
クルマ好きを惹き付けてやまないエンジンの音。エンジンが無くてもドライバーを楽しませる音がするBEV。電動化時代の音づくりとは?

これまでエンジンの音について解説してきた。それはレシプロエンジンありき、エンジンを搭載しているクルマがあってこその話。
では、燃料電池車(FCEV)、電気自動車(BEV)など、CMで「電気で走るトヨタ=E TOYOTA」と言っている電動車にサウンドが無いのか?というと、無音ではない。走ると「ウィーン」だったり、「キュイーン」という音が聞こえてくる。
以前、豊田章男社長(当時)は入社式にスープラを用意し、エンジン音を新入社員に聞かせたことがある。
豊田社長(当時)
この入社式が、皆さんの一生の記憶に残るようなことを今からしたいと思います。
電動化の時代に、このガソリンの音…。レースカーじゃないんで、ちょっと品のある音ですが…。
クルマは五感で感じるものだと思います。どんなCASEの時代になっても、全ての人に移動の自由、そしてクルマって楽しいなと思うモノを、モノづくりを、皆さん一緒にやっていきましょう!
そう、クルマは五感で感じるもの。
アクセルをグッと踏み込んだとき、回転数が上がる音がしないと、いくらクルマが加速しても加速感を感じないのではないだろうか。
電動車でも同じ。クルマを五感で感じて欲しい。今回はエンジンのないクルマの音づくりについて聞いた。
クルマにあったエンジンサウンド
これまでの取材で、サウンドデザインをするうえでは、そのクルマに備わる駆動力に則した音であることが重要だということが分かった。
エンジンサウンド好きな皆さんなら、例えば昔、アニメでいかにも爆音を奏でそうなスーパーカーなのに、その音とはほど遠いオートバイぐらいの効果音が付けられていて、「え!?」と感じた経験もあるだろうから、即した音がするのは当然だと思われたかもしれない。
では、エンジンではない駆動力を持つクルマのサウンドはどのようにデザインするのだろう。2010年代に燃料電池車(FCEV)「MIRAI」や電気自動車(BEV)「LEXUS UX300e」のサウンドデザインを手がけたレクサス車両性能開発部第1車両性能開発室の佐野真一主任に聞いた。
佐野主任

私がMIRAIとUX300eを担当したときに音のイメージとして最初に考えたのは、“風神雷神”だったんです。
MIRAIは空気を取り込んで水素と酸素で発電するので風神、UX300eは電気だから雷神。だからUX300eはアクセルを踏むと「ドーン!バリバリバリ…」っていう雷の音をさせてはどうかと考えていたんですが、いろいろ検討をして残念ながら無くなってしまったんですけどね…。
でも、MIRAIの風神の部分、風切り音的な“シュー”っていう音は残りました。
雷の音…。おもしろい発想なだけに残念ながら実現されなかったので、どんな音だったのか話を聞いてみた。
佐野主任
試作した雷の音は、雷っぽくランダムノイズで構成していたんですが、これがおもしろいことに何個雷の音を重ねても不自然なサウンドにならない。だからこれはイケると思ったんです。
エンジン車では(エンジン回転に則した)次数的な音で音づくりするのですが、アクセルをグッと踏み込んだときに瞬時に反応する音ってやっぱり次数的な音じゃないランダムノイズだと応答している感じが出ませんでした。
ピンピンにとがらせた音をつくってみたり、いろいろとやってみたんですが全然応答性が感じられない。
そんなわけで雷は封印して、ランダムノイズで構成する部分は残しつつ、次数音も足して音づくりをしていきました。
封印された雷はこんなイメージだったという。