
3年目となった液体水素カローラでの富士24時間レース。これまでより市販化へ踏み込んだ挑戦が行われた。
今年のテーマは、市販化・量産化に向けた技術開発
今年の富士24時間レースに向けてもちろん昨年のリベンジだけを行っていた訳ではない。
GAZOO Racingカンパニーの高橋智也プレジデントは、これまでの水素への挑戦を振り返りながら、今年のレースに設定したテーマを語った。
高橋プレジデント

気体水素でのチャレンジも含めると、今年が水素エンジンでのS耐参戦は5シーズン目となりました。
しかし、その5年前くらいから水素エンジンの基礎研究というのは始めていました。
水素の燃焼には最も苦労してきましたが、今24時間レースでも大きなトラブルなく完走できるという段階まできて、だいぶ手の内化ができてきていると思います。
そうして10年やってきたなかで、最終ゴールはやはり市販化だと思っていますので、今回はいかに市販化・量産化に向けて技術を高めていくかということが、テーマだったと思います。
その市販化・量産化に向けた技術を高めるために、今回は3つの新しい技術に挑戦した。
市販化への挑戦① 高出力と燃費を両立させる、燃焼切り替え
一つ目が、水素の燃焼方法をドライバーのアクセル操作に合わせて自動的に切り替える技術。

これまでは、レースでガソリンに負けない走りを実現するために、高出力が得られるストイキ燃焼という燃焼技術のレベルアップを続けてきた。
しかし、市販化するにあたっては燃費の向上が不可欠になる。
そこで今回のレースからは、高出力を必要としないシーンでは、高燃費での走行が可能なリーン燃焼という燃焼方法に自動的に切り替える技術に挑戦した。
ただレース環境では、どうしても高出力なストイキ燃焼が求められるシーンが多いため、24時間レースの中でリーン燃焼による燃費効果を検証することは難しく、今回はレース環境下でもリーン燃焼が必要なシーンではしっかり切り替えが行えるかということに重点を置いたという。
その結果、天候やコース上のトラブルなどの影響で速度制限が入った時など、高出力を必要としないシーンでは、確実にリーン燃焼への切り替えが行えており、なおかつ切り替えたことでドライバーが違和感を覚えることもなかったという。
伊東主査は、「非常にたくさんのデータが取れたので、持ち帰ってしっかり分析をしようとは思うが、初めてのトライとしては上手くいったと思っています」と手応えを感じていた。