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ミッドシップの現状と課題 S耐第5戦オートポリスで語られた参戦への壁

2025.10.23

今年6月にニュルブルクリンク24時間レースを完走したGRヤリスが出走した、S耐第5戦。当初参戦を予定していたミッドシップの現状についても語られた。

2025年7月26〜27日に大分県のオートポリスで開催された、「ENEOSスーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE(S耐)」の第5戦。

このレースにTOYOTA GAZOO ROOKIE Racing(TG-RR)から参戦を予定していたのが、GRヤリスのミッドシップモデル『GRヤリス Mコンセプト』。

1月の東京オートサロンで発表されたモデルで、エンジンを従来のフロント部分ではなく、車両の中心部に近いところに配置することで、操作性が上がると言われている。

このミッドシップ、今大会でのデビューを目指していたが、開発が間に合わず参戦が見送られた。

しかし、ミッドシップの参戦がなくても、ファンの注目を集めた一台があった。

それが、6月にドイツで開催されたニュルブルクリンク24時間レースを完走したGRヤリスDATと同一仕様の車両。

S耐で鍛え、世界一過酷と言われるコースに挑戦し走破した仕様の車両が、初めて日本のレースに参戦したのだ。

ニュルで鍛えたクルマをS耐で試す

今回、このGRヤリスDATが日本のレースに出場したのは、単なるお披露目のためではない。

大きな目的の一つが、ニュルブルクリンクを完走するために鍛えたクルマが、日本の道を走った時にどのようなデータが取れるのかを確認・評価し、市販車の開発にフィードバックすること。

その背景には、ニュルブルクリンクと国内サーキットの特徴の違いがある。

ニュルブルクリンクのコースは一周およそ25kmで、高低差は約300m、クルマが一瞬浮いてしまうような起伏があるところも多い。

一方、国内のサーキットは一周およそ4km前後で、高低差も少なく、フラットな路面なのが特徴だが、高い横Gのかかる旋回が続くコースが多い。

GAZOO Racingカンパニーの高橋智也プレジデントは、この2つのコースを「同じ道でも、砂利道とアスファルトくらい違う」と表現する。

そのうえで、「道が違うとクルマそのものの考え方も変わる」と話し、日本のサーキットで走りを再確認・評価する意義を次のように話した。

高橋プレジデント

GRヤリスという一つのクルマでも、お客さまにはそれぞれいろいろな道で楽しんでいただいています。

なので、荒れた道を走る靴とアスファルトを走る靴の仕様が違うように、同じGRヤリスでも走るシーンの選択肢を広げることがわれわれの役割だと思っています。

ニュルブルクリンクのような道を走られるお客さまには「こういうパーツやセッティングはどうでしょう?」、国内のサーキットで走られる方には「こういうセッティングはどうでしょう?」と、多様な選択肢のなかからお客さまに選んでいただける環境をつくりたい。

そのために、ニュルブルクリンク仕様のクルマが日本のサーキットを走るとどのような反応をするのか、極限状態のレースで走ることで確認したいと思っています。

S耐で示した実力と課題

真夏の太陽が照りつけるなかで行われたレースは、5時間の耐久レースで争われた。

暑さの影響などでトラブルが発生するクルマも出るなか、32号車のニュルブルクリンク仕様のGRヤリスは順調な走りを見せ、大きなトラブルなく完走した。

順位を争うことを目的に置かない「ST-Qクラス」での参戦ではあるものの、半分より上の順位を記録し、しっかりとレースにも参加することができた。

ドライバーからも「乗りやすい」、「国内のサーキットでも通用する」というポジティブなコメントが多かったといい、開発に携わったGAZOO Racingカンパニーの久富圭主任は、安堵の表情を浮かべていた。

久富主任

まずはしっかりとクルマが走ることができ、国内サーキットでも通用するということを、自分としても確認できたことが非常にうれしく、安心しました。

ニュルブルクリンクを見据えて開発してきたクルマですが、本当に過酷な道で鍛えてきたからこそ、世界のどこの国、どこのサーキットの道を走っても、安全に乗りやすいクルマに仕上げられたのかなと思います。

そのうえで、レースに参加したからこそわかった国内サーキットならではの課題もあったという。

久富主任

各パーツの消耗の仕方がニュルブルクリンクとは違うことが多かったです。

例えば、タイヤへのダメージが想像以上に大きかったです。

横Gのかかる旋回時間が長いというのはレース前からわかっていたのですが、タイヤがもつのかなと心配になるレベルでした。

そういったタイヤマネージメントの点も含めて、国内特有の動きや違いを、今回のレースを通じて学ばせていただき、まだまだ勉強するところがあるなと感じています。

ニュルや今回のレースで得た知見やデータを活かして、GRヤリスやGAZOO Racingの車両の、より精度を上げた車両開発につなげていきたいと思います。

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