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2025.07.25
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砂漠で迷子?トヨタ社員がヨルダン・サウジで"冒険者"となる初ラリー

2025.07.25

女性の運転が制限されていた最後の国、サウジアラビア。美しい大自然の中で繰り広げられる女性専用のラリー「Rally Jameel」にGR社員が参戦!

砂漠で迷子!珍道中で2人は…

「今日は厳しい道って聞いてるんで、楽しみつつも安全第一で頑張ります」

2日目。そう言ってスタートした北原選手・永薮選手。そう、今大会2日目のコースは昨年と比べ難しく設定されていた。崖のような急斜面や複雑なルートなどさまざまなタイプの道があり、大小の石も転がり、パンクしたチームも多かった。中にはドライバーが精神的に参ってしまい、翌日はコドライバーと交代したチームもいたほど。

7組が完走できずリタイア。その中の1組が、TGR SAKURA JAPANだった。2人は砂漠での壮大な珍道中を経験することになる…。

スタートから7時間後の16時。SSのタイムアップが1時間後に迫り、2人は焦っていた。砂漠の中で完全に迷ってしまったのである。

2人のほかに前を走る3台ほどがウロウロしており、「難しいエリアなんだ…」と思い気を引き締めたが、正解に辿り着けずに無念のタイムアップ。

近くにはもう1台おり、一緒にギブアップ。レスキューを要請することに。

しかし、電波が届かない場所だったのか、1時間半経っても音沙汰がない。街灯などもない砂漠。暗くなったら移動が難しくなるからと、ロードブックを頼りに走ってみたり、クルマから降りて歩いて電波が届きそうな場所を探したり。

パンクしないようゆっくり走行しながら轍を探す2人

それでもどこまで行っても景色が変わらない。電波もつながらない。そんなとき、ベドウィン(遊牧民)が通りかかった。同じ地点で一緒に迷子になっていたドライバーがサウジアラビア出身であったため、アラビア語で助けを求めると、大通りに案内してくれるようだ。

「これで帰れる!」そう思いついていった先は…なんと「大通りに案内してくれる」
と言っていたベドウィンの家。

「夜ごはん一緒に食べる?」

どうやら話がうまく伝わっていなかったようだ。

夜ごはんをお断りし、車内で待機していると、ようやくレスキューと合流することができゴール地点まで帰還。ガソリン残量は残り1メモリ。日付は変わっていた。

車内と運営をつなぐ通信設備

永薮選手は迷子になったらパニックになるかもって言っていたし、広大な砂漠で暗闇に包まれるのはさぞかし恐かっただろうな…。と思いきや、2人はこちらの心配をよそにケロッとした表情。

北原選手「絶対帰れるって自信がありました。ランクルならどんな岩場でも崖みたいな険しい坂でも、ガンガン進んでいけたので、恐くなかったです」


永薮選手「ちょっと恐い気持ちもありましたが、北原さんがあまりにも落ち着いているし、2人でランクルの中にいる安心感もあって意外と平気でした。だんだん夕日が落ちて砂漠が暗闇に包まれるときとか、こんな経験することないのでむしろ面白かったです(笑)」

たくましくなった2人は砂漠特有の岩場に苦しみながらも、3日目、4日目も無事にクリア。パンクすることがあっても動じず、レスキューが来るまでの間に自分たちでできる作業を行った。

3日目にパンクしたタイヤ

見知らぬ土地(しかも砂漠)で約8時間迷子になるという珍道中でナーバスになるのではなく、最終日のゴールまで走り続けたのだ。

人生の主役たち

Rally Jameelへの挑戦が幕を閉じた。TGR SAKURA JAPANの順位は…34位!

完走直後のコメントがこちら。

満足そうな2人。それもそのはず、1日目32位、2日目35位、3日目34位と、30位台が続いた中、4日目は堂々の18位!一気に順位をあげた。

その大きな要因は動画内で北原選手が言っているように、最終日にルートの逸脱や速度超過などのペナルティをほとんどなくせたから。4日間で道に慣れ、チームワークを高めながら走ることができたのだろう。

一方で「改善できることがたくさんあるから、次はもっと上手くできるはず!」と再挑戦への意欲をにじませた。

優勝したハンナ・リーレさんは3連覇を達成、ペアを組むリーム・アル・アブートさんはサウジアラビア出身の選手で初優勝を成し遂げた。

ハンナさんは「モータースポーツは男女関係なく参画できるものなので、女性もどんどんこの世界に入ってきてほしいです。初めての方にはRally Jameelは挑戦しやすくておすすめですよ」と笑った。

表彰台に立つTOP3
クロージングセレモニーで互いの健闘をたたえ合う参加者
桜柄の手ぬぐいと、トヨタのモータースポーツ活動におけるキャラクター、くま吉のマスコットを配りながら、参加者とコミュニケーションをとる北原選手と永薮選手
「KUMAKICHI!KUMAKICHI!」と大盛り上がりの参加者

