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2025.07.28
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「足場固めはスローダウンではない」 正味率向上へ労使本音の対話

2025.07.28

労使協議会から約4カ月。競争力強化へ職場の取り組みが進む中、見えてきた壁。さらに正味率を上げていくために労使が話し合った。

正味率を上げるには“あざとさ”も必要

宮崎副社長

ちょっと全然違う角度でコメントするので、何言ってるんだと思われるかもしれないんですが…。

昔、僕たちが若いころって副社長がいっぱいいて、営業の副社長と技術の副社長は絶対会話をしないみたいな(感じだった)。その部長か室長ぐらいがバトルするんですよね。で、また「(我々が)こんな調整で」というと、「何やってんだ!技術に負けるのか」みたいな。こんなことでぐるぐる(調整に)回っていました。

でも、今僕と中嶋さんは電話もするし、メッセージアプリも使うし、喧嘩もするけど、仲良く遊ぶみたいな感じになってるんですね。

例えば僕があることを言って「でも中嶋さんはこんなことを言ってます」となると、僕の近くにいるメンバーたちは、「(宮崎副社長、中嶋副社長のメンバー同士で)ガチャガチャやるより2人まとめて会話させちゃえ」と(言う)。

そうすると、今までだと、それぞれのメンバーがすごく時間をかけて調整しようとしていたことが、2人が横に並んで会話すると30分かからなくて答えが出る。

だから一人ひとりが、自分の考えを突き詰めていくようなこと、自分の考えにこだわって想いを巡らさなきゃいけないことが大事になってくることもあると思うんだけども、上から言われてやっているようなことで隣とぶつかったりしたら、上同士を早く会わせちゃえば仕事は早いかもしれない

今のこの執行体制にはそんな側面もあって、十分使ってもらっていいんじゃないかなと思う。多分後ろにいる本部長たちも、仲の悪い人は多分いなくて、それぞれ会話できる人たちだと思います。

自分が考えなきゃいけないことまで丸投げしちゃダメだと思います。ここは間違えてはいけない。その代わり、ガチャガチャ調整してるやつで、上との関係があるやつは、もうさっさとミーティングをアレンジしちゃうっていうのも、皆さんの生産性を上げる上では、大事な術なんじゃないかなと思ったりします。

仕事の正味率を上げるっていうのが、この前の労使協でもずっと議論してきたことですし、そのためには皆さん自身が考えて動かなきゃいけないことと、ちょっと流行り言葉で言うと、“あざとく”動く部分があっても、僕はいいんじゃないかなと思う。

「喧嘩もするけど、仲良く遊ぶ」。宮崎副社長の言葉に反応した中嶋副社長。マイクのスイッチを入れた第一声は、

「宮崎さんと仲良くしている中嶋です」。

どこか緊張感が漂っていた場の空気も和んだところで話し始めた。

中嶋副社長

みんな機能軸は機能軸で必要だと思ってますよね。強くなるために、機能とか組織をつくれば壁ができるのは当たり前なんですよ。壁をなくそうとか、打ち破るのなら1つにしちゃえばいいだけであって。必要があるから、その組織だとか、チームができてると思うんですね。今の最善の布陣ということでチームができている。

トヨタにはもう1つ、プロジェクト軸という強い軸があって、これがチーフエンジニア制度と言われるやつですよね。当然、各機能の代表の方が集まってきて、プロジェクトで議論する。

機能代表ですから、機能の利益といったことも議論される。だけど、チーフエンジニアが自分のクルマに対して「いや、こういう想いだから、こうしたい」と。当然意見が合わないわけです。ですがこれを長年繰り返してきたことでトヨタ自動車は、商品に魅力が出てきて、強い商品ができてきた。

昔、我々が業務をしていたころは、チーフエンジニアに対して部長は文句を言わなかった。それが良いかどうかは別ですよ。なぜならチーフエンジニアを信頼して(部長は)部下を預けているから。その代わり、チーフエンジニアはその部下を成長させて戻してくれる。この信頼関係で仕事が成り立っていた。

今それが崩れているとするならば、一番の問題は、機能の中で声が下から上に上がっていないこと。これがすべてに今共通していることだと思ったんです。上司も忙しく、部下も(上司を)慮って相談できない実態があるんじゃないかなと。今僕ら会社側がやらないといけないのは、そんな正味率が低い仕事で部長や最前線の現場が時間を浪費しているなら、その仕事をやめるということだと思います。

ちょっと話は逸れますけど、私と一緒に仕事しているメンバーには、とにかく資料をつくらないでくれとお願いしています。

この理由は簡単で、私が会長に相談する時に資料なんか持っていった試しがない。資料で伝えなきゃいけない困り事って何だろうって考えると、一言で、自分の言葉で困り事って言えるはずじゃないですか。家族の会話なら簡単に喋れる

ところが仕事になった瞬間に、何となく上司の顔色を見て、「あの部署のことを慮って、こういう言葉も入れておくべきだな」となって資料ができていると思うんです。でも不思議なことにやめられないんです。

宮崎さんが言われたように、我々は正味率を上げないと勝てないんです。我々のKPIは能率でも何でもないです。収益でもないです。生き残れるかどうか。もしくはライバルに勝てるかどうか

もう1つ組合の方々にお願いしたいのは、この仕事で成長できるのかと見ていただきたい。成長しない仕事をしているとしたら、きっとただのルーチンワークの作業でしかないので、そんなものはAIにやってもらいましょうよ。

KPIがないと仕事はしづらいというのは、おっしゃる通りですけど、ここは「勝てるかどうか」、「生き残れるのかどうか」をキーワードにしてほしい。

部長さん、室長さん、当然ここにいるプレジデントと私たちは現場に行きます。困り事があれば改善しに行きます。都合のいい権限委譲はしたくないです。

でも今、多分私たちは都合のいい権限委譲をやっています。「決めてきて」と。(一方で)決めきれない困り事には全然参画していない。これは都合のいい権限委譲ですよね。そういう時は自分たちの役割というか、肩書も利用すべきだと思います。

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