
「実証実験の街を使い尽くし、誰も想像しない未来をつくる」。そんな仲間の募集が始まった。「ウーブンシティ・チャレンジ」とは?
Hack the Mobility
ここで、冒頭紹介した特設ページの画像をもう一度ご覧いただきたい。

この「ウーブンシティ・チャレンジ」には、もう一つ「Hack the Mobility」という副題(というには主張が強いが)が付いている。
「Hack」という言葉、一般的にはコンピューターに不正侵入し、害をもたらす「ハッキング」のイメージがあるかもしれない。一方で、「ライフハック」のような、「工夫して改善する」意味もある。
この副題を考案したのも大槻さん。ネガティブなイメージもある言葉だが、「今回のプロジェクトに対する私たちの気概とか、心構えみたいなところを分かってくれるんじゃないかなと。モビリティをHackして、世の中に新しい価値を生み出す人たちを集めたい」と込めた想いを語る。
「未来の当たり前を発明する」。これはウーブン・シティが掲げるミッションでもある。
ウーブン・シティのプロジェクト全体のリーダーであるWbyTの豊田大輔Senior Vice Presidentも、インベンターズがこの街を使い尽くし、既成概念を壊す発想が出てくることを期待しているという。
「プログラム」で募集するテーマは4つ*あり、3つ目まではWbyTが提示したものになっている。だが、4つ目は「自由応募枠」。ここには「(豊田Senior Vice Presidentから)『我々が想像している“こんな世界”ということだけにこだわらない方がいい』というアドバイスもあった」と田中さんは振り返った。
*「プログラム」で募集するテーマ。
1.多様な都市データをモビリティ・ビル・店舗・物流・ロボット・インフラなどと連動させるモビリティや都市サービスの実現を目指す「モビリティ&都市のサービスの最適化」。
2.誰もが安全に楽しく移動できる街をつくる「安全で安心なモビリティ&都市」。
3.持続可能な地球と暮らしを実現する。そして、未来世代から「ありがとう」と言われる社会をつくる「サステナブルな地球と暮らし」。
4.1〜3にとどまらず「幸せの量産」を実現するために、あらゆる可能性を探索する「自由応募枠」。

では、スタートアップはウーブン・シティをどのように見ているのだろうか。
説明会に約40の企業・個人
9月、名古屋で「プログラム」についての説明会が開かれた。終了後、参加者に感想を聞くと、こんな声が。
「ウーブン・シティの詳細がイメージできた。すごくワクワクする。今まで試す場所がなかったが、この街で実証できるなら価値を具体的に示せそう」
「テストコースとして間違いなく良いロケーション。我々にも良いイノベーションを起こせるんじゃないかという視点で話を聞いた」
「衣食住が集約されるので、幅広いシーンで実証と結び付けていけそう。トヨタのアセットを使っていくことも考えていきたい」
「採択されれば、(WbyTとも)切磋琢磨して、共創できるというのは楽しみ。一緒に実証できるということが、すでに価値がある」

壇上で説明した大槻さんは「(インベンターズには)街を最大限活用してもらって製品やサービスをより早く、良い形で世の中に出していただく。私たちも、要望に応えられるようにサポートやサービスを拡充していきます」と呼び掛けていた。
イベントには約40の企業・個人が参加。質疑では多くの手が上がり、関心の高さがうかがえた。
世界を変える挑戦
多くのスタートアップから注目を集める「Toyota Woven City Challenge ― Hack the Mobility ―」。特設ページの言葉を借りれば、「世界を変える挑戦」がスタートした。
田中さん
私の周りにもスタートアップの経営者がたくさんいるんですが、本当に自分や家族の時間を削って仕事に充てています。資金も自分だけでなく、友人、家族からも集めていたり、いろいろなものを背負っています。
普通の社会人とは少し違う世界に生きているなと思うと、彼ら彼女らの覚悟に応えられるのかという想いはあります。
一方で、その覚悟に応えなければと思い過ぎると、サービスを提供する側になってしまう。お客さんとサービス提供者の関係になるのは違うなと思っています。
あくまで目指す未来や世界を一緒につくる関係。持っているものが違うだけで、スタートアップには尖ったアイデアや技術、私たちには街やデータがあります。お互いに持ち寄って、一緒につくっていく関係。
フラットな立場で、お互いが持っているものを持ち寄って、未来をつくっていく関係でいたいという気持ちがあります。
大槻さん
トヨタが目指すモビリティカンパニーの「モビリティ」は、ものすごく広く定義されると思います。どういったモビリティが世の中にあると、みんなが幸せになるかということは、誰も分からないんです。
何が正解か分からないので、確実に正解を出すには数を増やすしかありません。
10個つくって1個、100個つくって1個正解があるのだとしたら、私たちだけがチャレンジするのではなく、トヨタだけでもなく、いろいろな人たちが一緒にチャレンジする。
そうすることで、その中から「これがみんな欲しがっていたものだ」「これが次のモビリティ社会のコアとなるものだ」みたいなことを見つけられるのではないでしょうか。
この仕組みが高速に回ることで、私たちのパーパスである「幸せの量産」に、そしてよりよい明日にみんなで近づけると思っています。

説明会は10月初旬まで行われ、応募締め切りは同14日。概要については、下記〈関連リンク〉から特設ページへ。