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草の根の参加型レースS耐を通して増やす仲間

2025.07.24

スーパー耐久シリーズ 第3戦 富士24時間。現在、国内唯一の24時間レースには、年に1度のモータースポーツのお祭りとして、レーサー、ファンにとどまらず、さまざまな仲間が集まる。この会場に集まった仲間を取材した。

S耐に集まるカーボンニュートラルの仲間

S耐には「ST-Q」クラスというスーパー耐久未来機構(STMO)が認めた開発中の車両が参加できるクラスがあり、さまざまな自動車メーカーが参戦する。

水素社会の可能性を探るため、液体水素を燃料にする水素エンジンで走るTGRRの「GR Corolla H2 conept」は世界から注目を集める。

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

そして、今回から「低炭素ガソリン(E20)」燃料を使って走ることが発表された、「TGRR GR86 Future FR concept」のほか、マツダ、SUBARU、NISSAN(NISMO)、ホンダが、それぞれクルマと燃料を鍛えながら共に挑戦する。

S耐でCNに取り組む意義についてTOYOTA GAZOO Racing(TGR)の高橋智也プレジデントは「炭素排出量を少しでも減らす手段があることを、世の中の1人でも多くの方に感じていただけることが、モータースポーツの場でやることの意味」と話す。

この言葉の通り、S耐のイベント広場には、レースだけではなく、CN社会の実現を目指した、さまざまな仲間も集まる。

今回、初展示となったのが、コマツの20t 油圧ショベルだ。この油圧ショベルは燃料電池(FC)で稼働し、建設現場からCNを目指す。

イベント広場に展示されたFCEVを搭載した中型油圧ショベル

トヨタ製のFCシステムとタンクを搭載。燃料電池を動力源に油圧ポンプを回し、油の圧力と流量でシリンダーとモーターを動かして土を掘る。

1すくいで8㎥の土をすくうことができ、クローラーを動かして進む。ちなみに最高速は5.5km/hだという。

建機業界にも訪れるCNの波

「このような建設機械や鉱山機械でも世界各国でCNへの動きが始まっている」。コマツの草場泰介Chief Technology Officer(CTO)とトヨタの中嶋裕樹副社長は、水素をはこぶことをテーマに行われた「はこぶ隊」のラウンドテーブルで説明した。

草場CTO

建設機械、鉱山機械、産業機械に関しても、CNの波が押し寄せてきています。コマツもトヨタのいろいろな取り組み(マルチパスウェイ)と同じようなことをやっています。

内燃機関(ICE)、非内燃機関に大別すると、非内燃機関はバッテリーと今回イベント広場にお持ちしたFCを使用しています。

内燃機関は従来エンジンで水素をつかう、水素カローラと同じ水素ICEを当社でも研究開発しています。

その真んなかに位置するものを我々は「ブリッジテクノロジー(橋渡しの役割を果たす技術)」と呼んでいますが、いわゆる代替燃料とか、ハイブリッドそういうところに関しても、一生懸命やっています。

しかし、技術開発がすごく大変です。いわゆるマルチダイレクション(マルチパスウェイ)、全方位でコマツもやっていますが、エネルギーをどうやってお客様の現場に届けるかというのが、ものすごく大事です。

お客様はエネルギーがないと機械を使えません。今はディーゼルエンジン、ガソリンエンジンだったりしますが、それなりに値段も落ち着いていて、欲しい時に燃料を持ってきてもらえないと、とても使えません。

今回お持ちしたこのFCの油圧ショベルは最高速が5.5キロです。水素ステーションに走っていくことはできません。(水素欠で)止まってしまうとお客様の生産が止まってしまうので、ものすごい痛手になってしまいます。

そこで、お客様に水素を届けなきゃいけないというところで、トヨタさんといろいろなお話をさせていただきました。トヨタさんがやっている取り組みは、我々の建設、鉱山機械の業界でも非常に有効です。

我々の機械は山間地で林業をやっていたり、土木工事から造成、解体など、街から離れたところで行われています。

ガソリンスタンドは当然ないので、そういうところに燃料を運ばなければいけません。

すごく寒いところだとマイナス40度から高温だと55度ぐらいになります。低地は地下マインと呼ばれる地下にある坑道など海抜0メートル以下、一番高いところだと海抜4000メートルの山の上にある鉱山で動いている機械もあります。

そういった過酷な現場でも使える機械を開発していかなければいけませんし、そこにエネルギーを届けなければいけないということになっています。

先に申し上げましたが、バッテリーもやっています。バッテリーで動く20tクラスの油圧ショベルをすでにお客様に使っていただいています。

ですが、他のオプションとして、やはり水素、その先にアンモニアですとか、いろいろなエネルギー、そのすべてに関して、コマツは幅広くやっていきたいと思っています。

とにかくエネルギーが届けば、すごく可能性が広がり、建設機械、鉱山機械メーカーも、いろいろな形でお客様に価値を提供できると思っています。

今後もコマツは安全で生産性の高いクリーンな現場を実現するソリューションプロバイダーになりたいと思っています。そこを目指しながら、お客様に頼られる機械を開発提供して価値を創造していきたいと思います。

