
本業とは関係ないように見える取り組みを紹介する「なぜ、それ、トヨタ」。今回は小学校の働き方⁉︎
改善事例が続々と!
去年の夏から1年かけ、あらゆるTPSが実践された。代表的な4つを紹介する。
事例① 放送室のケーブルを見える化
【改善前】
あらゆる種類のケーブルが一緒に置かれ、何に使うものか担当教員しかわからない
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【改善後】
ケーブルごとに、場所と用途を明記。誰が見てもすぐにわかる

紙の色を変えることで、ケーブルごとの違いが一目瞭然!探す時間はもちろん、片づける時間も大幅に削減できた。

事例② 放送室のモノの置き場所を決める
【改善前】
あらゆるモノが無造作に置かれ、探す時間がかかり、紛失しても気づかない
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【改善後】
置き場所を決めたことで、探す時間がかからない。見た目もキレイに

事例③ 会計処理をまとめて効率UP
【改善前】
各担任の先生が、放課後に会計処理をしていて帰宅時間が遅くなっていた
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【改善後】
学年ごとに会計係を1人配置。各先生の負担が減少

学校では、会社のように経理や総務の部署がないことが多い。夕方に授業が終わってから会議や事務作業が続くので、どうしても終業時間が遅くなりがちだったのだ。
事例④ カギ利用者も見える化
【改善前】
各教室のカギを、誰が持ち出したのかわからない
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【改善後】
カギを持ち出すとき、マグネットを貼ることで、誰が使用しているか明確に

カギの利用者を見える化した件は、先生たちが自主的に考えたそうだ。まさに改善が定着しつつある証。先生たちはこのようなメモも持ち歩いている。

なぜそんなことをするの?
TPSの取り組みについて、先生たちの本音を聞いてみると…
最初は「忙しいのになぜそんなことするの?」と不満でした(笑)
でも、どこに何があるか新任の先生でも一目瞭然になったので「ラクだな~」と実感できるようになったんです。
「めんどくさいな」と思うこともありました(笑)ただやってみると、本当に手間が省けて「やってよかった」と心から思えます。


はじめは理解されなかった。それはトヨタ側も感じていたようで…
トヨタ自動車九州TPS推進室 和久田篤男主幹

はじめは「学校現場を知らない人たちが何を言ってるの?」という感じもあったと思います。だからこそ、やり方を押し付けるのではなく、現場で困りごとを聞く。
先生たちは長時間労働をしているという認識が薄かった。私たちが伝えたかったのは「先生、もっとラクしませんか?」ということです。小さい改善を繰り返すことで、少しずつお役に立てればと思います。
トヨタが大切にしているのは、ただムダを省くことではなく「誰かのために」という想いだ。校長先生は「意外だった」と語る。
宗像市立赤間西小学校 高橋茂校長

トヨタさんからは「現場のムダをなくそう」と言われると思っていたのですが「どんな学校にしたいか」「どういう先生でありたいか」を問われて驚きました。
トヨタの「誰かのために」という考え方は、我々にとっては「児童のため」そして「先生自身のため」と言い換えることができ、どんな場所でも通ずる考え方だなと感じました。


先生という仕事は“個人商店”。それぞれが自分流のやり方を持っている。だからこそムダをなくす共通のルールをつくれば、全員の仕事がラクになっていく。
効率化が目的だと誤解されがちなTPS。豊田章男が「私の解釈ですけど」と語った"トヨタ生産方式" 豊田章男の解釈という記事も必見だ。
宗像市では別の小学校でもTPSの取り組みを始めるという。また、この学校でTPSを体感した先生たちも、いずれ別の学校に異動する。異動先でもTPSの思想は広がっていくだろう。
学校での働き方は、劇的には変わらないかもしれない。だが、TPSの意識を持つ人が少しずつ増えることで、着実に未来は変わっていくはずだ。
