シェア: Facebook X

URLをコピーしました

女性の運転を解禁した最後の国で開催される女性限定ラリー 想いと実態に迫る

2025.07.24

2018年に女性の運転制限が解除された国、サウジアラビア。美しい大自然の中で繰り広げられる女性限定ラリー「Rally Jameel」って?

いつものトヨタイムズとは毛色が違う…というか色が違う…。見渡す限り、茶色い世界!

ここ、サウジアラビアで開催される女性限定ラリーに、トヨタのモータースポーツを統括する「GAZOO Racing Company」の社員が参戦するという。

世界中でラリーが開催されている中で、なんでサウジアラビア?とお思いでしょうか。もちろん、ちゃんと理由があるんです!

女性の運転を解禁した最後の国

2016年、サウジアラビアは大きな変化点を迎える。ムハンマド皇太子が「ビジョン2030」という国家改革戦略を提唱。

同国の大きな収入源である石油は、再生可能エネルギーの普及や脱炭素化の国際的な潮流により、エネルギー資源としてのニーズが減少していた。政府は石油収入だけでは国際情勢の変化についていけなくなることを危惧。観光、ITなど非石油分野の経済力育成や女性の社会進出を積極的に推し進め、石油収入に依存しない持続的な経済構造の構築を目指した。(2019年に観光目的のビザが解禁されたのも、その一環)

一方で、サウジアラビアでは長く、男性しか運転が許されなかった歴史がある。

社会が変革しようとする中で、自分で運転できない女性が移動するためには、運転手を雇うか男性に頼らねばならず、経済的負担と社会進出の妨げとなっていた。

こうした背景のもと、2017年サルマン国王が女性の運転を容認。18年6月24日、解禁日を迎える0時の瞬間を待ち、運転を開始する様子がSNSやメディアに取り上げられた。

トヨタと70年にわたりパートナーシップを築いている自動車販売代理店、アブドゥル・ラティフ・ジャミール・モータースは、自動車教習所へトヨタ車を供給し、女性がより手頃な価格で免許を取得できるようサポートしている。

こうした取り組みの一つとして、同社の一部門であるジャミール・モータースポーツはサウジアラビアとその周辺国にとって初の、女性のためのナビゲーション・オフロードラリー「Rally Jameel」を主催。

前置きが長くなったが、世界中のラリーの中でサウジアラビアへ降り立った理由は、このベールをめくるためだ。

クルマを降りて、自撮りして

Rally Jameelは中東初の女性限定ナビゲーションラリー。スピードではなく、ルートを正確にたどるナビゲーション技術を競う。2022年に始まり、4回目を迎えた今年は、ヨルダン~サウジアラビアの約1600kmを4日間で駆け抜ける。道の大半は砂地や岩場のオフロードだ。

Rally Jameelの発案について、アブドゥル・ラティフ・ジャミール・サウジアラビアのハッサン・ジャミール副会長は次のように述べる。

アブドゥル・ラティフ・ジャミール・サウジアラビア ハッサン・ジャミール副会長

ビジョン2030で起こった国内における最大の変化の一つは、人々のエンパワーメント*です。女性の運転が解禁された中で、特に女性のエンパワーメントやリーダーシップに対する認識を高めたいと思いました。

*自分の力で意思決定、行動できるように支援すること

サウジアラビアや世界中から女性が集まり、数日間のラリーでコミュニケーションをとる。タイヤ交換やエンジンの修理も自分で行わなければならないので、簡単ではありません。

しかし、ラリーを通して、誰かからの指示を待つのではなく自分で意思決定を行い、競争しながら協力することは、女性のエンパワーメントのために非常に素晴らしいアイデアだと思いました。

Rally Jameelが他のラリーと大きく異なるところは「競技中の自撮り」を積極的に推奨している点だ。

一体どういうこと?アブドゥル・ラティフ・ジャミール・モータースのムニール・ホージャマネージングディレクターに狙いを聞いた。

アブドゥル・ラティフ・ジャミール・モータース ムニール・ホージャマネージングディレクター

誰でも楽しく、リラックスして参加できるものにしたいと考えています。初心者にとっておよそ1600kmを、複数日にわたって運転するというのは、どうしても難しく感じられると思います。

「抜かされた」とか「到着順が遅れてしまった」とかを気にせず、自分やチームに集中してもらいたいので、スピードを出さなくても、ルールに従うことで勝利できるナビゲーションラリーの方式をとっています。

そして安全システム、サポートの充実はもちろん、砂漠や世界遺産を通る、アドベンチャーな雰囲気を楽しんでもらえるようにルートを考案しています。

競技中でも止まって写真を撮ったり、休憩してリラックスしたりと、楽しむことを1番にチャレンジしてほしいです。

今大会で3連覇を狙うドイツ出身のハンナ・リーレさんは、Rally Jameelで最も好きなところは「普段見ることがない景色、土地に触れられるところ」と語る。

左からハンナ・リーレさん、パートナーのリーム・アル・アブートさん
Facebook facebook X X(旧Twitter)

RECOMMEND