シェア: Facebook X

URLをコピーしました

「えっそんなことまで!?」裾野が広すぎる研究でウツボカズラのすごいことを発見した話

2025.11.06

本業とは関係ないように見える取り組みを紹介する「なぜ、それ、トヨタ」。今回はウツボカズラの研究!?

すごいぞ!表面張力

研究を進めると、驚きの事実が判明。

図の「右から左」へと水を流すと、突起のくぼみを乗り越えて水はスラスラ流れていく。

しかし「左から右」に水を流すと、表面張力が働いて、水が止まることが判明したのだ。

この意外な機能の発見に、全員テンション爆上がり!

これだけでも大発見なのだが、町田は「この構造を再現したモデルをつくって証明したい」と言いだした。ここにいる研究者たちは、徹底的に調べ尽くさないと満足できない集団なのだ。

そして、人工的につくったモデルに水を流してみると、見事同じ動きで証明できた。満を持して学会で発表。すると冒頭のようにSNSで大きな話題となったのだ。

豊田中央研究所 主任研究員 町田悟

ウツボカズラといっても、100種類以上あって、入手できるウツボカズラは全部買い集めました。大量にウツボカズラを買っているので家族は不思議がっていました(笑)

でも多くの種類を調べると、新たな発見が。

形状など差はあれど、襟の構造は基本的に全部共通だと分かったんです!しかも大小の違いがあっても「流路の幅や角度」はほぼ同じだったんです!

これには植物学会の先生からも「知らなかった!」と驚かれたという。

ただし、残念ながら海外でも同じような研究がひと足早く発表され「まさかこんな研究でもライバルがいるなんて。もっと早く研究を進めるべきだった」と悔しい思いをしたそうだ。

とはいえ、この機能や構造はクルマのミラーなどにも応用できる可能性があり、トヨタグループ各社の研究者のインスピレーションにつながる画期的な研究となった。自然に学ぶという哲学は「Genki空間®」にも受け継がれている。

葉の形状の違いが「活力アップ」「癒し」「集中力アップ」など効果の違いにつながっていることが分かったのだ。

大きな葉に囲まれて、活力アップが期待される会議スペース
小さく丸い葉が多く、癒しが期待される空間
細い葉によって集中力アップが期待されるデスク

このGenki空間®は、2029年の開業を目指して品川に建設されているトヨタの新東京本社でも導入を検討。まさに、基礎研究の重要性を痛感できるエピソードだ。

人間だけがいい思いをするのではなく

最後に豊田中央研究所の村本はこう語る。

豊田中央研究所 バイオインスパイアードシステム研究領域 リーダー 村本伸彦

生物は、何十億年もかけて進化してきているので、きっと人の幸せにも生かせるはずです。

人間だけがいい思いをするのではなく、共生することが大事。頑張らないと共生できないなんてことはない。自然の研究は、あらゆる生物が共存するウェルビーイングを目指す今の時代に合っていると感じます。

こうした哲学に基づき、10年ほど前に始まったのが「自然に学ぶ活動」です。現在はバイオインスパイアードシステム研究領域という名前に変わっていますが、根底にある哲学は同じ。

生物に学び、着想を得て、私たちの暮らしをより良いものにしていく。それが我々のバイオ研究の根幹にある考え方なのです。

すぐに実用化につながらなくても、幅広く基礎研究を進める。それこそが社会に新たな幸せを生み出す源泉になっていく。

トヨタグループならではの「裾野の広い研究」。ここからどんな未来が生まれていくか楽しみだ!

Facebook facebook X X(旧Twitter)

RECOMMEND