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2025.07.28
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「足場固めはスローダウンではない」 正味率向上へ労使本音の対話

2025.07.28

労使協議会から約4カ月。競争力強化へ職場の取り組みが進む中、見えてきた壁。さらに正味率を上げていくために労使が話し合った。

【組合からの声】競争力を測る物差しがわからない

能率や生産性の数値を上げるために、職場の健全な運営が阻害されているのではないかということで、1年間の凍結を打ち出した2024年の労使協。1年半が経過し、それぞれの職場で稼ぐ力について考えてきた。だが、競争力をどう評価すればよいのか、悩む現場は少なくない。

  • 上位が意志を持って立てた目標が、各職層を経るうちに単に数字を追いかけるだけのものになっている。情報の上下一致ができていない。(職場活動局)
  • 自分達の今の実力や頑張った分の成果が見えない。(元町支部)

生産本部の伊村隆博 本部長は、凍結の判断に至った背景を伝えたうえで、目標の持ち方を次のように語った。

伊村本部長

目標がなきゃ何もできないという話がありますが、目標って自分たちで立てられるじゃないですか。不具合をゼロにしようとか、稼働率を限りなく高く上げていくんだとか。もちろん無理な運営ではなく。

一方で、会社の全体の指標としての能率という観点。これはまさしく経営に直結する課題ですよね。これは我々はしっかり示すべきかなと思っています。

従来のままの能率に戻したとなると、これは違うなという気がしています。どういう指標、KPIであれば、みんなが成長を感じることができるのか、何を見ていけばいいのか、しっかりやっていきたい。

【組合からの声】役割を認識して果たしていくために必要なことは?

稼ぐ力を高めていく。そのためには組織の枠を越えて挑戦することも大切だ。そうしたチャレンジを通して見えてきたのは、自分たちの役割とは何か、役割を全うすることの重要性でもあった。

  • 製技が前工程の設計に入り込んで開発のリードタイム短縮を目指してきたが、信頼性などの観点で要件未達が発生してしまい、後工程の生産準備が振り出しに戻るということが発生している。チームの役割を認識して、責任を果たしていくためには、何が必要なのか。(本社工場支部)

これは水素ファクトリーの現場から上がってきた声。燃料電池は驚異的なスピードで開発する中国との競争にさらされている。その中で山形光正プレジデントが重視したのは「納期と良品条件」。また海田啓司CN開発センター長は、改めてクルマづくりに取り組む姿勢を伝えた。

山形プレジデント

(水素ファクトリーでの労使懇で)我々の文化でいうところの納期と良品条件が曖昧になっていたんじゃないかなということは、話をさせていただきました。

製技は製技の役割があるし、開発のメンバーには開発の役割があります。

大事なのは納期と良品条件。ここはきちっと我々の中で決めて、それをお互いが達成できるかどうか、助け合いながら進めていくという姿を実現したい

海田センター長

何のために働いているかというと、やっぱりお客様の笑顔のため。プライドを持って「やるんだ」と、やりきることも大事だけど、できないと思ったら「悪いけど、やってくれないか」、「こっちでやったらできるんじゃないのか」と言い合うのは、お客様のためを考えたら(できるはず)。

自分自身も、そうなりきれないところが多いものですから、そう考えていかないといけないと思っています。

労使相互信頼の下で声に出す

稼ぐ力を高め、これからも生き残っていくために取り組みを進めてきたからこそ見えてきた課題。組合からは現場のチャレンジの進捗や困り事といった実情が語られ、マネジメントは経験を交えて応じた。

鬼頭圭介 委員長は、組合としても摩擦を避けるようなコミュニケーションではなく、素直に議論できる職場を増やしていけるよう働きかけていくことを誓った。

鬼頭 委員長

組織、機能の枠を超えると、いきなり言われてもなかなか難しい。これは過去からずっと話をしている問題ですし、本当に難しいと思っています。

ただ、まずは自分に任された仕事を徹底的に全うする。その時に一人ひとりが自分の仕事はお客様にとってどう喜ばれているのか、どのように会社に、仲間に貢献ができているのか、前後工程のつながりはどういったことになっているのか。こうしたことを常に考える必要があると思います。そこから少しずつ視野を広げていくことを、一人ひとりしっかりやるということが大切なんだろうと思います。

今後もそれぞれの職場で話し合いを継続させていただきたいと思っています。綺麗事で終わらせるのではなくて、おかしいと思うことがあれば、率直に声に出して、労使相互信頼の下で言うべきことをしっかりと言う。本音で議論する場として、より機能させていく組合としての責任をしっかりと果たしていきたいと考えています。

議論のまとめに当たり、佐藤社長もまた山本正裕 本部長と同様、足場固めはスローダウンではなく勝ち残るために必要なことは何かを考え、実践していく場と強調した。

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