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2025.03.04
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輸送会社に残る困りごと解消へ 労使で課題共有、活動加速

2025.03.04

輸送会社の困りごとに対して、自動車メーカーのトヨタは何ができるのか。労使の話し合いは、現状を知ることから始まった。

Tierの深いところまで声を届ける

こうした課題は、特にTierが深くなるほど残存しているという。

調達本部の加藤貴己副本部長はTierの深いところまで想いを浸透させることをポイントに挙げる。

加藤 副本部長

(仕入先より価格転嫁の要望を受けて)やってはいますが、まだ緒に就いたところです。費目で言いますと、原材料費やエネルギー費は、それなりに(交渉してきた)歴史が積み重なっていて、市況も存在し、どのようなお困りごとがあるかわかります。そのような費目もあれば、人への投資や労務費、労働環境への投資、そしてこの物流関係は、まだ歴史が浅い。

そのような中でも先んじて私たちも価格転嫁に取り組んできました。

ただそういった話ができているのは、直接取引しているTier1さんだけになります。Tier2以降にも、数多くの仲間がいます。この辺りにいかに浸透されるかが大事なポイントかと思います。

加藤副本部長は、日本自動車工業会(自工会)で調達部会の部会長も務めている。その立場から、日本自動車部品工業会(部工会)が、物流も重点テーマに設定して自工会と一緒に取り組みたいという話があったことも紹介。

「物流費や作業環境など部工会の加盟社が発注者となるような物流には、悩みや困りごとが多い。受け手の仕入先さんにもいろいろな作法あって、困っているでしょう。そこで『何を困っているのか、聞くことから始めよう』と部工会と話しています」。

資材・設備調達部の本間圭祐部長は、輸送費の決め方もトヨタとTierの深いところでは違いがあるという。

本間部長

我々が直接取引をさせていただいている輸送会社さんは、トヨタ以外にも3桁に上る荷主の会社と取引をしています。そうすると、(トヨタと)価格の協議をさせていただくだけでも、ものすごく大変。

トヨタは原価のつくり込みをしっかりやるために、輸送会社さんと「労務費がどれぐらい」、「実際に乗っているトラックの(積載量や燃費)がどれぐらい」と細かく議論しています。

そのため「最近物価が上がっているからエネルギー費も上げる」という話し合いが容易にできる環境です。しかしTierの深い方に行くと、「(ドライバー)1人いくら」と、プライスだけで決まる環境がまだまだ残っていると伺っています。

「輸送会社においても、ときに採算度外視で仕事を引き受けるケースがありました」。

TPS本部の尾上恭吾本部長は、こう語る。Tier深くには、本間部長が言うようなコストの積み上げで必要な輸送費が決まるのではなく、営業上のやり取りで決まってしまう商習慣が残っているという。

引き取り物流が拡大し、ようやく「『これだけの時間がかかりますよね。ですから、価格はこうですよね』と交渉できるようになってきたところ」と尾上本部長。残る「お届け物流」に関しても、切り替えが急務と使命感をのぞかせた。

組合の江下圭祐副委員長は「輸送会社さんとは、労働組合同士のつながりがまだ薄い。トヨタからお話を伺いに行って、本音をすぐに言っていただける関係性は築けていません」と悔しさをにじませる。

その上で「ただ大事な仲間ですし、産業の魅力を上げていこうとしているところは共感いただけると思っています。まずは生声を拾って、輸送会社さんも一緒に課題解決していければ」と前を向いた。

働きやすい環境への改善は、ドライバーらの負担や離職の軽減にもつながる。本間部長は「物流が魅力的で働きやすく、未来があるということも理解いただけると思います」とし、「Tier1の部品メーカーの経営者へ、トヨタの想いの輪を広げていくことが重要だと思っています」と強調した。

仲間づくり

先述したように、トヨタでは九州(2016年~)、東北(2018年~)に続いて、2020年から東海地域の「引き取り化」を進めている。ここまで東海地域の約半数にあたる360拠点が切り替わった。

今後は、関東・関西圏や補給物流にも拡大していくことを見据えている。吉田部長は「引き取り化」100%へ「仲間づくり」の重要性を挙げた。

吉田部長

同じ志や想いをともにする仲間をどれだけ増やしていけるかが非常に大事です。

それもあって、いまTMEJ(トヨタ自動車東日本)や社外の大手の仕入先さんから出向していただいて、我々の実務を手伝っていただいています。

おこがましい言い方になるかもしれませんが、我々のやっていることを共有し、知っていただいて、自社に戻った際に横展していただく。こういう拡大の方法を仕組み化していくことが、重要だと思っています。

総務・人事本部の東崇徳本部長も「部品メーカー1社が止まっても、物流会社1社が人手不足になるだけでも、本当に日々の生産に影響してくると思います。皆さんと協議させていただきながら進めていきましょう」と応じた。

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