SDVの一丁目一番地を「安全・安心」と位置づけるトヨタ。悲しい交通事故をゼロにするため、開発中の技術を公開した。
ドライバー観察で先読みする
ここまで、クルマの「外」の情報を活用して、危険を先読みする技術を紹介してきたが、クルマの「中」で得られる情報で先読みする技術開発も進んでいる。
例えば、わき見した隙に、隣の車線からクルマが割り込んできたシーン。カッとするドライバーに代わって、AIエージェントがすかさず「危なかったね」とつぶやく。
たった一言だが、「感情ラベリング」という心理学的なテクニックで、ドライバーを落ち着かせる効果が期待できるという。
ほかにも、左折しようとしているドライバーが同乗者との会話に気をとられていると、交差点の前で「左折注意」とアナウンスし、ブレーキをかけてくれる。
マイクやカメラで得た情報をもとに、ドライバーの感情などを把握して危険を先読みすることで、タイムリーなアドバイスを実現する。
なお、こうしたAIを使った技術開発は、ソフトウェアのプラットフォーム「Arene」で加速させていく。
「More than OS」を標榜するAreneは、単なるOSにとどまらず、走行データを収集して解析するデータの基盤でもあり、ソフトウェアを効率よく評価するための開発環境でもある。
いずれはトヨタだけではなく、他社への展開も見据えている。
「交通事故ゼロ」へ必要な仲間づくり
三位一体の取り組みを実現する大前提にあるのが、途切れや遅延のない通信環境だ。
携帯電話がつながらない、通信が遅いということは、誰もが経験していることだが、人を乗せて、高速で移動するクルマで起こると、致命的な事態に発展する可能性もある。
そうならないよう、クルマ向けに優先的に通信させてもらったり、通信距離の短い地点にあるサーバーを使わせてもらったりするなど、通信事業者などと連携を強化し、5Gの新しい機能を活用していくことが重要になる。
モビリティ社会の究極の願い「交通事故ゼロ」。それは、一企業の努力でも、クルマ単体の進化でも実現できない。すべての交通参加者が安全で、心から安心して移動ができる未来を目指し、三位一体の取り組みを進めていく。