
今回のトヨタイムズスポーツは特別企画。それぞれの立場で"球児たちの聖地を目指した"トヨタ従業員3人が「夏の甲子園」を通じて学んだことなどを語り合った。
人生を懸けてやっていることが面白くないわけがない
森田
今日はそんな自分たちの経歴ばっかり喋ってもしょうがなくて。
「あなたにとっての夏の甲子園」をテーマに話したいんです。

それぞれ夏の甲子園が人生に影響を与えたことは間違いないじゃないですか。だからそれぞれにとっての甲子園ということを大きなテーマとして喋りたいんですけど、流れで僕から言っちゃっていいですか?
森田
私にとって甲子園は「自分の本質を教えてくれた場所」だと思っています。
就職活動でアナウンサーという職業を志したとき、「自分の強みは何か」みたいなことを面接で言わなきゃいけない。そこで「何で甲子園が好きなんだろう」ということを掘り下げるわけです。そのとき最初に出てきたのは「本気」というワード。
高校生がなりふり構わず、とにかく甲子園に来たいがために、本気で努力して積み重ねてきたものを出し合って、ぶつけ合う。本気のぶつかり合いが見せてくれるもの。それが自分の心を動かしてくれるんだと思います。
甲子園という場所から感じ取ったものは、本気同士の戦いが、人を感動させたり、人の背中を押したりするということ。だからここに関わることで、自分も本気になれるんじゃないかと思ったのが一番。
「ここで本気でやっている人たちのことを伝える仕事。これを本気でやることは、自分の人生を懸けていいことなんじゃないか」と思ったのが、(アナウンサーを志した)一番のきっかけです。
これは今でも高校野球以外のスポーツの取材をするときでも、高橋さんの取材をするときでも同じで、「あなたの本気に迫りたい」。
「こんな本気があるよ」って伝えたいというのが、一番根本にあること。ここでいろいろな試合を見たり、甲子園について考えたりした中で、たどり着いた結論です。
本気の世界は別にスポーツの世界だけじゃなくて、トヨタ自動車にはクルマをつくっている人たちにもいろいろな本気がある。それを伝えることが大事なキーワードかと思っています。
竹内
トヨタイムズで森田さんと一緒に仕事をするようになって、森田さんがいろいろな人のところに取材に行くじゃないですか。するとスポーツに限らず、すべての人を本気で好きになって、のめり込む。その原体験が甲子園にある。
森田
「その人が人生を懸けてやっていることが面白くないわけがない」というのがポリシーです。
自分が全く触れたことがない競技もいっぱいあるんです。やり投もそうでした。
でも高橋さんが人生を懸けてやっているやり投が面白くないわけがない。だから自分の人生で見たこともない競技も、絶対に面白いことがあるという確信を持って取材に行くことができます。
高橋
パリのときも、どの試合も涙ぐんでいましたね。(その理由が)ようやく納得しました。
日本一になるかそれ以外
森田
じゃあ竹内さんは?
竹内
月並みですけど人格形成の場所。夏の甲子園で日本一になることを目標に、ずっと活動し続けた高校生活という意味で人格形成の場所だなと思っています。
というのも、中京大中京は当時も今も、日本で一番優勝している高校なんです。春夏あわせて11回優勝。(甲子園で)130勝以上していて全部日本一です。
だから、日本一にならなきゃいけない学校。入学したときから「日本一を目指すことが使命だ」と。逆に言うと、表現が良いか悪いかは別として、「日本一以外は価値がない」とされてきました。
愛知大会でも「決勝で負けるぐらいだったら、頼むから1回戦で負けてくれ」と選手全員が言われていました。1回戦で負けたら、それだけ次の世代に早く切り替えられるから。
各世代大事なんですが、常に日本一を目指さないといけない。日本一になるかそれ以外だから、センバツや夏の甲子園に出たら満足ではないという感じでした。
一見すると勝利至上主義みたいですが、それだけ本気でやるから、本気で勝つためにどうすればいいんだと考えるし、どうすれば成長するんだって考える。
毎日「今日よりも明日、明日よりも明後日成長するために何をしようか」と本気で考えるんです。常に改善しようとするマインドセットは高校時代に身に付けました。

森田
最初にそのゴールがあって、そこから考える。
竹内
めちゃくちゃ明確ですね。「日本一になる」。
「(ゴールに対して)今日本一になれていない自分たち」。その差は何か。この差を具体的に細分化して、1個ずつ積み上げ、日本一になる方法を真剣に具体的に考える。それが野球部のカルチャー。
加えて、中京大中京に来て良かったと思っているのが、「豊田綱領」のような、学校が大切にしている「四大綱」という考え方があることです。これはスポーツではなく学校教育の考え方。
四大綱は、ルールを守る。ベストを尽くす。チームワークをつくる。相手に敬意を払う。
それはどんな仕事やスポーツでも、どこに行っても、どんな状況でも使える考え方。よく考えると、大学野球にも社会人野球にも、トヨタイムズの仕事にもつながっています。その意味で自分の人格をつくり上げる一番大事な場所だったなと。