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クルマと燃料オールジャパンで共挑 S耐富士24時間で発表された国産低炭素ガソリン

2025.06.13

燃料、自動車メーカーが、オールジャパン体制を組み、低炭素ガソリンを開発することがS耐富士24時間の場で発表された。各社は会見で、液体燃料を含めたマルチパスウェイの重要性を語った。

2025年5月31日、スーパー耐久シリーズ(S耐)富士24時間レースにあわせENEOS、日産、マツダ、SUBARU、トヨタの5社による低炭素ガソリンについての共同会見が行われた。

レースで鍛える国産低炭素ガソリン

低炭素ガソリンとは既存の化石燃料由来のガソリンに植物由来のバイオエタノールを混合したもの。植物が大気中のCO2を吸収しているため化石燃料と比べて実質的な炭素排出量が少ない。

しかし、この低炭素ガソリンは、JIS規格で定義されていないことや、国内外での技術情報が不足しているなど、まだまだ課題があったという。

S耐には、「ST-Q」という市販されていない開発車両が参加できるクラスがある。

昨年までもST-Qに参戦していた車両はカーボンニュートラル(CN)燃料を使用していたが、それらは海外のメーカーが製造したものだった。

今回の会見では国産の低炭素ガソリンを使うことが発表され、そこには燃料メーカーであるENEOSと、ST-Qクラスに参戦する日産(NISMO)、マツダ、SUBARU、トヨタの5社が集まった。

ホンダもST-Qクラスに参戦しているが「活動に賛同するものの、今年のS耐活動は参戦体制の再構築が目的。参戦回数も少ないことから、技術的なフィードバックが難しい」との判断で参加を見送った。

会見の冒頭でENEOSの藤山優一郎CTO(Chief Technology Officer)は、ST-Qに参加する自動車メーカーと一緒に取り組む理由について、ENEOSのコーポレートメッセージ「『今日のあたり前』を支え、『明日のあたり前』をリードする」という言葉から説明をした。

藤山CTO(ENEOS)

「『今日のあたり前』を支え、『明日のあたり前』をリードする。」

これを決めるときに(社内で) 「あたり前」って、普通すぎて面白くない、ビビットさがないという意見もありましたが、私はこれが結構気に入っています。

ありがとうの語源は「ありがたし」。あること、存在することが難しい。その反対が「あたり前」。

普段、自分たちの身の回りにあるものは、「あたり前」のようにあるものだと思っています。

だけど、人、物とか、実はあることがとっても難しいものが、たまたまある。それに対して「ありがとう」って、すごく日本人らしい考え方だと思うんです。

エネルギーも、それと同じだと思います。 エネルギーは目に見えないですが、皆さんの周りに常にあって、そのエネルギーで皆さんの便利で豊かな生活が支えられています。

ここにはENEOSだけではなく、いろいろな人が関わって、エネルギーを供給しています。

ENEOSも、その社会の一員として、エネルギーを支える仕事を未来のCNな世界においても、やり続けたいと思っています。

もう1つ、背景として知っておいていただきたいことで、この絵を用意しました。

こちらは2000年をスタートラインに2022年まで、各国の輸送部門、つまり自動車のテールパイプ(排気管)から出るCO2の総量を統計取ってカウントしたものです。

見ていただくとパッとわかるようにG7各国のなかで日本だけが、きっちりCO2を減らしています。

この絵を出すと、日本は人口が減っているから、経済が停滞しているからという反論も来ますが、人口減少と経済停滞だけでは、これは説明できません。

日本は、まじめに真面目にクルマのCO2も減らしてきています。具体的には電動車の比率です。

ハイブリッド(HEV)を含めた電動車の比率を自動車会社の皆様が頑張って増やしていますし、ガソリン車そのものも、どんどん燃費を良くしてきました。

最初のうちは「バッテリーEV(BEV)に後ろ向きなのは、けしからん」みたいな風潮もあったわけですが、今は世界中で、やはりクルマのCN化にはマルチパスウェイが必要だとなっています。

BEVも水素燃料電池車(FCEV)も頑張るけれど、HEV、あるいは内燃機関車(ICE)も一緒に使ってCO2を減らしていくということが、世界の常識になりつつあると思っています。

今後さらにCO2を減らそうとすると、クルマのつかう液体燃料自体のCO2を減らさなければいけないということで、Eフューエル、合成燃料、あるいは、今日(ST-Qの一部のクルマに)お使いいただくバイオ燃料に力を入れていかなければいけないというのが私どもの考えです。

