
異例の本部別で開催された第2回労使協議会を通じて問われた「当事者意識」。働き方やメンバーが多様化し、「人が仕事を選ぶ時代」に佐藤恒治 社長が語った"一律"の意味とは。
組合の受け止め
光田書記長

宮崎さんが指摘した「もう一歩ほしかったな」ということ。しっかり受け止めないといけないと思いました。
自分から進んで殻を破る、「職場を変えていくんだ」ということにブレーキ踏ませるものが職場にはたくさんあります。
今回、各職場で何かを決めるということになったとき、こういう状況を認識し、なかなかそこ(決めること)に至れない。障害があることに改めて気づきました。
中嶋さんが「誰かのために」と言いました。自分の評価ではなく、「将来のため」「後輩のため」「将来の職場のため」と思ったら言うことが違うはずというところ。もう1回(意識を)変えていかないといけないと思いました。
今回、職場単位で“決める”ことにこだわっています。職場懇談会一つをとっても、組合が困りごとを言って、会社の皆さんが聞いて終わる場だったのが、2019年の労使協以降お互いがつくる場として、少しずつ変えてきた歴史があります。
次のステップは「家族の会話だからなかなか決められないこともある」と甘えずに、1個でも、2個でも決めて、動かすことにこだわっていくこと。宮崎さんに言っていただいたことに対して変えていくきっかけになると思います。
江下副委員長

今の競争環境に加えて、一人ひとりの働き方などが、めまぐるしく変わっている中で、宮崎さんが言った「本当に油断したら足元をすくわれる」という健全な危機感を持たなければならないと思います。
今の自分の担当業務、既存の業務フローといったものにとらわれずに、お客様視点で本当の仕事の目的は何かということを一人ひとりが考えていかないといけません。
どうしたら、より競争力のある商品をつくれるのか、より生産性を高められるのか。一人ひとりが自分自身に問い、主体的に周りを巻き込んでチームで行動できているか、そういったことが必要だと思います。
今日の議論でも、会社に頼りきっているという部分が垣間見えたのではないかと思います。
我々は「幸せの量産」をミッションに置いていますが、自分の人生のためにも絶え間ない努力が必要だと思っています。
未来に向けて、一つでも変化を起こすために、労使で一つひとつの課題に向き合って進めていきたいと思っています。
人が仕事や働き方を選ぶ時代に、どうやって全員活躍できるのか
総括にあたり、議長を務めた河合満おやじが労使双方へ問いかけた。
河合おやじ

本部単位での労使協を通じ、多くの職場において一人ひとりのやりがいを高め、多様なメンバーの強みを生かすことが、長期的な生産性や、競争力向上につながっていくことに気づいたのではないでしょうか?
私はやりがいは自らの成長を通じてしか感じられないものだと考えています。
今はかつてのように、仕事に人を合わせるという時代ではなく、人が仕事や働き方を選ぶ時代。
どうすれば一人ひとりが成長し、全員がやりがいを持って、活躍できるか。今日も出た、個人個人が正しく評価され、認められる制度になるよう、労使で進めてまいりたいと思います。
また、しっかりとした職場の“めんどう見”をし、できることから行動に移してほしいと思います。
5年、10年、50年先も、後輩たちが笑顔で働けるモビリティカンパニーを目指して、本音で話し合っていきたいと思います。
多様化する時代に即した評価制度を
最後に鬼頭委員長と佐藤社長の総括をお届けする。
鬼頭委員長

労使の話し合いについて、各職場で浮かび上がった課題について議論を重ねた上で、それでも解決が難しい問題をこうした全社の場に持ってきて、協議をして、決断をしていく。本来のあるべき姿にまずはしっかりと戻すことが必要だと思います。
どの単位の話し合いにおいても、労使が未来を見据えて、同じ方向を向いて、本音で議論をしていく。これが何よりも重要になると思います。組合として一人ひとりが物事を自分事として捉え、自主的に行動できる職場づくりに向けて、改めて職場の本音の声をしっかりと吸い上げて、届けることにこだわって活動していきたいと思います。
本来、組合は縦の組織ではなくて横の組織だと思います。「こういう職場にしていきたい」という想いをみんなで共有をして、会社の縦のラインでは拾えない声を拾って、会社の皆さんと話して、具体的なアクションにつなげていくことが果たすべき役割だと認識をしています。
全社にまたがる課題については、すぐに解決することは難しいことが多くあるかと思います。ですが、真正面から課題に向き合って行動に移す。ここから始めていく必要があると思います。
今のトヨタは、足元の収益だけ見れば好調で、組合員も目の前の仕事に必死になって取り組んでいます。しかし、2008年、赤字に転落をしてしまったあのときも、同じような状況だったと思います。
つまり、目の前の仕事だけを一生懸命やっていれば、未来を保証されるということではないと思います。
足元でも競争環境だけではなくて、AIや自動化など、私たちの働き方に影響を与える変化は、ものすごいスピードで起きています。
「言われたことだけをやる。また、これまでのやり方や自分の枠にとらわれる」
こうしたことから脱却をして、自分の専門性は何なのか、自分の仕事の付加価値は何なのか常に考え、多様なメンバーとチームワークの成果を最大化していかなければ、10年先、20年先の未来はありません。全員が自分ごととして自覚して、自らの働き方を変えていくこと、モノづくりの現場で働くための技能を磨き続けていく努力を組合員一丸となって取り組んでいきます。
賃金・一時金について、これまで申し入れ要求書の議論項目にある取り巻く環境ややり方などの観点に加えて、新たな課題も出てまいりました。
トヨタの生産性向上と競争力強化、ひいては、自動車産業、日本の将来のために、トヨタで働く一人ひとりが、やりがいを自らつかみ取り、変わっていく。こうした覚悟、想いを持って、組合として要求をさせていただいています。