
3年目となった液体水素カローラでの富士24時間レース。これまでより市販化へ踏み込んだ挑戦が行われた。

「やっとレースに参加できた、そういう年になった。また前進できたんじゃないでしょうか」
モリゾウは、5月31日〜6月1日にかけて決勝が行われた、「ENEOS スーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE 第3戦 富士24時間レース」のゴール直後、これまでの挑戦を振り返りながら手応えを口にした。
液体水素を燃料とする、水素エンジンカローラ(液体水素カローラ)での3年目の挑戦となった2025年は、468周(約2,135km)を記録。
天候の影響などで長い中断や速度制限があったにも関わらず、これまでの記録を1.3倍、距離にして500km近く更新した。
さらに、順位を争うことを目的に置かない「ST-Qクラス」での参戦ではあるものの、富士24時間レースでは初めて最下位から脱出、ガソリンを燃料とする他のレーシングカーに負けない走りを見せた。
1年越しに示した確かな前進
今回大きく記録を伸ばした要因は、昨年のレースから導入している、ポンプとタンクがしっかりと効果を発揮したことにあった。
詳しい説明は昨年の記事でも説明したので割愛するが、一昨年のレースでは液体水素を燃料タンクから送り出すポンプの交換作業を2度行い、その作業に計7時間を要していたが、ポンプの耐久性を向上させたことで交換の必要がなくなった。
また、タンクを楕円形にすることで水素搭載量が増え、1回の水素充填あたりの航続距離が1.5倍となった。
しかし、昨年はレース中にそれらとは関係のない電気系のトラブルなどを繰り返し、9時間のピットストップを強いられたことで、初挑戦となった一昨年の記録を超えることができなかった。
その悔しさをバネに1年越しで前進を証明した今年のレース。
水素エンジンプロジェクトの統括を行うGR車両開発部 伊東主査は、この成果について次のように話した。
伊東主査

昨年はたくさんのトラブルに苦しみ、ポンプと楕円タンクについても実力をきちんと確認することができませんでした。
今回は、ドライバーの皆さんに24時間、レーシングスピードで走っていただき、
クルマと水素システムを厳しい条件に追い込むことができました。
これで開発は大きく前進します。
まずはポンプについて、こちらは無交換で走りきりました。24時間以上の耐久性があることは、もちろんベンチ試験で確認しているのですが、実際に実車に搭載し、レース環境下でどうかというところでは、ハラハラドキドキでした。
それから、楕円タンクによる1回の充填あたりの航続距離がアップしたことよって、ピットインを繰り返す間に順位が下がっていくということがなくなりました。
それによって、ST-5クラスの中間くらいの順位を記録することができ、ガソリン車と競い合える姿をお見せできたと思います。