
水素エンジンカローラが5年目の24時間耐久レースに挑んだ。そこで今年も自動車研究家の山本シンヤ氏に今回の挑戦について表現してもらった。今回は、富士スピードウェイのキャンプエリアで焚火を囲んでの延長戦も。自動車ジャーナリスト今井優杏さんも加わって、「モータースポーツが文化として根付くために」というテーマで語り合った。
S耐とニュルのつながり
森田
今日聞きたいのは、S耐、そして今年はニュルブルクリンク。 この2つの24時間レースという場所で、トヨタとしては「もっといいクルマづくり」をやっていきますよ。
2つの場があること、モリゾウさんは「S耐の活動がニュルに通じている」と言っていました。 ずっと見てきたシンヤさんはどう見ているんですか?
山本
当たり前の流れかなという感じでした。 むしろ逆に、最初に始まったのはニュルの活動じゃないですか。
ニュル24時間って1年に1回しかないけど、S耐は年間7戦ある。 だから7回試せるところがあるっていうのは、S耐の大きな強み。
最初はニュルだけだったのが、S耐があってニュルがあるっていう次のパターンに来ているのかなって。
森田
さっき、脇阪寿一さん*と「こうなることがモリゾウさんは、最初からわかっていたんじゃないかというように、ストーリー、軸がまったくブレずにきているなぁ」なんて話をしていたんですけど。
*レーシングドライバー。今回の生中継に解説として出演してもらった。
山本
まさにそうですよね。 ただ、S耐の活動をニュルにつなげようと思ったのは、コロナ禍になって、渡航ができなくなったというのが、1つの大きな要因だったと思います。それでピンチがチャンスに変わったみたいな。
森田
タダじゃ転ばない。S耐という場でなんかするぞと。
でもニュルと違うのは、水素エンジンみたいな世界初の技術をトライする場として、スーパー耐久レースというのは機能していますよね?
山本
ST-Qクラスですよね。 これができたことで、そういう新しい挑戦がやりやすくなった。 そこはすごく大きいと思います。
そういう意味では、当時はS.T.O(スーパー耐久機構)でしたけど、STMOが「自動車メーカーの皆さん、どうぞ(耐久レースの場を)使ってください」と歓迎したことは、すごい大きいですよね。
5年で増えたST-Qの仲間
森田
このST-Qクラスという開発車両が走るクラスっていうのは、この水素エンジンが走り始めた2021年にできたクラスで、最初は28号車と32号車の2台だけだったんですけど、22年にはSUBARUさんが加わって。
山本
その前に、マツダが入っています。
森田
そうか、マツダさんも加わって、5台が走っていました。23年が6台、去年は8台までいった。

山本
仲間が増えた。
森田
仲間が増えて、景色が変わってきて、世界が動いて。
だから、シンヤさんがおっしゃっていたのは「ここにいないと恥ずかしい」とか、「ここにいないと遅れちゃうんじゃないか」みたいな。 それくらい(の空気)になっていますよってことですね。