
日本自動車会議所の新会長に就任した豊田章男会長。日本の生活を支えるクルマを、文化としても欠かせない存在にしていく決意が語られた。

6月10日、日本自動車会議所の2025年度定期総会が行われ、内山田竹志 現会長の退任、および豊田章男 新会長の就任が発表された。
豊田喜一郎も発足に尽力した「自動車協議会」を前身団体に持つ、日本自動車会議所は、戦後間もない1946年に設立。日本の発展を自動車産業が牽引するという強い決意とともに生まれた、79年の歴史をもつ自動車の総合団体だ。
現在は166の自動車関連の団体や企業が参加。その歴史や目的については、トヨタイムズビジネスで詳細が解説されているので、併せてご覧いただきたい。
就任のあいさつで豊田新会長は、「日本人の誰もが『日本の自慢はなんといってもクルマです』と答えられるようにしたい」と語り、その実現に向けた “合言葉”を示した。スピーチの内容を全文掲載で紹介する。
クルマを日本が自慢できる文化に
豊田新会長

豊田でございます。本日より日本自動車会議所の会長を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
さっそくですが、先ほど行われました総会で、会員の皆さまにお話ししました、私の思う日本自動車会議所の合言葉を、この場でもお話しさせていただければと思います。こちらです。
自動車会議所のお話をいただき、発足当時の設立趣意書を振り返って参りました。
昭和21年(1946年)、79年前に書かれた趣意書の冒頭がこちらです。
「国民の生活維持と文化向上に車は不可欠」とあります。
おかげさまで今、クルマは日本の人流、物流に欠かせないものとして、お役に立てていると思っています。
しかしながら、文化としてクルマは日本のお役に立てているのでしょうか?少し不安になってしまいました。
海外に行ったとき「あなたの国はどんなところですか?」とよく聞かれます。皆さんだったら、日本のなにを自慢されるでしょうか?
春夏秋冬、和食、伝統芸能、工芸品、治安の良さ、日本の自慢は色々あると思います。最近だとアニメもあるかもしれません。
流行りのAIにも、この質問をしてみました。
やはり、文化・伝統・観光・自然が一番に出てまいります。技術・産業はその次。そこに自動車産業も、やっと出てまいります。
同じように、ドイツの自慢も聞いてみました。
一番の自慢は経済と技術力。その代表選手が自動車という結果です。
AIはネット上にある全ての情報を読み込んでいると伺っております。ですので、おそらく本当にドイツの方に聞いても、こうやってお答えになるのではないかと思います。

そんなドイツをうらやましく思いました。日本もドイツのように「クルマが我が国の文化だ」と一番に答える国であったら、我々はどんなに嬉しいだろうと感じます。
他の誰かが「国の自慢なんです」とクルマのことを話してくれてたら、自動車に携わる我々は、自分の仕事をもっと誇らしく思えるのではないでしょうか?
「あなたの国を自慢してください」と聞かれた多くの日本人が、「日本の自慢はなんといってもクルマです」と答えるようにしていきたいと思います。
さらに言えば、AIに聞いても、そう答えてもらえるくらいにしていければとも思っております。
「クルマをニッポンの文化に!」
この言葉を新たな合言葉として、我々、日本自動車会議所は、これからさまざまな活動をしていければと考えております。
皆さま、よろしくお願いいたします。
自動車会議所と自動車工業会の違い
日本におけるクルマの地位を高め、文化として誇れるものにしていく決意を語った豊田新会長。続けて「日本自動車会議所(会議所)」と「日本自動車工業会(自工会)」の違いについても説明した。
豊田新会長
最後にもうひとつ。ここにいらっしゃる皆さんが「豊田章男に聞かなきゃ」と思っていることに先にお答えさせていただければと思います。
自工会との違いを一言でいうと「動かしたい相手」です。
自工会の(会長の)とき、私は「自動車産業が国から頼られる存在になっていきたい」と言っておりました。「動かしたい相手」は、国であり政府だったと思います。
それに対して今回、自動車会議所で動かしていきたいのは「人々の心」だと考えております。
クルマが“自慢したくなる文化”になっていくためには、政府ではなく、日本の皆さまの心を動かさないといけないと思っております。
それが、私が思っている自工会と自動車会議所の大きな違いです。違いは、どんな団体が会員に名を連ねているかにも表れていると思います。

自工会には製造の会社が集まっていますが、会議所には販売・整備・運行、そして保険、エネルギーといった自動車に関わるほとんど全ての業界団体・企業が集まり、今年からはユーザー団体のJAF(日本自動車連盟)も加わりました。
そこには、あらゆる現場があり、クルマに関わるさまざまな仕事をしております。
そのみんなが、クルマをニッポンの文化にするため、色々なアクションを始められたら、日本の経済や国の力に、もっとお役に立てるようになると思います。
日本自動車会議所。多くの方にとっては聞きなれない名前の団体だと思いますが、まずは“会議所”という名前とスローガンだけでも本日、覚えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
