているエルフィン・エバンス(247pt)。13pt差でセバスチャン・オジエ、カッレ・ロバンペラというトヨタドライバーが同ポイント(234pt)で並ぶ。1つの大会では最大35ptを獲得できるため逆転は可能。誰がタイトルを獲得してもおかしくない歴史的な三つ巴のドライバーズ争いが勃発している形だ。
エバンス選手は4度のシーズン2位があるものの未だ1位は無く、悲願の初タイトルを目指している。オジエ選手はスポット参戦ながらコンスタントに表彰台に立つ王者の走りで史上最多タイの9度目の総合優勝を目指し、ロバンペラ選手は来季からは日本のスーパーフォーミュラに移籍すると発表しファンを驚かせたばかりでもあり。
日本最後のラリーで有終の美を飾りたいところ。
そしてもちろん、日本のラリーファンにとって大注目なのが、地元出身の勝田貴元選手。勝田選手はこれまでWRCで4度の2位を獲得したが、いずれもオジエ選手やエバンス選手、ロバンペラ選手というトヨタドライバーに阻まれている形となっている。
昨年のラリージャパンでは、チームの逆転優勝のための走行をした勝田選手。地元ファンの前で攻め切れず悔しい思いをしたが、今年はスウェーデンとフィンランドのラウンドで2位表彰台に立ち、とくにスウェーデンではトップのエバンスに3.8秒差に迫るなど速さを見せ、悲願の初優勝をホームラリーで目指す。またフル参戦1年目のサミ・パヤリ選手の走りにも注目が集まる。
開催に先だってインタビューに答えたオジエ選手は、ラリージャパンの展望についてこう答えた。
「自分にとって最も大切なのは、それぞれの大会を心から楽しむこと。(中略)もちろん厳しい戦いになるでしょうが、接戦こそが自分の好きな戦い方だし、このスポーツの醍醐味でもある。同じマシンでお互いに限界まで競い合う瞬間を楽しみにしている」
TGR-WRT各ドライバーのラリー直前コメントはこちら
【DAY-1】駆けつけたファンも大興奮! 4日間のお祭りがスタート
ラリージャパン初日の「DAY-1」は、愛知県豊田市の鞍ケ池(くらがいけ)公園で「SS1 鞍ヶ池公園SSS」が行われた。
印象的なラウンドアバウトを周回するこのコースでは、TGR-WRTのロバンペラ選手が首位に立ち、勝田選手が0.3秒差の総合3位、オジエ選手が総合4位、TGR-WRT2からエントリーしたサミ・パヤリ選手が総合5位に、エバンス選手は総合6位。好位置で5人のTGR-WRTドライバーは1日目を終えた。
夕暮れがせまるころには豊田市駅周辺でウェルカムショーが行われた。SS1を走り終えたラリーマシンが次々に現れパレードを行い、ドライバーとコ・ドライバーが観客の声援に応えると会場は一気にお祭りムードに突入した。
多くのラリーファンや各国のメディアが詰めかける中、TGR-WRTのドライバーを激励するために豊田章男会長が登場するとさらにヒートアップ。
新体操の元日本代表・竹中七海アスリートキャスターも登場し、「いつもの豊田市駅とは思えない、エンターテインメントな空間。すごく素敵だしいい音で、ずっと聴いていたい」と、ラリー初日の様子を興奮した様子でレポートしてくれた。
【DAY-2】勝田がトップタイムを叩き出し躍進
DAY-2は、いよいよ愛知県内の山岳地帯を走る本格的なSSがスタート。
早朝より「SS2 稲武設楽」「SS3 新城」「SS4 伊勢神トンネル」という、ラリージャパンの定番である3つのステージを巡り、午後は午前と同じコースを順を変えSS5〜SS7とするループでタイムアタックを行った。
トヨタイムズの生中継には、今回のラリーでゼロカーのドライブを担当した山田啓介選手が登場。ゼロカーとはラリー開始直前にコースのコンディションを最終確認すると同時に、ラリーカーの登場を待ちわびる観客にSSの開始を告げるという重要な役割をも担っている。
山田選手によるとDAY-2はテクニカルなSS揃いで、「とにかく変化が激しい(稲武設楽)」「情報戦になるかも(新城)」「トンネルを抜けるとそこは…(伊勢神トンネル)」と、“ラリーの裏方”ならではの視点で“SS耳より情報”を解説してくれた。
その他にも、WRCチャレンジプログラム3期生である松下拓未選手がメカマニア目線でサービスを生解説するコーナーなど充実の内容となった。
この日の6本のSSのステージウイナーはオジエ選手が3回、エバンス選手が2回、勝田選手が1回と、トヨタ勢が速さを見せた。一方ロバンペラ選手は高速セクションで左リアをガードレールにヒットし総合優勝争いから後退を余儀なくされた。
SS7までを終えたDAY-2の総合順位は、1位のオジエ選手に+7.9秒で勝田選手が2位、3位はエバンス選手、ロバンペラ選手は17位となった。