帰国後、Rally Jameelへの挑戦を振り返ってパッと思い浮かぶ光景は何か聞くと、北原選手は「参戦していた女性たちのエネルギーあふれる様子」と答えた。

北原選手

参戦前は「中東で女性活躍を盛り上げなきゃいけないから開催するイベント」というイメージでしたが、参戦した女性たちはみんな自由でパワフルで、女性たち自身がRally Jameelをつくっているように感じられました。

それぞれが確実に自分の人生の主役なんだなということが伝わってきて、とても素敵でした。

帰国した冒険者

練習期間を含め、約10日間、ヨルダンとサウジアラビアに滞在し、茶色い世界にすっかり馴染んだ2人。今回の経験について振り返ってもらった。

ー Rally Jameelへの挑戦を終えた、率直な感想を教えてください

永薮選手

「ナビゲーションラリーの魅力にすごく気づかされました。モータースポーツって速さを競うイメージが強かったのですが、街や景色を楽しみながらゴールを目指したり、チームプレーで乗り越える経験ができて、『こんなに面白いんだ!』って身をもって感じられました」

北原選手

「Rally Jameelならではの魅力があったなと思います。

というのも、初心者だけでやっても、あそこまで盛り上がらなかったり、難しさってあったと思うんです。

Rally Jameelには、初心者からダカールラリーの出場経験を含めたベテランまでが幅広くいる。経験者が初心者をサポートしてくれたり、参加者同士で『昨日はどうだった?』と声をかけあって、『みんなで完走しましょう』というとてもあたたかい雰囲気でした」

永薮選手

「遭難(2日目)した翌日も、朝食会場でみんなが『大丈夫だった?』って心配してくれましたよね(笑)」

北原選手

「競争相手ではなくて、なんとなく1つのチーム感があって…。声をかけるメリットがないであろう初心者の私たちを気にかけてくれたことが、すごく嬉しかったです」

ー 初めてのヨルダン、サウジアラビアはどうでしたか?

永薮選手

「すっごくオープンでびっくりしました!

ヨルダンに到着した瞬間からCTAのみなさんに歓迎されて。心から『ヨルダンとラリーを楽しんでほしい』って思ってくれているのが伝わってきました」

北原選手

「同じく!CTAのメンバーは緊張していた私たちを、チームのメンバーの一員のように迎え入れてくれて。今回の旅の中で欠かせない存在でした。

アブドゥル・ラティフ・ジャミール・モータースのみなさんも本当に優しくて。借りたクルマの一部が少し削れちゃったんですけど、責めるとか一切なく、むしろ『ラリーを楽しんでくれていますね!』って。

サウジアラビアではこれまで、女性は守られる存在というイメージで、おとなしい感じなのかなと思っていたんですけど、実際はみんな自分のやりたいこととか、意志がすごいしっかりしていて、180度印象が変わりました」

ー 日本の『モータースポーツ』との違いは?

永薮選手

「日本のモータースポーツファンも熱気がありますが、初めて観る人はちょっと壁を感じている節があるように思うんです。けど、中東ではもっと身近なスポーツの一つになっているようでした」

北原選手

「うん。日本ではどうやって観ればいいか分からないってハードルを高く感じている人も多いイメージだけど、中東の人は『ああ、なんか走るやつね、いいじゃない』くらいの感覚で、あんまり構えず気楽に楽しんでいるのかなって感じました」

さまざまな発見があったというRally Jameelへの挑戦。

最後に、日本へ持って帰ってきたものを聞くと、永薮選手の第一声は「やっぱりトヨタのクルマ、特にランドクルーザーって最強だ!って気づけたことです」だった。

永薮選手

ランクルじゃないと通れない険しい道があることを、今回身をもって理解できました。性能の強さ、良さは、こういう実体験をもとに語れることだと思います。

業務面でいうと、私はまさに女性にもっとスポーツカーやモータースポーツの魅力を知ってほしいという想いで企画を進める立場にあるので、女性視点だとどういうところに共感を生めるのか、を考えるヒントを、今回たくさん得られたと思います。

北原選手は「クルマの面白さです」と答え、次のように続けた。

北原選手

もっとクルマを知りたいと思いました。ランクルはとても良かったけど、何が違うからあんなに良かったんだろうっていうのが恥ずかしながらよく分かっていなくて。

エンジンが違ったのかとか、駆動が違ったのかとか。クルマへの興味が深くなって、もっと知らないとな、知りたいなって思えました。

あと、もっとスキルを身に付けたいなって思いました。ほかの参加者が自分たちでタイヤ交換をスムーズに終えているのを見て、悔しくなりました。日本に戻ってきてすぐに、部署のメンバーに報告したら「GRで、トヨタで働いている以上、みんなタイヤ交換ができるようになったらいいよね」って盛り上がったんです。私たちの身近な人間たちが、私たちの話を聞いて、今まで以上にモータースポーツやクルマを知りたい、面白そう、と少しでも気持ちが動かされたんだとしたら、嬉しいことだなって思います。

その動いた小さな気持ちが少しずつ伝播していって、会社全体、世の中全体に広がっていくことを願って、今回の冒険で感じたことや、実際に体験したことを少しずつでも発信していきたいなと思います。

2人の冒険は、さまざまな形で続いていくのだろう。

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