
先日発表された三菱ふそうと日野の経営統合。株主総会では、豊田章男会長がダイムラートラックのマーティン・ダウム前CEOの印象を語った。豊田会長はこの出会いに何を見たのか。

トヨタ自動車の株主総会が6月12日、愛知県豊田市の本社で開かれた。
出席者6,752人の中から寄せられた質問は13問。「職場の風土改革は進んでいるのか?」、「全固体電池の進捗は?」――。質問は多岐にわたった。
その中には、先日発表されたばかりの三菱ふそうトラック・バスと日野自動車の経営統合に関して、日野とトヨタの関係について問う声も。
三菱ふそうトラック・バスと日野の経営統合について、それぞれの親会社であるダイムラートラック、トヨタも交えた4社による最終合意が、10日に交わされた。

この会見でトヨタの佐藤恒治社長は、このように語っている。
「2年半前、ダイムラートラックの(マーティン・)ダウム前CEOと、当時社長だったトヨタの豊田章男会長がお互いのビジョンと価値観に共感し合い、協業の検討がスタートいたしました」
株主総会では、中嶋裕樹 副社長が日野とトヨタの提携の歴史やトヨタにおけるトラック事業について説明。続いて豊田会長が日野やトラック事業への想い、そしてダウム前CEOとの出会いを語った。
まずは、豊田会長の発言から見てみたい。
トラック愛に賭ける
豊田会長

1966年の共同声明にはこうも書いてあります。
「両社はその特色を生かしつつ、それぞれの経営責任を持って運営する」
ただ、私の心にずっと引っかかっていたのが「トラックのことはよく分からない」ということでした。
私はクルマ屋を自称しており、クルマのことはわかりますが、トラックのことは不勉強で分からないのが実態でした。なので、経営責任を持ってというよりも、トヨタとして日野をどう支援すれば、いすゞ(いすゞ自動車)、UD(UDトラックス)、そして三菱ふそうを含めた日本に4社あるトラックメーカーが光輝くのかと、悩みに悩んでいました。
そんなとき、ダイムラーから話がありました。
私のダイムラーへの最初の印象は「とにかく主導権を握りたがる」、「全てのブランドをダイムラーにしたがる」というものでした。
しかし、ダウムさんに会うと、全く違う方だった。まさしく“トラックガイ”であるという印象を強烈に持ちました。
そして、「ブランドはどうするの?」と聞いたとき、「もちろん日野、三菱ふそうは残していきたい」という声をいただきました。

私もここに賭けようと思い、交渉を続けました。結果、三菱ふそうと日野の努力もあり、日本に4社あるトラックメーカーが実質2グループになるという大編成を民間主導でできたような気がします。
民間主導でできたということは、それぞれの会社が覚悟を以て決めたということです。
そして、トヨタにはCJPTという会社もあります。CASE技術の開発でダイムラーと協力していく。また、いすゞ、ボルボ、そしてUDとも“働くクルマ”をつくっているので、協調すべきは協調し、競争すべきは競争するということで、“日本連合”として頑張って参ります。
中嶋副社長は、1966年に結ばれた日野との業務提携の歴史を簡単に紹介。小型乗用車についてはトヨタと日野で協調してきが、トラックビジネスは「関与できる範囲が非常に小さく、特に大型トラックについては我々全く知見も経験もありません」とし、日野に任せていたと説明した。
そんな状況で、ダイムラーから持ち上がった協業。豊田会長(当時社長)とダウム前CEOの初対面の現場に立ち会った中嶋副社長は、当時の様子を次のように振り返った。