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液体水素車3年目 富士24時間レースでの市販化へ向けた挑戦

2025.07.25

3年目となった液体水素カローラでの富士24時間レース。これまでより市販化へ踏み込んだ挑戦が行われた。

市販化への挑戦③ ワイヤーハーネスのアルミ化による車両軽量化

最後は、こちらも市販化においては欠かせない、車両の軽量化。

電力供給や信号伝達のために使用していた、ワイヤーハーネスの一部を従来の銅線からアルミへと変更し、車両を軽量化した。

上:アルミ電線、下:銅電線

これによって18%の軽量化が実現したが、レースカーである液体水素カローラは、走るために必要な最低限のワイヤーハーネスしか使用していないため、カーナビなどさまざまな機器が搭載される市販車ではもっと大きな効果が期待できるという。

しかし、ワイヤーハーネスのアルミ電線化においては、これまで端子部などへ水が掛かることによる腐食が課題となっていた。

そこで今回導入したアルミ電線には、古河電気工業が開発したファイバーレーザー溶接技術をもちいた密閉構造端子(α端子®️)を採用した。

この技術は、アルミ電線を端子に挿入し、圧着のみで密閉構造をつくることで、端子だけで水の浸入を防ぐことができる。

それによって、従来の製法では必須だった、端子との連結後に樹脂を塗るなどの腐食防止のための後処理が不要となった。

開発を担当した、古河電気工業 PX部の井上郁哉 補佐は、後処理が不要になったことは量産において大きな利点があると話す。

井上補佐

従来の製法では、1個ずつ防食処理を実施する為、製造スピードが上がりませんでしたが、α端子®では自動機での高速・連続生産が可能になりました。

ですので、量産時の生産性も十分に確保できた製法だと言えます。

今回、まだ製品化できていないアルミ電線も、モータースポーツの現場で一緒に鍛えていただいて、こういった過酷なレースの環境でしっかり実績を残せたというのは今後の開発において非常に貴重な場となりました。

新たな挑戦の先に見えた、市販化への現在地

今回、市販化へ向けて確かな成果を示した液体水素カローラ。

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

しかし、高橋プレジデントは「市販化に向けてはまだまだな部分が多い」と話す。

高橋プレジデント

お客様の実使用を踏まえた時に、今使っていただいているガソリン車の置き換えとして、水素に買い換えてみようかなというところにはまだ行ってないと思います。

ただ、今回市販化に向けた技術を高めるために仕込んだ、それぞれの技術が狙い通り作動することが分かりました。

これをもっともっと高めていくことが大事だと思いますし、これからもいろいろな問題が出てくるとは思いますが、それを1個1個潰していった先に、お客様に市販車として使っていただける未来がつながっているのではないかなと思っています。

まだまだ道は長いかもしれない。だがこの歩みの先にまだ見ぬ世界が待っているに違いない。

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY
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