ジャパンモビリティショー2025で行われた、自動車会議所・モータースポーツ委員会による公開会議。1時間にわたる議論で見つかった課題とは?
レースの日程調整、どうにかならない?
3つ目の議題は、「レースの日程調整」について。まずは以下の表をご覧いただきたい。
2025年の各週末におけるレースの開催予定をまとめたものだが、3月から11月にかけては、ほぼ毎週のようにレースが行われている。
これらを取りまとめているのがJAFであり、坂口会長が調整の難しさについて語った。
JAF 坂口会長
短い期間に(4輪と2輪で)多くの競技が集中している。この調整をする際は本当にてんやわんやで、行司役としては毎回毎回、毎年毎年、冷や汗をかいています。
GTAの坂東代表は、天候も踏まえた柔軟な調整を提案。
GTA 坂東代表
日本の気候が変わり、冬は以前ほど寒くならない。逆に、夏は暑くなっている。8月はモータースポーツを休みにして、その分12月から2月にかけて開催するなど、(時期を)変えていくことも必要かもしれない。
続けて、2輪レースを取り仕切るMFJの鈴木会長は、日程調整はオフィシャルにも影響すると強調した。
MFJ 鈴木会長
2輪は4輪が決まった後に(予定を)入れてもらえる。加えて、カレンダーには世界選手権の予定が入っていないため、実際はそれも加味して日程を決めています。
そこで問題になるのは、オフィシャルの確保です。一般的には、サーキットごとに地域のオフィシャルが手伝うと思われがちですが、実際は人手が足らず、別拠点のオフィシャルがレース運営のために移動しているのが現実です。
なので(オフィシャルの分散を考慮して)、東日本で(4輪の)レースがある際は、同地区で(2輪の)レースをせず西日本で行うなども考えている。ですから、最初から2輪も調整に入れていただけるとありがたい。
鈴木会長のコメントを受け、加地委員長(モータースポーツ委員会)は「(現状を変えていくために)モータースポーツ委員会がある」と答え、今後の改善に前向きな姿勢を示した。
さらに、JRPの近藤会長は、今回のような議論ができていること自体が一つの前進とも語った。
JRP 近藤会長
スケジュール調整を含め、レースの運営側が自分たちの目線で話す縦方向の議論ではなく、横方向でのお付き合いができるようにならないか。約2年前から豊田会長にそんな相談をしていました。
今まで(全員が集まって)話す機会がなかったが、ようやくここまでこぎつけたと思っている。
相談された当時を振り返り、豊田会長は「丸投げされました」とコメント。近藤会長がたじろぐ姿に、会場では笑いが起きた。
サーキットに行きたい!と思ってもらうには?
最後に議論されたのは、公開会議“肝いり”の議題である「サーキットの来場者を増やすには」。
まずは以下の、過去10年の観客動員数の推移をまとめたグラフをご覧いただきたい。
参考として、プロ野球の年間観客動員数は約2,000万人だが、モータースポーツはピーク時で、1カテゴリー最大50万人近くに留まっている。コロナ禍に下落したのちは、再び上昇傾向にあるものの、以前のようなレベルまで回復できていない。
STMOの桑山副理事長は、プロとアマチュア混合の“草の根の参加型レース”というS耐の特徴に触れながら、各カテゴリーによる努力が必要とコメント。
STMO 桑山副理事長
「楽しいから来てください!」と言って来ていただけるものではありません。
モータースポーツ界全体で動員を上げる努力はもちろん、各カテゴリーごとの特徴に応じた施策・工夫も必要だと思っています。
例えば、スーパー耐久はプロのレースではなく、(プロとアマチュア混合の)参加型レースなので、(アマチュアの)参加者を増やしていくことが、来場者を増やすうえでも重要になる。
11月15日からの富士最終戦では、S耐の“弟分”となるレース「S耐チャレンジ」をつくりました。また、来年は青山学院大学の自動車部にも出場していただきます。
駅伝のようなことをレースでやれば、将来的には“大学生クラス”がつくれるかもしれない。そんな可能性も考えています。
もちろん、プロのレースでは事情が違いますが、個々のレースの特徴を捉えた変化を、我々は汗をかいて考えなくてはいけない。
モータースポーツにもスターが必要!
サーキットへの来場者増加に向け、豊田会長は“モータースポーツのスター”を生み出すことも必要と語った。
豊田会長
例えば(メジャーリーグの)大谷翔平選手の場合、皆経歴を知っている。花巻東高校で活躍し、北海道日本ハムファイターズに入団。その後、ロサンゼルス・エンゼルスからロサンゼルス・ドジャースに移籍しました。
野球ではリトルリーグから高校野球、社会人野球からプロ野球にわたり、長期的に選手を応援する土台ができている。
プロ野球の年間観客動員数が約2,000万人に対し、モータースポーツは(一カテゴリーで)約50万人。この差の一因は、選手の生い立ちからの知名度かもしれません。
なので、生い立ちから含めて(モータースポーツ選手を)プロモートする仕組みがあればと思っています。
F2、F4、あるいはカート時代から光をあて、選手の成長を若い時から追えるようにする、“ライフタイム人材育成”のようなことが必要かもしれませんね。
若い時からファンに追ってもらえるスター。その一例としてどう感じるか、JRPの近藤会長ことマッチに豊田会長が質問。
マッチは突然の質問に驚きながらも、「モータースポーツにもスターは必要」「日本企業がスポンサーとして応援したくなる選手を生み出さなくてはいけない」と答えた。
さらにその後、公開会議の翌週に行われたラリージャパンに出場したエルフィン・エバンス選手、サミ・パヤリ選手がサプライズ登場。
海外の若き“スター”に向け、ファンによる応援の拍手が響いた。
そして、11月15日から始まるS耐富士最終戦に向けて、豊田会長からサプライズ発表が・・・