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モータースポーツを日本の文化にするには? 各団体トップが公開会議

2025.11.14

ジャパンモビリティショー2025で行われた、自動車会議所・モータースポーツ委員会による公開会議。1時間にわたる議論で見つかった課題とは?

10月30日から11月9日にかけて東京ビッグサイト(江東区)で開催されたジャパンモビリティショー2025。

11月1日には、日本自動車会議所(会議所)のモータースポーツ委員会による「公開会議」が行われていた。

同委員会には、会議所の豊田章男会長をはじめ、国内の4輪・2輪のレース主催団体、日本のモータースポーツの統括団体である日本自動車連盟(JAF)が所属。

7月に初会議が行われ、2回目となる今回は公開形式で実施することに。

会場には豊田会長をはじめとした各団体のトップが集結。「モータースポーツを日本の文化に!」というテーマで、4つの議題について話し合った。

登壇者はMCの森田京之介、豊田会長をはじめ以下の通り。

(写真左から)
・JAFの坂口正芳会長
・GTアソシエイション(GTA)の坂東正明代表
・日本レースプロモーション(JRP)の近藤真彦会長
・スーパー耐久未来機構(STMO)の桑山晴美副理事長
・日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ)の鈴木哲夫会長
・モータースポーツ委員会の加地雅哉委員長

豊田会長が「よくこれだけのメンバーが集まったと思います」と語る貴重な機会に、多くのモータースポーツファンが詰めかけた。

ファン拡大には何が必要か? 現場で働く人に魅力を感じてもらうには?

モータースポーツの未来に向けて行われた、1時間にわたる議論の内容を紹介する。

また、本記事の公開翌日には、富士スピードウェイ(静岡県)でスーパー耐久(S耐)最終戦が開催される。

それに向けた新発表も会議内で行われたので、ぜひ最後まで読んでいただきたい。

なぜ、自動車会議所がモータースポーツを?

会議冒頭、MCの森田が最初に投げかけた質問は「日本自動車会議所(会議所)と日本自動車工業会(自工会)の違いは?」。

これについて豊田会長が、過去に自工会会長を務めた経験を振り返り、両団体の違いについて語った。

豊田会長

(クルマの)文化をつくるのが会議所、政策議論をしてもらうのが自工会で、メンバーも違います。

私が自工会会長だった時は「550万人の仲間たち」と言っていましたが、会議所にはユーザー代表のJAFも加わり、保険や物流なども含め2,500万人を超える自動車関係の仲間がいます。

その会議所で、(4輪・2輪の)各レースカテゴリーの団体やJAFと共に、「モータースポーツ委員会」をつくりました。

今日この場では、モータースポーツの今後の会議を(来場者)皆様の前でさせていただきます。

皆様というファンがいなければモータースポーツは成り立ちません。なので、ファンとともにつくっていく会議にできればと思っています。

また、JAFがモータースポーツ委員会に加わった意義について、豊田会長は以下のように続けた。

「FIA*(国際自動車連盟)の日本代表として(モータースポーツ)のルールを決めたりしている団体がJAF」
* Fédération Internationale de l’Automobileの略。1904年にフランス・パリで設立された、世界のモータースポーツと自動車関連活動を統括する国際組織

「モータースポーツの未来を変革していくには、(2081万人もの会員を持つ)JAFがいないと話にならない。なので、口説いて口説いて、今日はここに来てもらっています」

サーキットで働く人を増やすには?

いよいよ公開会議の本題へ。最初に話すのは、「モータースポーツで働く人の減少」について。

レース業界での人材不足と言えば、メカニックやエンジニアが浮かぶかもしれないが、今回はサーキットの「オフィシャル」に焦点が当たった。

オフィシャルとは、レースの円滑な運営を支える、ボランティアによる現場スタッフのこと。タイム計測をはじめ、ルール違反がないかの監視、ペナルティの判断を含めた審判業務など、役割は多岐にわたる。

また、クルマがクラッシュした際はドライバーを救護。車両を撤去し、後続車に危険を知らせるためにコーナーで旗を振るなど、サーキットでの安全確保も担っている。

豊田会長の言葉を借りれば「守り神」「オフィシャルの方々にサポートいただけないレースは本当に危険」と言える重要な存在だが、近年は年齢層が上がり、人手不足が課題になっている。

これについて、統括団体としてオフィシャルのライセンス発行を担うJAFの坂口会長がコメント。

JAF 坂口会長

(オフィシャルの)年齢層が上がってきて、今は50、60代の方が大半です。

(JAFで)安全の訓練等も実施していますが、だんだんと年齢が上がっているのを実感しており、将来の不安な部分になっています。

豊田会長は「まずは今、オフィシャルの方々が輝くよう、スポットライトを当てることが必要なのではないか」と語り、モータースポーツ委員会の加地委員長も続いた。

FIAでの先行事例を挙げ、日本でも同様の対応が必要と強調。

モータースポーツ委員会 加地委員長

FIAではオフィシャルの専門部会があり、SNSでボランティアの方々の活躍を発信するなどしています。

日本でも(モータースポーツを)インダストリー、文化として興していくためには、そのような取り組みが必要。(オフィシャルを)人気のあるボランティアにしていくことが必要だと思います。

DXに乗り遅れている!進めるには○○が必要

次の議題は、「モータースポーツのDX遅れ」について。

S耐の主催団体であるSTMOの桑山副理事長は、サーキットのインフラも考慮したうえでの改革が必要と語った。

STMO 桑山副理事長

サーキットによってはWi-Fiが遅いなど、通信がきちんと整備されておらず、データのやり取りに時差が生じてしまうケースもあります。

今後デジタル化を進めていくうえでは、我々(レース団体)がやらなくてはいけないこと、サーキットと一緒にやっていくべきことがあると思います。それらを総合的に考えたうえで変えていく必要があるのではないでしょうか。

一方で、DXが進んでいる例も示された。会場で紹介されたのは、スーパーフォーミュラの公式アプリ「SFgo」。

ドライバー目線の車載カメラ映像をリアルタイムで配信。ピットとの無線通信も聴けるほか、後で映像を見返すことも可能など、サーキット内外でレースをより楽しむためのサービスを提供している。

スーパーフォーミュラを主催するJRPの近藤会長は、SFgoがモータースポーツ全体でのDX推進のきっかけになればとコメント。

JRP 近藤会長

SFgoは、私がJRPの会長を務め始めた約2年前にスタートさせました。しかし、ファンの皆様からの「もっとこうしてほしい」という意見はまだ多いです。

ただ、まずはスタートを切らなくてはいけない。スタートを切って、意見をいただきながら一つひとつ改善し、より良いアプリにしていく。

もしよろしければ、このリアルなデータを、ぜひGTAやS耐でも使っていただければと思います。

加えて、豊田章男会長は「協調」がモータースポーツのDXに欠かせないと語った。

豊田会長

各カテゴリーでの違い、サーキットのインフラでもさまざまな事情もあります。なので、皆でスーパーマンになるのではなく、得意分野をシェアしながら協調する。

時間はかかるかもしれませんが、日本のモータースポーツのインフラを含め、カテゴリーを越えて協力していくことこそが大事だと思います。

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