この自動車業界の実態にまつわる定量的なデータや、トヨタの取り組みは、下記にある「トヨタのファクト&データ」のマルチパスウェイに詳細な情報が掲載されている。ご興味のある方はぜひ、リンクから見ていただきたい。

トヨタのファクト&データ
https://global.toyota/jp/newsroom/fact-data/

脱炭素で重要となる液体燃料のカーボンニュートラル化

藤山CTO(ENEOS)

これは経済産業省さんの資料ですが、現状オレンジの化石燃料がガソリン、石油です。

トータルとして(全体の使用量)は減っていきます。これはクルマの燃費が良くなったり、BEVに置き換わったりするので(将来に向かって)上の空白が増えているわけです。

ですが、たとえ2050年になっても液体燃料は残るだろうと予想されています。ただ、その中身は石油がどんどん減っていき、(グラフで)緑のバイオ燃料とか、ブルーの合成燃料(E-フューエル)になっていくという予測を立てています。

ここで大事なのは、移行期①ではまず緑のバイオ燃料が入っていきます。これは直近で言えば手に入りやすい、使いやすいということがあります。

ただ、バイオ燃料は原料が作物とか、バイオマスなので(つくれる)量が限られます。自動車全部に使うには足りないので、いずれは合成燃料が主軸になっていくという予想が立てられています。

今日は、このなかでバイオ燃料のお話です。バイオ燃料は、いろいろありますが、今日みなさん(ST-Qクラスの車両)にお使いいただくのは、エタノールを混合したガソリンになります。

エタノールはグルコース*1、トウモロコシとかサトウキビからつくることもできます。

今、我々が研究しているのは食べ物ではないセルロース*2からエタノールをつくることです。

木や草、古紙からエタノールをつくり、ガソリンに混合してクルマを走らせようとしています。

*1 果物や穀類などに多く含まれるブドウ糖 *2 グルコースが結合した食物繊維の一種

ガソリンとエタノールは、全然違うものです。単純に混ぜればいいというものではなく、トータルでどういう性能を出すかというノウハウが必要になります。

我々、ENEOSは長年ガソリンを扱ってきたので(この調整を)得意としています。今回も自動車会社の皆さんに、かなり綿密な試験をしていただいて「これは使える」と言っていただいています。

また、将来的なEフューエル(合成燃料)に対する備えもしており、こちらは再生可能エネルギー研究センター(READ)のグリーンイノベーション(GI)基金*で社内に合成燃料のプラントをつくり、実験を経済産業省に支援してもらって、やらせていただいています。

*2050年のカーボンニュートラル社会に向け、具体的な目標とその達成に向けた取り組みへのコミットメントを示す企業等を対象として支援する経済産業省の基金

この取り組みを社会の皆様にも知っていただきたいと、23年のS耐富士24時間で走行デモをさせていただきました。

今(開催している)、大阪万博で大阪駅から会場までのシャトルバスで合成軽油を使っていただいています。万博構内の関係者車両にも合成ガソリンを供給しています。

生活拠点としても重要なガソリンスタンド

藤山CTO(ENEOS)

日本のCO2排出量はどんどん減っていますが、同時に日本のガソリンスタンドも減っています。

CO2が減るということは、ガソリンの使用量が減っているということで、それを供給しているガソリンスタンドも減っています。

この資料の通り、ガソリンは23%減っていますが、ガソリンスタンドの数は47%と倍以上減っています。

マルチパスウェイでCNを目指すのはいいですが、自動車会社の皆さんが頑張ってPHEVとかHEV、いろいろものをつくっていただいても、給油する場所が無くなってしまうということです。

もう1つ考えていただきたいのは「災害レジリエンス(復元力)」という問題です。何か災害が起きるとライフラインが切れます。

そういうときに一番最初に届けられるのがガソリンだったりします。

液体燃料は貯めて運べる。こういう特性があるので、やっぱり何かあったときのレジリエンスは非常に大事だと考えています。

経済産業省さんも地域の生活拠点、レジリエンス拠点として、サービスステーション(給油スタンド)は大事だということを言っていただいています。

普段は自分ごとなので、言いにくいんですが、今日は依頼されましたので堂々と言わせていただきました。クルマと燃料、オールジャパンで、共に挑戦していただきたいと思います。

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