5連覇達成後、次なる舞台は日本。注目はチーム内での熾烈なドライバーズタイトル争い! 愛知・岐阜で行われたラリージャパン2025の4日間を総まとめ。
【DAY-3】 「もっと強くなる。それしかない」
ラリー3日目は、今年新設された愛知県内の「SS8/SS13小原」からスタート。
「SS9/SS12恵那」「SS10/SS11笠置山」で岐阜県内を進み、「SS14豊田市SSS」で愛知県に戻るという4つのコースを走るルート。詳細は山田啓介選手によるSS耳より情報 を確認しよう。
午前の3ステージを終え、トップはオジエ選手、2位エバンス選手、3位勝田選手。3人が僅か5.2秒の中で争う熾烈な展開を見せる。
好調な走りの勝田選手をアクシデントが襲ったのは、SS11笠置山でのこと。特設コースのジムカーナセクションに進入する際、ウォーターバリアに接触し右フロントを激しくヒット。これによりハンドリングをアシストするパワーステアリング系統がダウンしてしまう。
コ・ドライバーのアーロン・ジョンストンはオイルを口に含んで排出するなど、献身的なセルフリペアで自走可能なまでリカバーに成功。しかし、その後の切り返しの多いテクニカルセクションでは、歯を食いしばりながらステアリングを操作する勝田選手の奮闘ぶりが国際画像にも映し出されていた。
勝田選手はSS12/SS13もゴールはしたものの、規定時間に間に合わなかったためデイリタイア。大会前に「ラリーは何があるかわからないので、そのあたりをふくめ常にいいところとペースを維持しながらポテンシャルを発揮すれば結果はついてくると思う」と語っていただけに悔しい結果となった。
DAY-3最大の見どころは、スカイホール豊田を飛び出し市街地を走り抜け、豊田大橋を駆け降りてゴールするナイトステージの「SS14豊田市SSS」。勝田選手も待ちわびるファンのため応急処置を施したマシンで出走した。
このSSで初めて本物のラリーを体験したのは竹中アスリートキャスター。さらに元ニュージランド代表で、現在はトヨタヴェルブリッツに所属するラグビーのアーロン・スミス選手も加わった。
ラリー前にサービスパークで勝田選手にも挨拶したというスミス選手は「よくあんな狭い道をあのスピードで走れるね! ドーナッツターンが最高だった!」とコメントした。
DAY-3を終えて総合トップはオジエ選手。勝田選手は34分以上のビハインドで17位となった。サービスパークに戻った勝田選手は「ごめんなさい」と頭をさげるが、「よく走った」と励ますのは豊田章男会長。「もっと強くなります」と続ける勝田選手に豊田会長が「そう、それしかない」と優しく応えていたのが印象的だった。
「カッレと貴元は、ちょっと違った意味で悔しかったと思いますけど、彼らの最高の舞台は今回ではなかったのだろうと思った。でも十分チーム内ではいい役割をしてくれたと思うし。順位という結果はともかく、貴元の成長を日本の多くのファンに見てもらえたと思うし、逆にもっと応援したくなる気持ちになったんじゃないかな。どの選手がチャンピオンとってもおかしくない、それが最後まで本気で戦っている。(TGR-WRTは)家庭的でプロフェッショナルというものの、チーム力のすごさは本当にすごい。とんでもないチームだなという感じがしますね」(豊田章男会長)
ラリージャパン2025を振り返った会長のコメントはこちら
サービスの時間がやってくると18号車は、エンジニアとメカニックが総出でリペアを開始。明日の最終日を走り切るため、作業が行われた。
【DAY-4】王者オジエと巧者エバンス、勝敗のゆくえは?
残念ながら勝田選手が優勝争いから脱落して迎えたラリー最終日は激しい雨。この日は「SS15/SS19額田」、熊野神社の前のT字路を駆け抜ける名物の「神社ンクション」で知られる「SS16/SS20三河湖」、「SS17/SS18岡崎SSS」と合計6つのステージを走った。
「SS20三河湖パワーステージ」の終了後、暫定表彰式が行われた。総合優勝はスーパーサンデー、パワーステージの全てを制するパーフェクトウインを達成し35ptを追加したオジエ選手がトータルタイム03:21:08.9で獲得し、ラリージャパンでは初優勝。2位はエバンス選手、そして3位に若手のパヤリ選手が入り初の表彰台。トヨタが表彰台を独占した。
気になるドライバーズタイトル争いは、エバンス選手(272pt)とオジエ選手(269pt)の順位に変動はないものの、その差はわずか3pt。ロバンペラ選手も24ptビハインドと差は開いたものの、展開によっては可能性が残る状況で最終戦の14戦ラリー・サウジアラビアに持ち越される結果となった。
暫定表彰式で勝田選手は森田キャスターのインタビューに答え、以下のように話してくれた。
「戦線離脱してしまった自分が言えることはとくにありませんが、序盤から優勝を争えるスピードがあって、(中略)スーパーサンデーもずっとトップで走って良い感触だった。それを思うと残念でしかない。(中略)応援してくれるファンのためにも早く優勝を報告できるようになりたい。来年のラリージャパンは5月ですし、さらに強く速くなって良い走りを見せられるように頑張りたいです」(勝田選手)
安定感のあるエバンス選手や王者の貫禄を見せたオジエ選手。そして、はかり知れない巨大なプレッシャーを背負いもがく勝田選手をはじめとするトヨタドライバーのチャレンジは、ファンにより奥深いラリーの真髄を見せてくれたはず。こうして激闘の4日間のラリージャパンは幕を閉じた。