水素がいろいろな現場に簡便に早くタイムリーに届けば、絶対に世の中が変わっていくと思います。

そういう取り組みに関しては、今までトヨタさんをはじめとして、日本企業はかなりけん引していると見ています。

コマツとしましても、世の中の動向をきちんと見ながら、かつスピード感を持って、この取り組みを進めてまいりたいと思っております。

中嶋副社長

お客様の選択肢を広げる活動に何かお手伝いできないかと考えました。水素ステーションに行けない。ステーション自体が横にいないと給水素ができない。

このS耐のなかでも、水素をいかにはこぶかというチャレンジをたくさんやってまいりましたが、次世代のJAFロードサービスカーとして、そのまま給水素ができるクルマをつくってきました。

2024年11月のS耐最終戦でお披露目されたJAFの給水素が可能な次世代ロードサービスカー

せっかく水素をつかった乗用車を街に走らせていただいても、水素欠になった途端、全く動かなくなる。

これは我々のFCEVトラックで実際に事故渋滞に巻き込まれ、水素欠になりレッカー車で運ばれることがありました。

せっかくFCEVという未来をイメージするクルマがレッカー車で運ばれている姿は二度と見たくないということで、JAFさんとも協議をしてこういうクルマをつくりました。

こういうソリューションがあるのであれば、建築現場とか、さまざまな現場でつかわれている建機にも、水素をつかっていただくために届けることができないかという発想で、いろいろと検討してみました。

軽油で動かしている場合は、その燃料を届けるために軽油のローリーがその現場の近くまで運んで、それをそれぞれの現場で働いている建機に給油をしていくとお聞きしております。

こういうショベルカー等ですからCN化は、例えば弊社のハイラックスのフラットデッキの上に、水素カートリッジと小さな水素ステーションをセットで運ぶことによって、まさにJAFの次世代ロードサービスカーと同じような構造パターンでお持ちすれば、悪路でも走れるハイラックスで、このショベルに給水素ができるというアイデアです。

使われ方によって数字は大きく変わるので、あくまで参考ですが、あるお客様は現在年間約51tのCO2を排出されています。

こちらをユースケースにCN化で、FCEVトラックをつかったり、FCショベル、残念ながらハイラックスはFCEVのトライアルはしていますが、現在商品が無いのですが悪路を走らなければいけない可能性がるということで、ディーゼルのハイラックスを使った場合、総CO2排出量は1tで済みます。

私たちがこの建機に期待するところは、水素の消費量が多いので、いかに(水素の)稼働率を上げていくかということにあります。

働くクルマなので、しっかり働いていただく、イコール水素の消費量が多いということです。

来たるべき未来の水素社会を築くために最も重要なのは、水素を安定的に消費いただくマーケットがあること。

そのためにまず、乗用車からトヨタとしてはスタートしましたが、それだけではなかなかステーションの安定化につながらないので、商用車の方にCJPT(Commercial Japan Partnership Technologies Corporation)という枠組みをつくって、各社さんの協力いただきながら進めていこうとしています。

その新たな協力パートナーに、心強い味方として、この建機のコマツさんがご参加いただけるということで、本当に心強い限りです。

まだ、これは絵に描いた状態ですので、実際の現場で使っていただく、この水素ショベルカーに、どうやってはこぶか実際にクルマを仕立て、そこに「はこぶ」ということをやっていき、水素社会の実現に一歩近づいていければと思っています。

このS耐で培ってきた水素を「はこぶ」という技術が、また一歩、大きな進化を果たし新しい夢に向けて進んでいるとご理解いただければと思います。

夢は天然の水素を掘り当てること!?

このラウンドテーブルで、中嶋副社長は「最後に私の夢を言ってもいいでしょうか」と前置きしたうえで、このように語った。

中嶋副社長

(現状はまだ)水素の値段が高いのですが、当然(日本は)エネルギーの無い国ですから水電解で水素をつくるというのは理想的です。

その電気がCO2を発生しないもので、つくれればベストですが、今、天然水素というのが、ちょっと流行っております。

オーストラリアでは、普通に掘って97%の純度の水素が出ます。それと同時にヘリウムも出てくるので、工業用につかえます。

できれば、コマツさんと日本で、水素を掘り当てたい! 掘る!! そこで出た水素をどんどん、この建機に使っていただく、これが私の夢です。一緒にやらせてください。

草場CTO

掘る機械はたくさん持っています(笑)

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