今年の1月に東京オートサロンで「モリゾウの10大ニュース」の1位として発表されたミッドシップ「TGRR GR Yaris M Concept」が、ついにS耐岡山で走り出した。
よりコンパクト化を突き詰める新2.0Lターボエンジン
さらに、このクルマに搭載されているエンジンは、2024年5月に行われたマルチパスウェイワークショップでお披露目されていた2.0Lターボの小型エンジンG20E型。
このエンジンは既存の2.4Lターボエンジンとの比較で、体積、全高ともに10%の低減、それでいて、出力を大幅に向上することで、トラックなどの重量車からスポーツカーまで、高出力が必要な車両に幅広く対応すると発表されていた。
このG20E型エンジンについて、ICE開発部でエンジン開発の坂井光人主査は、このように説明した。
坂井主査
テクニカルワークショップのときよりも小さくなっています。ただ挑戦中ですし、必ずできるものではありませんが、よりコンパクトにしていこうと突き詰めています。
このなかで主に取り組んできたことは、大きなパワーを持つものを、どれだけコンパクトに設計するか。
ここは最初のコンセプトで、小さくしていく部分として、ボアストローク(ピストン径とその移動量)の比率とかもありますが、それ以外にミリ単位でいろいろな部品の寸法を詰めて、信頼性とのバランスをどう取るかチャレンジしています。
空気をたくさん入れて出力を上げることに関しても、 CAE(Computer Aided Engineering:コンピューター上でシミュレーションし開発支援する技術)などの技術を駆使して、そういう細かい作業や、いろいろなアイデアのトライ&エラーを日々繰り返しています。
燃焼の効率を磨きながら、コンパクトに設計して、もっといいクルマづくりに貢献するということで開発をしています。
簡単なことではありませんが、今回の練習走行で、空気量の制御など、さまざまな課題が見つかってきています。しっかりとフィードバックをして、より高い領域を目指して頑張っていきたいと思います。
バリエーションとして今はリヤに横置きに搭載したクルマでレースに参戦していますが、縦に置いて使うこともできるように検討しています。
エンジンの諸元を少し変化させることで、低速トルク側にもチューニングするとか、そういうことも将来的には考えています。
高橋プレジデント
マルチパスウェイワークショップで出したときに、カーボンニュートラル(CN)に対応するなかでも「やっぱりエンジンをつくっていきます」というのが大きなメッセージでした。
今回もレースのエンジンをつくるのではなく、最終的に市販化を目指して排気ガスをクリーンにするとか、燃焼を良くして排気をクリーンにする。
それと燃費を上げて、さらにCN燃料を組み合わせることで将来はCNなエンジンをつくっていきます。
排気対応なども、ものすごく規制が厳しくなっていくなかで、そういう苦労と彼らが戦ってくれているし、それを乗り越えることでお客様にも、やっと笑顔を届けられるんじゃないかと思っています。
気になるエンジン音
岡山国際サーキットで少し甲高い、他のレーシングカーとは違う音を響かせていた「TGRR GR Yaris M Concept」。音づくりも進めていくのかとメディアから質問を受けた坂井主査は次のように説明する。
坂井主査
性能を上げていくと音が悪くなるということが背反としてあると考えております。技術的に難しい話かもしれませんが、燃焼のスピードをうまくコントロールしてエンジンの本体から伝達する仕方を制御する。
そういったところも解析も使いながら、うまく制御できるようにしていきたいと思っています。 最終的にクルマとしての音づくりが大事だと思いますので、エンジン本体だけではなく、クルマ全体の部品と連携しながら音づくりをしっかりと続けていきたいと思います。