【毎日約794人が脳卒中!?】トヨタが病院で使われるロボットをつくる意義

2025.03.11

突然、半身不随になることは誰の身にも起こりうる。だからこそ"あるロボット"の利用者が増えているという。

「妻とごはんを食べていたら突然、腕が動かなくなって、茶碗が手から離れなくて…」

定年退職から2年。永井俊彦さんは脳卒中の影響で半身不随に。懸命にリハビリを続けたが、1カ月経っても回復せず「一生車いすを覚悟した」という。

なんと、毎日約794人が脳卒中に…

日本人の三大疾病のひとつである脳卒中。新規発症者数は再発も含めるとおよそ年間29万人ともいわれている。一日あたりに換算すると、なんと毎日約794人もが脳卒中になっているのだ。

その数字を見れば、誰が当事者になってもおかしくない。だからこそ、脳卒中になった方がどのような感情を抱き、どんなリハビリを行うのかを知っていただきたい。

半身不随のなかで懸命にリハビリに励む人たちに、トヨタは何ができるか。リハビリ支援ロボットの詳細をお伝えする。

歩行は人にとって根源的な“移動の機会”だ。だからこそトヨタは2007年にロボットの開発をスタート。リハビリ医学の権威である、藤田医科大学の現最高顧問・才藤栄一教授と発売後も改善を繰り返してきた。

この動画のように、自由に動かなくなった脚の動きをアシストしつつ、自分で歩けるようになるための情報がモニターに映される。過去の詳細はこの記事もご覧いただきたい。

今では全国105もの病院や施設で導入されており(202412月時点)、冒頭に紹介した永井さんは、三重県津市にある藤田医科大学七栗記念病院でリハビリに励んでいる。当時の状況を聞くと…

「救急車で運ばれて、気づいたら左半身が動かない。健康維持のために毎朝1時間も歩いていたのに…」

リハビリを続けてもうまく歩けない。そこでリハビリ支援ロボットでの歩行練習を開始した。

「最初の印象は良くなかったです。強制的に歩かされて、これでほんとに歩けるようになるんか?って疑ってました」

通常の歩行練習は、膝と足首を装具で固定し、理学療法士が後ろから数十キロの体と動きを補助して歩かせる。療法士は歩きを補助するだけで精一杯だ。

しかしこのロボットは、ハーネスで吊って体幹を支え、脚の持ち上げや膝の曲げ伸ばしをサポートしてくれるので療法士は細部まで目配りできるという。

「使い始めて一週間くらいかな。『歩けるかも?』ってちょっとずつ意識が変わってきて」

モニターには歩く姿が映し出され、麻痺した足裏のどこに荷重がかかっているかなど、リアルタイムで表示される。できていないことを自分の目でチェックできるので改善ポイントを理解しやすい。

「最初に映像を見たときは、ひどいもんでしたよ。体は揺れてるし、右肩は落ちてるし、猫背だし。歩き方が悪かったとすぐにわかった」

「踏み出す足を『すこし外に向けよう』と考えることができたんです。ウェルウォークを使う前は(歩くことに必死で)何も考えてなかったですよ」

リハビリをサポ―トする理学療法士の東さんは「自分で考えながら練習しようという意欲が、上達した理由だと思います」と嬉しそうだ。

脳卒中になる以前の永井さんは、奥様と一緒に出かけてもスタスタと前を歩き「ちょっと!早い!早い!」と言われていたという。今、奥様が見舞いにきた際は二人で一緒に歩き、会うたびに回復する姿に奥様も驚いているそうだ。

若い頃の永井さん。まさか自分が脳卒中になるとは思ってもいなかったという

屋内であれば杖をついて800mも歩けるようになり、次は、屋外を一人で安全に歩くことを目指している。

「毎朝歩いていた近所の公園を歩きたいですわ。あと、家の前のコンビニに行ったり、200m離れたところにあるファーストフードに行って食べて帰ってきたり(笑)」

あたり前だった日常を取り戻したい。そんな想いがひしひしと伝わってくる。今はクルマの運転も練習中で、よく訪れていた伊勢・志摩に行きたいと語ってくれた。

「でも、駐車場降りてから、またいっぱい歩かなアカンな(笑)」

永井さんが笑顔で語ると、医師や療法士もみんなが嬉しそうに笑っていた。

トヨタイムズでは、3年前にも別の患者さんである浦田さんを取材している。今では一人で元気に通勤しているそうだ。

「このロボットはどん底から立ち上がる奇跡的なツールでした。最近は杖をつきながらですが頻繁にヒールも履けるようになっています」と教えてくれた。

左から3人目が浦田さん。くも膜下出血で倒れる前と同じヒール姿が印象的だ
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