
異例の本部別で開催された第2回労使協議会を通じて問われた「当事者意識」。働き方やメンバーが多様化し、「人が仕事を選ぶ時代」に佐藤恒治 社長が語った"一律"の意味とは。

「一律であるべきものの捉え方が、違うのではないか」
話し合いの終盤、佐藤恒治 社長が投げかけた問い。目線は真っ直ぐ組合の方を向いたまま。だがその言葉は本部長らにも向けられていた――。
異例の本部、カンパニーといった職場単位で開催された第2回労使協議会(労使協)から1週間。第3回の労使協が3月5日、トヨタの本社で行われた。
今回は従来と同じ、組合の支部長ら代表者と、会社の執行役員らが集まる形だった。

健全な危機感
第3回労使協の様子をレポートする前に、改めて職場単位で開催されることになった第2回について、その狙いを振り返りたい。
トヨタイムズは、第2回の前に佐藤社長と東崇徳 総務・人事本部長にインタビューを行った。そこで佐藤社長は次のように語っている。
佐藤社長
どれだけ労使協の場で、労使の認識を合わせても、会社全体として当事者意識を持つことができない。
組合執行部からも「組合員一人ひとりで見るとまだまだ意識にムラがある」という話もありました。
私が今年の第1回労使協で意識していたのは「健全な危機感」でした。好業績だから、足元に潜んでいるリスクに目が行きにくくなる。
だから、「健全な危機感を全員が持とう」「当事者意識を全員で持つことができる労使協にしよう」「健全な危機感と当事者意識のもと行動に移そう」。この3つが、今回の労使協で実現していきたい要素です。
佐藤社長はこのインタビューの中で、「何でもいいから決める。行動する」とも語る。東本部長も、「『頑張り』だけじゃなく、将来に向けた『覚悟』をもって、みんなが行動宣言をしていかないといけない」と話してくれた。
第2回労使協では、DXや情報発信など仕事の進め方に関するものから、対話時間の確保といったコミュニケーション、人材育成に至るまで約100件のアクションが決められた。
足りなかった覚悟
迎えた第3回。組合、会社からは第2回を振り返って「危機感を自分ごと化できていなかった」「決める場という覚悟ができていなかった」といった報告があった。
古賀伸彦 未来創生センター長は、「我々がやるべきは競争力を引き継ぐこと」と語る。労使で課題を認識し、達成すべき目標に向けて目線合わせができたのであれば、「どうやったらシンプルスリムにやるべきことをできるか。解像度を上げて議論する必要がある」と話した。
「職場、会社の未来のために言いにくいことも言う責任感、決めにくいことを決める覚悟、そして熱量が足りていなかったことに気付けた」。組合の近藤大輔 副委員長は、このように受け止める。

東本部長自身も、総務・人事本部での労使協を開き、「年間を通じて(決めるための話し合いを)やっていかないと集大成の労使協議会につながっていかない」と実感。職場単位での話し合いを継続していく決意を示した。
広がる役割
一方で職場単位では解決できない課題も。組合からは、「業務職、技能職の活躍領域の拡大に伴う働き方と制度の不一致」を俎上に載せた。
業務職(いわゆる一般職)でありながら、担当車種の商品企画や新事業の企画運営など、事技職(いわゆる総合職)と同じような業務を担うことが増えているという。一人ひとり担う領域や程度が拡大しているにもかかわらず、業務職として一括りで評価されているのではという不安の声を紹介した。
赤尾克己 日本事業本部 副本部長は、「業務職の役割が相当広がっている」と認識を共有。「業務職の中でも1級などいろいろな資格がありますが、職変*をしなかった場合は、業務職の職域の中で評価されることになります。マネジメントサイドから、一人ひとりの業務と向き合い、しっかりコミュニケーションすることが大切」と続けた。
*事技職職種変更制度。

クルマ開発支部からは、デジタルソフト領域における危機感を伝えた。
技術の移り変わりが早いこの領域で勝ち続けるために、事技・技能が一体で開発していく体制の構築を、第2回労使協で決定。工程間の情報の滞留や手戻りを減らし、迅速かつ精度の高い開発を目指している。
一部では先行して取り組みを始め、技能員が前工程である企画構想や設計業務に関与することで、アイデアを素早く実装・評価することができているという。
ただ、新しい働き方が増える中で、それに見合った評価がされず、不公平感や「苦労に見合わない」という声も。加えて、生産準備や製造技術の領域は常昼勤務*
1
であり、そこに踏み込むと収入減につながる可能性もある*
2
。
*1一般的な出勤帯での勤務 (8:30~17:30など)。
*2技能職は現状、連続2交替制勤務を前提とした体系となっている。基準となる賃金に交替勤務に対する時間帯手当や深夜勤務手当が付くが、常昼職場ではその手当てがなくなるため収入減の恐れがある。
伊村隆博 生産本部長は「技能に対しての評価はどうあるべきか、非常に悩ましい。もっともっと頑張ろうという人たちを後押しするような制度につなげていければ」と応じた。
このほか、「キャリア入社者が各職場に馴染むためのサポート」や「多様なメンバーの強みを活かし、チームワークを最大化するためのマネジメント・メンバーの役割再定義」といった課題もあがった。