本業とは関係ないように見える取り組みを紹介する「なぜ、それ、トヨタ」。今回はトヨタがサウナ⁉︎
慣れ親しんだものに水素を使う
フィンランドからやって来たイノベーション&テクノロジー部門責任者は、水素の意義をこう語った。
ハルビア社 CTO ティモ・ハルビアさん
多様な業界であるサウナ市場において、従来の薪・電気・ガスの方式に加え、水素という持続可能な選択肢を提示できたことは本当に嬉しい。社内でも評判がよく、サウナの可能性を広げてくれたことに感謝しています。
続いて答えてくれたのが、Central Finland Mobility Foundation (以下Cefmof)の担当者。
Cefmofとは、ユバスキュラ市、TGR-WRT、トヨタ・モビリティ基金が連携して2024年に設立された社団法人で、カーボンニュートラル達成と持続可能な社会を目指している。
「日本の夏は“ベリームシムシ”しているね」と笑う彼。背負っているのは水素を簡単に持ち運ぶことができる水素カートリッジ。燃料電池車「MIRAI」で培った水素貯蔵技術を応用したものだ。
Cefmof 副事務局長 ラウリ・ペラマキさん
当初、トヨタの水素調理機でのスチーム加熱を見て「これはサウナでのイノベーションに使える!」と、すぐにハルビア社に電話して開発が始まったんです。
水素社会を広げるには「身近に体験できる」「イノベーションを起こす」「エコシステムをつくる」の3つが大事。まずは小さく始めて、ユバスキュラ以外の国や地域でも展開できるように“成功できるレシピ”を増やしていきたいですね。
これには、トヨタも呼応。
トヨタ 中村 プロジェクトマネージャー
その国で、多くの人に愛されているものに水素を使うことが大事。そうすればエコシステムとして広がりやすいと考えています。
この日は、ユバスキュラ市長も来日。「フィンランドと日本は、文化的共通点も多い。日本でサウナが愛されているのはうれしい」と語る。
ちなみに、取材の前日はプロ野球で阪神タイガースが優勝。
道頓堀川に飛び込む人がいたが、フィンランドでもアイスホッケーで推しのチームが優勝したら、湖や噴水に飛び込む人がいるらしい。まさかの共通点(笑)
ただし、サウナに関しては大きな違いもあるようで…
会議中でもサウナに入っちゃう
ハルビア社 エンジニア ヨーナス・ヒンティッカさん
以前に日本のホテルでサウナに入って驚いたのが、日本人はサウナの中でしゃべらない。じっと熱さに耐えている(笑)
日本では疲れやストレス解消のために入る人も多いけど、フィンランドはサウナに入って会話を楽しむ。時計がないから時間なんて計ったことがないです。日本の風呂はすごく熱くて驚きました(笑)
パビリオンの展示パネルには「フィンランドで、サウナの数はクルマの台数よりも多い。別荘や職場を含めると一家に平均3台も」と記載されていた。
「えっ!職場にサウナ!?」と思って聞いてみると…
ハルビア社 マーケティング&ブランディング責任者 パイヴィ・ユオラフティさん
サウナに入りながら会議をすることもありますよ。会議室で話して、煮詰まったらサウナで続きをやって、出てから会議を終えるんです。
実は、今回の共同開発でもサウナ会議があったそうだ。トヨタの中村いわく「サウナの中で質問があり、結論が出るまで40分もずっと入ってました(笑)」。まさに裸のお付き合い。
また、今回の協業で驚いたことがあったという。
トヨタ 中村 プロジェクトマネージャー
ハルビア社は会議をしなくてもすぐに物事が決まる。困りごとが出たら現場ですぐ解決。スタートアップじゃないのにプロジェクトを進めるスピード感がすごいと思いました。
というのも、フィンランドは人口が少ないんです。日本と同じくらいの面積なのに人口は日本の5%以下。まさに少数精鋭。コンパクトなコミュニケーションで、意思決定も早い。
一方、朝と昼には職場のみなさんが集まって毎日コーヒータイムがある。夕方には家に帰って家族や友人との時間、外に出て自然と過ごす時間を大切にしています。
フィンランドの働き方には学びが多かったですね。
水素サウナには、ロウリュで何度も水をかけなくてもミストが広がるなど、独自の魅力が多い。すると展示を見ていた人たちから歓声が沸き起こった。
「水蒸気で喉がカラカラにならないから、サウナの中でも話しやすいのがいい!大好きなサウナを長時間楽しめそう!」と、期待を口にしたのだ。今後の水素サウナの展開に、大いに期待が持てそうだ。
この取り組みはトヨタイムズニュースでも取材。中嶋副社長がサウナから飛び出して湖に飛び込んだシーンも!サウナの中がどうなっているか、映像でもお楽しみください!